2020年1月、臨海副都心・有明に完成した「プレミスト有明ガーデンズ」は、都心にありながら豊かな大地と自然を感じ、住民同士のコミュニティが育まれる家づくりで評価をいただきました。発展を遂げる有明エリアで、大和ハウス工業が提示した新しい住まいの形とは? 企画担当者・髙橋の証言とともにお伝えします。
タワー林立の有明に、板状マンションで新しいスタイルを提案
東京2020オリンピックの中心地としてレガシー(各種競技施設)の開発が進み、「有明ガーデン」をはじめとした商業施設のオープンが続く有明エリア。ゆりかもめやりんかい線、環状第2号線など交通の利便性も良く、職住近接を求める都心勤務の方々から支持を集めている場所です。2020年1月、その中心部に完成した「プレミスト有明ガーデンズ」は、地上15階建の板状マンション。当時、有明に建つマンションの大半がタワーマンションであった中、あえて板状マンションを選択した背景には確固たる想いがあった、と髙橋は語ります。

撮影:(株)エスエス 北條 裕子
髙橋:「有明はオリンピックという一大イベントを経て、未来に向けてさらに発展していくエリア。一方、生まれてから約70年と新しく、これから歴史が紡がれていく場所でもありました。
どんなレジデンスが生まれれば、住む方が幸せになれるのだろうか。プロジェクトで議論を重ねる中で出てきたのは、「有明がこれから住む人にとって新たなふるさとになればいい」という提言でした。有明は「湾岸タワーでの暮らし」という華やかなイメージが先行していますが、この地でまた違ったスタイルの暮らしを育んでいきたいと考えている方もいらっしゃるのではないかと考えたのです。実際に有明エリアのタワーマンションに住んでいる方々からお話を伺い、私たちが考えたように、この土地に愛着を持てるような暮らし方を求めていらっしゃる方がいる、と確信が持てたことが大きな自信になりました。
大地と自然に彩られた、交流が生まれる共用空間
大地に近く、自然を感じ、随所に住民同士のコミュニティが育まれる場を持つ「大きな家」。
そのコンセプトは、プレミスト有明ガーデンズの随所にちりばめられています。
【大きな家のデザイン】
髙橋:「プレミスト有明ガーデンズの外観は、“大地に根付く”というイメージを醸成できるよう、自然由来の木目調や土、クラフト感のあるタイルなど、自然との馴染みが良く温かみのある素材を採用しています。また、低層は大地に近い濃い色合いを使い、高層になるにつれてガラスの面積を多くして、空にとけこむような軽やかなデザインにしました。また、板状の面をリズミカルに雁行(住戸を斜めにずらして配置)させ、変化のあるファサードを形成しています」
【大きな家の門・玄関】
髙橋:「エントランスアプローチは、造形案を何パターンも作って検討し、緩やかなアーチを描きながら住居棟に続いていくような形を採用しました。4m高の華やかな入口から、庭の景観を眺めながらアプローチを抜けるうちに徐々に天井が低くなっていき、プライベートスペースへと迎え入れるような仕掛けになっています。その先にあるエントランスも、森の木立を思わせるような木目調の素材を多用しました。壁面にアクセントをつけることで空間に広がりを持たせながら、ファブリックガラスやダークトーンの版築壁など質感を出し、お迎えするのにふさわしい場にしています」
【大きな家のいろり・2つの庭】
髙橋:「コミュニケーションの中心になる場所として設置したのが、ラウンジと2つの中庭です。「リラックスガーデン」「アクティブガーデン」という個性の異なる2つの庭を設け、庭に挟まれた共用部分に、家族が集まるいろり(リビング)をイメージし、床を掘り下げたラウンジを配置しました。このエリアにはカフェゾーンやKIDSゾーン、STUDYゾーン、DIYゾーンなどが集結しており、カフェゾーンを中心に、子どもを見守りながら安心してリモートワークやDIYを行えるような、ひとつながりの空間となっています」

2つの庭をつなぐように共用部分のラウンジを配置。見通しのよい空間を実現した
髙橋:「「リラックスガーデン」「アクティブガーデン」は、合計で約860㎡の広さ。外部環境に左右されることのない中庭は、小さな子どもが安心して遊ぶことができ、住民の方にも安らぎを感じていただける空間です」

