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早期発見・治療が何より大切!知っておきたい「膵臓(すいぞう)」の話

近年「膵臓がん」の深刻さが話題になっていますが、がんに限らず膵臓の病気は早期発見・治療をしないと深刻な状態になるものが少なくありません。膵臓の働きや気をつけるべき膵臓の病気、早期発見のためのポイントについて伺いました。

知っておきたい、注意すべき膵臓病

膵臓は、胃の後ろ・背中近くにある長さ約15~20cmの臓器。主に2つの大切な機能を担っています。
1)消化酵素をつくる/外分泌
炭水化物・脂質・たんぱく質を消化する酵素をつくり、膵液として十二指腸に送り出します。この膵液により食べものが分解され、栄養を体内に吸収することができます。
2)血糖を調整する/内分泌
インスリンやグルカゴンなどのホルモンを血管内に分泌、血糖が適正値になるよう調整します。この機能が損なわれると、糖尿病のリスクが格段に上がります。

●意外に起こりやすい「膵炎」に注意
膵臓がつくるたんぱく質の消化酵素は、十二指腸に入って初めて活性化されるようになっています。しかし膵液の分泌が過剰になったり、膵臓の管が閉塞するような事態が起こると、膵臓内でたんぱく質の消化酵素が活性化されて組織を自己消

化してしまうため、膵臓に炎症が起こります。明確な原因はまだ特定されていませんが、下のような生活習慣や持病を持つ方は、この「膵炎」が起こりやすいといわれています。
□お酒を毎日飲む □脂肪の多い食事が好き □食事の時間が不規則 □肥満 □睡眠不足でストレスが多い □運動不足 □タバコを吸う □胆石 □高脂血症 □高カルシウム血症

膵炎には「急性膵炎」と「慢性膵炎」の2種類があります。
1)急性膵炎…一度かかると、再発や慢性化のリスクが増大
アルコールや脂肪分の多い食事をとった後、数時間で発症することが多いです。
【症状】上腹部(胸とみぞおちの間)の激痛、背中の痛み(胃と同じ高さ)、吐き気、嘔吐、発熱、食欲不振、腹部膨満感、下痢など。重症だと死に至ることもあります。※無症状の場合もあります。
【原因】最も多い原因はアルコール(男性に多い)。飲酒で膵液の分泌が過剰になったり、膵臓内の内圧が上昇して起こります。次に多い原因は胆石(女性に多い)。胆のうから胆汁を流す胆管と膵臓から膵液を流す膵管は、途中で合流して十二指腸に繋がっているため、胆石が十二指腸の入口を塞ぐと胆汁が逆流して膵臓へ流れ込み、消化酵素を活性化するのです。ただし、原因不明の場合も多い病気です。
治療で膵臓は正常に戻りますが、再発率も高く、10%〜約半数の方が慢性化します。特にアルコールが原因の場合は、断酒をしなければ再発や慢性膵炎への移行、糖尿病の合併などの危険性が高くなります。

2)慢性膵炎…肝臓でいえば「肝硬変」。膵臓の内部が線維化し、元に戻らない
膵臓に軽い炎症のある状態が半年以上続くと、細胞は徐々に破壊され、その部分が線維化し、組織が固くなっていきます。慢性膵炎で生じた繊維化は元に戻ることがなく、肝臓における肝硬変に近い状態です。10〜20年をかけて進行するため、男女とも50代に発症し、60代に診断される方が大変多く見られます。
【症状】上腹部の痛みや不快感、背中痛などが数カ月続くこともあります。進行すると腹痛は逆に改善しますが、その時は既に線維化が進んでいます。※無症状の場合もあります。
・消化酵素が作られず、消化が不十分になるため、体重減少・食欲低下・全身倦怠感などが起こります。脂肪便(白っぽく水に浮き、悪臭がする軟便)や下痢も特徴的な症状です。
・インスリンの分泌が悪くなり、血糖値の上昇、口渇、多尿など糖尿病の症状が見られることも(膵性糖尿病)。急に糖尿病になった方から、この病気が見つかることも多いです。
【原因】男性患者の75.7%、女性患者の29.5%はアルコールが原因。一方、女性の半数は原因不明の突発性です。胆石、自己免疫から来ることも多いですが、患者の80%が喫煙者というデータもあり、喫煙との関連も深い病気です。
慢性膵炎患者の死亡率は健常者の1.5倍になり、平均寿命も10〜15歳短くなります。また、膵臓がんや心血管疾患、糖尿病やその合併症になるリスクも上がります。禁酒や禁煙、脂肪分の制限などをすることが大切。少しでも思い当たる症状があれば、早めに専門家の診察を受けましょう。
また、この病気を初期段階で発見し治療する「早期慢性膵炎」という考え方が、2009年、日本膵臓学会・消化器病学会の膵臓専門医によって初めて提案され、世界も追従する形で研究が進んでいます。こうした研究により、近い将来、慢性膵炎への進行を防げる早期診断や治療の方法が確立していくかもしれません。

リスクのある人もない人も、定期的な画像検査を

●原因がわかりづらく、見つけにくい膵臓がん
一方、患者数が年々増加しているのが膵臓がん。2010年の調査では、肺がん、胃がん、大腸がん、肝臓がんに続き、日本人の死因となるがんの第5位になりました。既に進行した状態で見つかることが多いため、周辺組織への浸潤やリンパ管・血管を介した遠隔転移が進んでいることも多く、手術や薬での治療が難しいがん。膵管にできる「膵管がん」が大半を占めています。
【症状】初期は無症状であることが多く、進行するにつれ膵管がんの場合は上腹部痛、体重減少、黄疸(がんの場所による)などの症状が現れます。時間を問わず激しく続くのが特徴で、背中の痛みを伴うことも多くなります。
【原因】はっきりした要因はわかっていません。ただ、がんになった方には
□アルコール常飲者喫煙者 □高齢者 □膵臓がんの家族歴がある方 □高脂肪食を好む方 □肥満 が多く見られます。
また、□慢性膵炎 □糖尿病 □膵のう胞 を患う方にも高いリスクがあります。中でも糖尿病が急に悪化した方は要注意です。

●定期検診で、一刻も早い発見を
原因が不明確であることや症状のわかりにくさから、発見が遅れがちな膵臓の病気。
リスクの高い方は半年に1度、そうでない方も年に1度の定期検診で早期発見に努めましょう。

【早期発見のために必要な検査】
1)画像検査
●腹部超音波検査 ●腹部CT検査 など ※人間ドッグに含まれていることがあります。
(費用目安:腹部超音波…5000円、腹部CT検査…2〜3万円 ※保険適用の場合あり)

2)血液検査
血中の消化酵素が基準値より高い場合は、膵臓が傷害を受けている可能性があります。ただ、アミラーゼの場合は別の臓器由来の場合もありますので、更に詳細な検査が必要です。※一部オプション項目となります。

これらの検査で異常が見つかった場合は、さらに詳しい検査として、
●内視鏡によるERCP検査 ●MRIを使ったMRCP検査 などの画像検査を行います。
膵臓の病気は、とにかく早期発見・治療が何よりのカギになります。
定期検診の血液検査・画像検査で膵臓に異常を指摘された方はもちろん
□上腹部にもたれ・痛みがある □背中が痛い □下痢が多い
などの自覚症状がある方は、よくあることだと軽視せず、ぜひ専門の医療機関で診察を受けてみてください。

高橋 宏樹

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