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コンセプト座談会


竹原 義二 × 白澤 政和 × 西村 達志 × 森 一彦
※有村氏は都合により座談会には参加されていません

 高齢者が「いきいき」と 暮らせるように、 みんなで知恵を出し合い、 ともに考えましょう。

高齢者が増え続ける日本社会の課題は、高齢者がいきいきと暮らせる社会をどう実現するかです。一人暮らしでも、認知症など要介護状態になっても、住み慣れた地域で意欲を失わずに生活できる住まい、地域の仕組み、またサポート体制をどうつくりあげていけばいいのか…。これらの社会的課題を共有する大和ハウス工業と大阪市立大学大学院生活科学研究科は、高齢者がいきいき暮らしていくための住まいの提案や暮らしのアイデアを募集します。このコンセプト座談会はコンテストの主旨と内容をまとめたものです。みなさまには、ご応募の際のご参考にしてください。

1. 3人に1人…高齢者が主役の社会づくりが問われている
2. 専門家の視点だけでなく、いろんなニーズを掘り起こし、融合する
3. いきいきって何?住まいの力、地域の力、生活をサポートする力
4. 結果よりも提案のプロセスを評価、審査は公開討論の場で

3人に1人…高齢者が主役の社会づくりが問われている

  2025年には65歳以上の高齢者は約3500万人に達すると予想されています。これは国民全体のおよそ3分の1です。その内、要介護高齢者は800万人。これらの数字が意味することは、これからの社会や高齢者の生活を考える上で、これまでと全く異なる発想が求められているということではないでしょうか。
西村 今回のコンテストのテーマである高齢者がいきいき暮らせるような社会には残念ながらなっていない。戦後、日本人の平均寿命が延びて人口ピラミッドの形がどんどん変わり、高齢者人口が増えて少子化が顕著になっているのに、社会の仕組みや制度が変化に追いついていないといえるでしょうね。やはりパラダイムの転換が必要だと思います。
竹原 このままだと恐らく、高齢者はますます社会から切り離されて、高齢者は高齢者だけで暮らさざるを得なくなるのではないでしょうか。現に高度成長時代に建てられた郊外の住宅団地や集合住宅などはすでに高齢者タウンと化し、かつての活力は見当たらない。世代を越えた人のつながりがなく、その光景はとてもいきいきしたものとはいえません。
白澤 つまり、高齢者が主人公になる社会づくりが問われる時代に来ているということです。人は誰しも加齢ととも老いを生きるわけで、それとともに身体機能が低下し、何をするにも若い時のようにはいかなくなる。やがて介護が必要になったり、認知症になったりすると、高齢者の生活はますます孤立化することになる。社会の主役であるべきなのに、社会から遠ざかって暮らさざるを得ない状況というのは好ましい姿ではありません。では、どうしたら高齢者がいきいき暮らせるような社会や居住環境がつくれるのか。
西村 今回のコンテストの主旨はまさにその点にあるわけです。みんなで知恵を出し合って共に考えましょう、と。若い人だって高齢社会と無縁ではいられないのです。ですから、決して他人事にするのでなく、一人一人の知恵やアイデアが高齢社会の支えになるのだと思っています。それは私たち大和ハウスの企業理念である「共創、共生」の実践でもあります。
白澤 生活科学という学問が目指しているのも、誰もが共に暮らしていく「共生」社会の実現です。人が人と、人が物と、人が社会と…上手くインターフェイスできるように人の営みを、つねにユーザーサイドに立って多角的に研究する実学であり、大和ハウスさんの企業理念と立場を同じにするものです。今回、ともに協力してコンテストを企画できたというのも「共生」の哲学が互いに響きあったということではないかと思うのですが。
西村 おっしゃる通りですね。そして共生の輪をより広くして、これまでにない意義のあるコンテストになればと期待しています。

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専門家の視点だけでなく、いろんなニーズを掘り起こし、融合する