撮影:黒住直臣
【大きな家の教え】
髙橋:「また、この中庭は、生物多様性に配慮した自然を学べる場として「ABINC認証」を取得。SDGs(持続可能な開発目標)のゴール15「陸の豊かさも守ろう」に貢献しています。この地域の自然に近い植生(潜在自然植生)の樹木(タブノキ、エゴノキ、コナラなど)を基本に、鳥のえさとなり昆虫の住処となるような樹木(アキニレ、シラカシ、マテバシイ、クヌギなど)、そして岩場や水たまり(レインガーデン、バードバス)、巣箱など、生き物が住みやすい場を整えることで、都心でありながら生き物が観察できる環境を実現しました。鳥の声が聞こえたり、カブトムシを見つけたり、どんぐりをひろったりと、眺めるだけではなく実際に分け入って土に触れて木の温もりを感じ、生き物と触れ合えるような庭にすることができました」
【大きな家の台所】
髙橋:「日当たりが確保される最上階には、パーティーダイニングと屋上菜園を設け、屋上菜園で採れた新鮮な野菜を使って料理を楽しんでいただけるようにしました。また、中庭には「落ち葉だめ」を設置し、菜園などで使う肥料をつくれるような仕組みにしました。肥料をまいて育て、収穫した野菜を料理する経験をしていただくことで、自然と食育につながるような仕掛けをつくっています」
【大きな家の客間】
髙橋:「ゲストルームは、1階と15階の2ヶ所に設置しています。1階は「大地」をテーマにした部屋で、地続きの縁側と小さな庭を持ち、木々の緑を楽しんでいただけます。天井から壁にかけての曲線部分には木調のリブ材を使い、職人さんに一つひとつ手作業で貼り付けてもらいました。15階は「空」をテーマに、明かりを消すとLEDの照明が瞬く星空天井に仕上げました。マンション最上階の特等席から東京の景色や夜の天体観測を楽しむことができ、星や空について会話が自然に生まれるような空間をつくっています」
【大きな家の井戸端会議】
髙橋:「住居棟のジョイント部分である開放廊下の一角には、3階、6階、9階、12階、15階と3層ごとにビューテラスを設けました。住まう方が誰でも湾岸ビューを享受できるとともに、気軽なふれあいの場として使っていただけるようにしています。ビューテラスの柱には壁面緑化を施し、年月とともに外観に緑がにじみ出て美しい景観ができるようにしています」
【大きな家の庭木】
髙橋:「中庭だけでなく、敷地内や外構の植栽にもこだわりました。1本1本材料検査で選定し、選りすぐった樹木を植えることで建物の上質感を高めています。また、沿道緑化にも力を入れ、敷地の角には地域住民の方が垣根なく使用できるベンチを配置するなど、周辺環境に配慮することで、有明という街の魅力が高まるように注力しました」
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撮影:光井純アンドアソシエーツ㈱ 松本賢
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撮影:光井純アンドアソシエーツ㈱ 松本賢
完成から数ヶ月が経ち、住民の方が集まる「住まい心地ヒアリング」に参加した髙橋は、新しい暮らし方の提案ができたことに改めて意義を感じたといいます。
髙橋:「ヒアリングの場で、管理組合とは別に、40人位のマンション内コミュニティができているというお話を聞くことができました。そこではイベントを企画したり、共用部の使い方を相談されたりしているそうです。もちろん予測してはいたのですが、実際に交流が生まれていることが実感でき、本当に嬉しかったですね。また、マンションを訪問した時には、働き方の変化を予測して設けていたいろいろな共有スペースを、コロナ禍で皆さんがしっかりと使ってくださっているのを目の当たりにすることができました。また、ラウンジも自粛の中でお子さんを安心して遊ばせられると好評をいただきましたね。一緒に訪問した子どもがいる同僚女性からもうらやましいといわれ、こういったスペースの大切さをさらに実感しました。また、屋上のパーティーダイニングや家庭菜園がとてもよく使われていたのも、嬉しかったことの一つです。
改めて住まい心地を確認する中で、最初に私たちが思い描いていた通り、コミュニティを求めていらっしゃる人が集まってくださっているという手ごたえをつかむことができました。これから住民の皆様がさらに発展させていってくださるのを、心から楽しみにしています」