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長引く夏の咳、もしかしたら…? 「夏型過敏性肺炎」の話

夏になるとよく風邪をひく、しつこい咳がなかなかとまらない…。そんな症状に思い当たる方は、ただの夏風邪ではなく、もっと深刻な病気かもしれません。風邪と間違われることが多い病気の一つであり、夏特有の病気である「夏型過敏性肺炎」について、専門医に伺いました。

高温多湿で繁殖するカビが原因で起こる、アレルギー性肺炎

夏型過敏性肺炎は、いわゆるアレルギー性の肺炎のひとつ。
肺炎というと、よく話題になる肺炎球菌感染症やマイコプラズマ肺炎など、
細菌やウィルスなどの病原体に感染して起こるものが大半ですが、
ある物質(抗原)を吸い込むことでアレルギー反応を起こす肺炎が存在し、
これらは総称して「過敏性肺炎」と呼ばれています。
抗原には細菌やカビ、鳥の羽・糞、キノコの胞子、イソシオネート(塗料の材料)などさまざまな種類がありますが、日本で最も多い急性過敏性肺炎は、「トリコスポロン」という、住宅に発生するカビによるもの。
トリコスポロンは高温多湿を好み、室温が20℃以上、湿度60%以上の環境で盛んに繁殖します。
この胞子を吸引し、夏に発症する人が多いことから、トリコスポロンによる過敏性肺炎を「夏型過敏性肺炎」と呼ぶようになりました。北海道を除く日本全国で症例が報告されており、昔は6~9月くらいに発症することがほとんどでしたが、近年では気密性の高い住宅が増えて室内が高温多湿になりやすいため、4~5月あたりから症状が出てくることも多くなっています。

患者さんの傾向としては、住居内にいる時間が長い専業者や女性、高齢者に多いのが特徴。最近では小児の患者さんも増えています。

トリコスポロンが発生しやすいのは、築20年以上の木造住宅ですが、近年では鉄筋コンクリートの住宅でも報告例が増えました。いずれも、新築~築10年くらいの住宅で繁殖することはまずありません。ただ、●じめじめとした場所に建っている ●雨漏り、床下浸水などにあったことがある ●湿度が高く、カビがよく発生する というような環境の住宅は老化が早く、比較的早い年数でトリコスポロンが発生する可能性があります。

夏型過敏性肺炎の症状は、咳・微熱・息苦しさ。夏のしつこい風邪だと思い込み、特に治療をしない方も多いですが、普通の風邪であれば、2週間で治ります。夏の時期に咳や微熱が2週間以上続くようなら、他の病気(他の肺炎、結核、肺がんなど)の可能性と合わせて、この病気を疑う必要があります。
住宅由来で夏を中心に繁殖するカビが原因、という特徴から、下のようなケースに当てはまる場合は、さらに夏型過敏性肺炎の可能性が高いといえるでしょう。
●毎年、夏になると同じような症状が出る
●3~4日くらい自宅を離れると、症状が治まる
●同じような症状が出ている家族がいる(住居の滞在時間によって、程度の差がある)

早い段階で発見し、適切な治療を行えば完治しますが、少量でもトリコスポロンを長年吸い込み続けていると慢性化し、トリコスポロンの有無に関わらず、一年中咳が出るようになります。肺は線維化して固くなり、呼吸不全を起こして死に至る危険性も。また、肺がんを誘発する場合もあります。とにかく早期発見、そして慢性化させないことが肝心です。

適切な治療と、カビのない環境づくりが何よりも大切

夏型過敏性肺炎は、なかなか特定が難しい病気。風邪や他の肺炎、咳ぜんそくなどという診断を受けてしまい、不適切な投薬や処置を受けて悪化しているケースも少なくありません。できれば呼吸器系の専門医を訪ね、診察・検査を受けることをおすすめします。
病気を特定するためには、レントゲン撮影や胸部聴診、CT検査、血液検査など、そして住宅環境の調査などから総合的に判断します。
2013年より、トリコスポロン抗体の有無を調べる血液検査が保険適用になり、少ない負担で検査が受けられるようになりました。もしかしたら…と思った時には医師に相談し、受けてみるとよいでしょう。

治療では、入院などで自宅を離れてもらい、トリコスポロンを吸い込まない環境をつくれば、急性の方なら早い段階で回復します。症状がひどい方や、慢性化している方にはステロイド薬などの薬物治療を行います。
ただし、最も大切なのは回復後。自宅に戻る前にトリコスポロンを一掃しておかなければ、すぐに再発してしまいます。
トリコスポロンは腐った木を好み、室内でも湿度が高く風通しの悪い所を好んで繁殖します。
繁殖しやすい場所は、●脱衣所や洗濯機などの水回りにある木製の部分 ●床裏・床下の木材 ●台所のシンクの下 ●和室の畳の裏 ●カーペットの裏 ●寝具(布団、枕)など。白や黄色っぽい色をしているため、気づかずに放置し、病気につながることも多いです。
疑わしい箇所を調べてトリコスポロンが繁殖している場所を特定し、リフォームや取り換えなどを行う必要があります。手の施しようがないほど繁殖している場合は、転居が必要になることもあります。(※お風呂やエアコンに発生する黒カビも喘息や過敏性肺炎の原因になりますが、トリコスポロンとは別のものです)。カビのない環境に変えることで、その後の再発を防ぐことができます。
一度繁殖してしまうと根絶は難しいため、繁殖を予防するためには住居が新しいうちから、こういった箇所の乾燥を心がけることが大切。湿っている場所は水気をふきとり、風通しをよくしておくとよいでしょう。

繰り返しになりますが、2週間以上続く夏の咳や発熱は、風邪ではありません。夏型過敏性肺炎はもちろん、ほかの重大な病気が見つかる可能性もありますので、ご自分の健康を守るためにも、早めに呼吸器専門医に相談していただくことをおすすめします。

大谷 義夫

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