竹原 建築コンペの審査員をずいぶん務めていますが、今回のコンテストは私もはじめて経験するユニークなものです。これまでの建築設計コンペとは異なり、いろんな点で画期的で、これまで誰もどこもやったことがないものです。だから私自身、非常に楽しみにしてるんです。
  応募の対象者は建築家に限らず、医療・保健や介護の現場で働いておられる専門家、それに高齢者ご自身や家族の方としています。それぞれのお立場で応募していただくというのがまずこれまでにない点だといえます
西村 そこが面白い。例えば建築設計コンペの場合だと、当然のことですが、課題のテーマに対して建築設計上の作品を競うことになるわけですが、このコンテストではむしろソフトの部分が重要なのですね。高齢者がいきいき生活したり暮らせる住まいや居住環境とは、ソフトを中心なり目的にして、ハードをどのようにつくりあげていくかのプロセスを求めているわけです。高齢者の営みというソフトが中心になるわけですから、住宅という枠だけで解決しようという発想や考え方だけでは無理だと思う。
竹原 建築家の議論もそうですが、おそらく医療・介護の専門家の議論というのも同じ議論だと思うのです。今回のコンテストの狙いの一つに、それぞれの専門職の垣根を越えて互いを融合させ、一つの成果、あるいは結論らしきものを導いていこうとする試みがあると思うのです。それだけでなく、さらに専門家でない生活者、あるいは利用者の発想をも融合してみようということです。白澤先生の著書に「ニーズの三層」というのがあります。専門家側のニーズ、当事者や家族側のニーズ、そして両者がおりなすことによって、これが大切なのですが「真の(real)ニーズ」を導きだすことが重要です。
白澤 そうですね。専門家も本人・家族も気づかないニーズがあるわけです。人の生活というのはいろんな要素の組立で成り立っていて、生活とか介護という問題には見えにくいものがたくさんあるわけです。専門家は自分らの視点で家族のニーズに応えようと頑張るわけです。しかしそういう一方的な見方だけで高齢者の生活を考えていていいのだろうか。もっと総合的に見きわめる必要があると思うわけです。ですから、みなさんからいろいろなアイデアを募ることによって、これまで気づかなかったニーズを掘り起こしたいと思っていますし、そこに期待しているんです。一言でいうと、コンテストで個別的なニーズをたくさん拾いだして、その成果を普遍化、汎用化していくことです。
西村 それが高齢社会に対する住宅メーカーの大きな役割だし使命だと思っています。だからコンテストを通じて、社会の主役である高齢者のこれからの生活や暮らしが、こうすれば、こうしたら、いきいきするだろうと納得できる機会になればと願っています。

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いきいきって何?住まいの力、地域の力、生活をサポートする力

  コンセプトに「いきいき居住」というワードを掲げています。しかし、いきいきは非常に分かりやすそうで実は分かりにくい。
竹原 そうですね。いきいき感は極めて個別的な感性ですよね。「これがいきいき」だと定義するのは難しい。ただ、私の専門である住宅設計でいいますと、住まいというのは住む人が積極的に参加できるような住まい、というのが私が考える住まいです。参加することで住まいとの関係が生まれ、そこに住む人のいきいきが生じてくるではと思うのですが。
白澤 いきいきするって何なのか? 溌剌もそうだし、元気もそう。でも、身体が丈夫であったり病気でないことだけが幸せでもないし、いきいきでもないと思う。私が考えるいきいきというのはQOL(生活の質)です。たとえ病身であったり要介護状態であっても、意欲をもって生きるということです。身体的には不自由でも、心理的には意欲を失わずに生活する、そこにいきいきという価値があるのではないでしょうか。そのためには、竹原先生のいう当事者の関わりが大切だと思います。
  その通りですね。先生がおっしゃる生活する意欲をうながす上で、生活の継続性ということも重要な要素ではないでしょうか。住み慣れた地域、住み慣れた住まい、馴染みのある隣人との付きあい…そういう慣れ親しんだいろんな関係が生きる意欲を持続させ、また向上させるように思うのですが。
竹原 私も同感です。たとえば現在の住宅はそういう大切な関係性をそぎ落としているように思われるのです。プライバシーと防犯機能が重んじられるあまりに、隣人との関係や地域との関係が建物のしつらえとして希薄になっています。集合住宅や高層マンションでは人間関係は生まれにくい。高齢者の生活はますます孤立化していきます。それに、少し飛びますが、高齢者ほど都市のインフラの恩恵にあずかっていないですね。都市生活の便利さは高齢者の生活をいきいきさせる大きな要素でもあると思うのですが、そうなっていません。
西村 そうですね。住宅メーカーのこれからの大きな課題だと思っています。で、私が思うに白澤先生がおっしゃった、生きること、生活することに意欲を芽生えさせるために何が必要かを考えると、それは住まいの力、地域の力、それに高齢者の生活をサポートする人間力ではないかと。
白澤 そうです、まったくその通りです。高齢者の生活をいきいきさせる住宅、高齢者がいきいき暮らせる社会や地域の仕組み、それにケアを含めて高齢者が安心して生活を楽しめるようにするにはどのようなサポートがあればいいのか、そういう、それぞれの場面におけるいきいきの素となるアイデアがたくさん集まれば、高齢者のこれからの暮らしや生活はもっといきいきしたものになるのではないでしょうか。

