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間取りと暮らし方

特集:江戸からかみ版元 東京松屋 木版で文様を摺った和紙の上に刷毛(はけ)で糊(のり)を塗り、金銀の箔を細かく切った砂子(すなご)を蒔(ま)く

文様と暮らす

襖(ふすま)や壁などの室内装飾に用いられ、寺社や武家屋敷を彩った「江戸からかみ」。
一度は途絶えかけたその伝統をよみがえらせ、技と美を現代につないだ、
東京松屋十八代目の伴利兵衛(ばんりへえ)さんにお話を伺いました。

江戸で愛された装飾和紙

柔らかな和紙の上で淡く光る、銀白色の文様。ほのかに浮き立つような雲母摺(きらず)りの柄は、室内に差し込む光を受けて静かに表情を変え、凛とした存在感を放っています。

からかみとは、手すき和紙に手加工で装飾を施したもの。落ち着いた和の色彩と洗練された文様、手わざならではの質感が際立つ伝統工芸品です。北宋時代の中国から伝来し、平安時代に京都の公家の間で和歌をしたためる料紙として重宝され、やがて襖(ふすま)や壁などの室内装飾に用いられるようになりました。京都から各都市へ広まり日本文化に深く根を下ろしましたが、現在その姿を伝えるのは「京からかみ」と「江戸からかみ」のみとなっています。

江戸からかみの版元・東京松屋は、元禄3年(1690年)創業の和紙問屋です。襖紙や障子紙などを扱う専門店として栄え、約330年の長きにわたり紙業一筋に歩んできました。

「江戸に幕府が開かれて以降、人口の増加や火事による建物の焼失の多さもあり、からかみの需要は増大したのです」と語るのは、十八代目の伴利兵衛(ばんりへえ)さん。京都から伝わった美しい文様紙を寺社や武家、商家がこぞって取り入れ、江戸城内にも使われたといいます。独自の多彩な文様や技法が生まれ、装飾和紙の一大文化が花開きました。

しかし、時代が明治に移ると襖紙の大判化が進み、小判サイズが主流だった江戸からかみは衰退。追い打ちをかけるように、関東大震災と東京下町大空襲によって摺りに使う版木や型紙が全て焼失し、職人たちは相次いで廃業に追い込まれました。

伴さんが家業に就いた昭和38年(1963年)には大半の商品が機械による量産品となっていました。しかし、かろうじて残っていた昔の美しい見本帖に伴さんは魅了されます。「千年の歴史をルーツに持つ、私たちの宝ともいえる紙文化を絶やしてはいけない。必ずこの手で復興しようと心に決めたのです」
版木や型紙の復刻に取り組み、試行錯誤の末に新たな見本帖を完成させたのは平成4年(1992年)。復興を志してから約30年の月日を経て、風前のともしびだった江戸からかみが鮮やかによみがえったのです。

現代の暮らしを彩って

手掛けた職人の心が宿っているかのような、味わい深い質感を持つ江戸からかみ。文様や色、技法によって異なる風情を持つことから、現代の住まいにも心地良くなじみ、襖や壁、天井、間仕切りなどに広く用いられています。量産品の襖紙やビニールクロスと比べて高価に思われがちですが、貼ってから20年は美しい状態を保てるそう。インテリアへのこだわりを持つ幅広い世代から人気を集めています。

驚かされるのは、伝統的な和室はもちろん、モダンな空間にも見事に調和することです。繊細に、時に大胆に。粋に、あるいは優美に。空間を自在に彩るそのさまは、現代的なデザインや新たな発想にも寄り添う柔軟さを感じさせます。

近年はレストランや公共施設からの注文も多く、一幅の絵画のようにパネル化してホテルの全室に飾られたこともあるそうです。また、店舗などに使いたいと、海外からショールームを訪れる方もいらっしゃるといいます。日常の暮らしを彩るインテリアとして、非日常の空間を演出するアートとして。江戸からかみは無限の可能性を秘めています。

東京松屋では、文様や摺り色、和紙を指定し、自分だけの一点ものをオーダーすることができます。公家好みの文様が多い京からかみに対し、武家好み、町人好みと言われる江戸からかみ。北斎大波、丁字格子(ちょうじごうし)などの粋で洒脱な柄のほか、蔦(つた)や萩など身近な自然の草木をモチーフにした文様が多いのが特色です。新しいもの好きの江戸の人々は、着物の流行柄や異国の柄も積極的に取り入れたとか。江戸からかみが持つそんな自由さ、おおらかさこそが、現代の暮らしにもしっくりフィットする理由かもしれません。

また、顔料や糊(のり)は自然素材のため、人にやさしいインテリア材としても見直されています。代表的な顔料の一つに雲母(うんも)の粉末である雲母(きら)がありますが、雲母で摺られた文様は、月明かりや薄明かりの下で柔らかく光ります。自然とともに暮らし、うつろう陰影を愛した昔の日本人の美意識を、江戸からかみは私たちに教えてくれるのです。