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結果よりも提案のプロセスを評価、審査は公開討論の場で

  募集するのは、高齢者がいきいきと暮らすためのアイデアです。具体的に生活スケールからみると(1)インテリアや家具・生活機器、(2)住宅や老人福祉施設、さらには(3)生活が展開される地域の3つのカテゴリーに整理され、それぞれのカテゴリーもしくは複数のカテゴリーにまたがった領域において「高齢者がいきいきする場面とその工夫」を求めています。これは、すでに実践しているものやこれから行おうとするものどちらでも構いません。また居住環境におけるハード的な提案だけでなく、住まい方や支援活動などソフト的な提案も求めています。
竹原 建築設計が専門の人でも、限定された住まい空間だけでなく、地域の環境提案でもいいわけです。医療や介護に従事しておられる方が介護の視点で住まいや施設の空間を提案していただいても構いません。健常な高齢者の住まい、要介護高齢者の住まい…そのご本人や家族の方でも、日頃の暮らしのなかで、こうすればどうかなという生活上の工夫や配慮でも結構。それこそ私たちが思いもつかない知恵やアイデアであったりする可能性が高いのです。
西村 ええ、そうです。むしろ我々、審査する側を驚かせるような斬新で、独創的なアイデアは大歓迎ですね。だからといって斬新性や画期性を競うことが目的ではないので、ただ審査員の気を引こうとするような奇抜さだけでは困ります。このコンテストは作品コンテストではなく、コンセプト・コンテストといったほうがいいでしょうね。
白澤 そうですね。このコンテストの意義とユニークさは、結果だけを評価するのではなく、アイデアや提案に至ったプロセスを重視します。ただ平面的な提案ではなく、高齢者の生活像を踏まえた上で、なぜこういう提案になったかというプロセスを評価したいですね。また、提案でのハード面とソフト面の関係性や因果性をきちんと説明してほしいですね。
  提案のプロセスを重視するということと関連していえば、コンテスト自体のプロセスにも同じことがいえますね。
西村 そうですね、そこがこのコンテストの面白いところだし、また意味のあるところですね。一次審査を通過した提案・作品は二次審査では、公開で行います。しかもただ公開というのでなく、その場で審査員らがそれぞれの立場で意見をぶつけ合って受賞作品を決めていくというのは、これはなかなか勇気がいることですよ。
白澤 ある種、審査員同士が激しく口論するかも知れない。いやそれは違う、これはこうだとね。一歩も譲らない場面があったりするかもしれません。でも正面から意見をぶつけ合うところに意味があると思うわけです。公開審査の場は同時に、公開シンポジウムの場として一般の入場者の方も交えて、みんなで問題を一緒に考える場にしようと思っています。
  とにかくいろんなアイデアがたくさん寄せられることに期待します。みなさんぜひ奮ってご応募ください。

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