格子に縁どられた天井に雅な「菊唐草」の文様が踊る

江戸からかみのアクセントクロスがナチュラルモダンなインテリアを引き立てる。文様は「秋草」(設計:アトリエエツコ一級建築士事務所)

競い合い磨かれた技

文様とともに、和紙に装飾する技法が多彩であることも、江戸からかみの魅力です。ここで、代表的な3つの技法とそれらを手掛ける職人の「唐紙(からかみ)師」「更紗(さらさ)師」「砂子(すなご)師」についてご紹介しましょう。

京からかみと共通の木版摺りを扱うのが「唐紙師」です。文様を彫った版木に、雲母や胡粉(ごふん)などの絵の具を塗り、和紙をのせて文様を写しとります。

丈夫な型紙に文様を彫り抜き、絵の具を刷毛で摺り込む「渋型捺染(なっせん)手摺り」は「更紗師」の技法です。木版と同じ単色摺りのほか、数種類の絵の具を使う多色摺りがあります。

3つ目が「砂子師」で、金銀の箔を細断した砂子を和紙の上に蒔(ま)く、箔の粉末をにかわ水で溶いた泥(でい)を刷毛で引くなどの技があります。

これらのほかにも、刷毛を使って縞や格子を描く「引き染め」などさまざまな技法があり、江戸の職人たちは競い合うようにして技を磨いたといいます。

精緻(せいち)に彫られた版木はそれ自身が芸術作品のよう

更紗師が用いる型紙。木版摺りに比べ摺り面が立体的になる

竹筒に砂子を入れて振り出す「砂子手蒔き」。偶然性によって深みのある図柄が描かれる

手のひらの感覚を頼りに

江戸で育まれた数々の技は、日々精進する職人によって守られ、進化しています。

「唐紙師」を例にとると、その一日は接着剤となる布海苔(ふのり)を煮るところから始まります。それに顔料と水を加えて絵の具をつくるのですが、毎日の気温や湿度に応じて調合を変えるそう。その微妙な加減が和紙にのる文様に表れ、仕上がりを左右するといいます。

調合した絵の具は「篩(ふるい)」と呼ばれる道具で版木の上にのせ、和紙を置いて丁寧に手で摺り上げていきます。力の加減によって色の具合が変わるため、手のひらが覚えている感覚が頼り。経験と勘、緻密(ちみつ)さが求められる作業です。

「形をまねるだけなら印刷でもできますが、形が持つ深みは決して表現できません。それが手仕事の良さであり、実際に見てもらえば必ず伝わるものだと思っています」と語る伴さん。ショールームに並ぶ表情豊かなからかみの一枚一枚が、その言葉の証しとなっています。

文様の微妙な濃淡やかすれが味わいを生む。繊細で奥深い質感は手仕事ならでは

木版摺りに使う篩(ふるい)と刷毛、布海苔(ふのり)の原料など

文様に色をつける際に使われる顔料

伝統を未来へつなぐ使命

版木の復刻後、伴さんは職人衆10軒とともに「江戸からかみ協同組合」を設立。地道な普及活動が実を結び、東京都、さらには経済産業省による伝統的工芸品の指定を受け、2017年には唐紙師の一人が文化財選定保存技術保持者に選定されました。現在、自社内に制作部を設けて職人育成に取り組むほか、裾野を広げようと文具やインテリア小物の販売も始めています。

「復興に30年、復興してから25年。私の人生のほとんどを費やしました」と伴さんは微笑みます。原点である江戸からかみを守りながら、今の暮らしにあわせて育てていく。江戸の町を彩ったからかみが、現代の家々を同じように美しく飾ることが伴さんの願いです。

江戸からかみの持つ本物ならではの美しさは、昔も今も変わらず人々を魅了し続けています。人生を重ねるほどその良さが分かるような味わい深い風合いを、住まいに取り入れてみてはいかがでしょうか。

ショールームには色とりどりの見本が並び、細やかな技巧の一つひとつを堪能できる

江戸からかみを張地に用いた屏風と扇子

PROFILE

伴 利兵衛さん(ばんりへえ)

元禄年間より続く和紙問屋、東京松屋の十八代目。1940年生まれ。職人衆とともに昔ながらの手すき和紙や江戸からかみの復興に挑み、1992年に393点を収録した見本帖『彩(いろどり)』を発行。江戸からかみの振興活動や技術の保存・継承に取り組んでいる。

東京松屋ショールーム・ショップ
住所 / 東京都台東区東上野6-1-3 東京松屋UNITY
TEL /03-3842-3785
営業時間 /9:00~17:00(日曜・祝日休)
http://www.tokyomatsuya.co.jp/

取材撮影協力 / 東京松屋

2018年3月現在の情報となります。

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