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2024年9月、邸宅街として名高い渋谷区南平台に誕生した地上4階地下1階建/全22戸の「プレミスト南平台」。地域の景観と調和した開放的なデザインや個性豊かな住空間を実現する新たなアプローチで多くのご評価をいただき、2025年グッドデザイン賞を受賞いたしました。第1回目は「プレミスト南平台」のコンセプトメイキングについて、企画担当者の髙橋と建築担当者の佐川がお伝えします。
先進の街に臨む邸宅街。そのギャップを魅力的に融合する

100年に一度と言われる大規模再開発によって、国際都市へと急速に進化を遂げている渋谷。その中心部から約10分の徒歩圏内にある南平台は、古くから松濤と並ぶ邸宅街として知られてきたエリアです。明治期には華族や外交官に郊外の保養地として愛好され、総理大臣を務めた岸信介氏や三木武夫氏が私邸を構えたこの地は、今もなお大区画の邸宅や大使館、迎賓館、教会などが並び建ち、閑静な佇まいを残しています。
南平台エリアの中心部を南北に走る「南平坂」に面した計画地。この立地にふさわしいマンションを考案するために、企画担当の髙橋が足がかりとしたのは、この土地が持つ「ギャップ」の妙でした。
高橋:「この南平台は、高層ビル群がある商業地域から低層邸宅地域へと切り替わる場所にあります。地域の境界線を越えると先進の街から緑の邸宅街へと、一気に顔つきが変わる。この「ギャップ」が、多くの著名人や文化人を魅了してきたのではないかと感じたのです。このギャップをさらに魅力的に昇華し、都市の絶えざる情報にさらされている現代人の憩いの場にふさわしい、真のラグジュアリーに浸れる都心の隠れ家を作っていこうと考えました」

プレミスト南平台のデザインコンセプトは、「王道」「挑戦」のギャップと融合。
高橋:「王道として掲げたのは「継承」と「堅牢」です。南平坂の高評価の理由である圧倒的な緑量を継承し、踏石や灯篭など街に残る旧い縁を伝えることで、街の価値を高めることを目標にしました。また、プライベートの安らぎを実現するために堅牢なセキュリティは必須だと考えました。 「挑戦」として掲げたのは「先進」と「開放感」です。渋谷エリアの先進性と南平台の魅力を融合させたファサードデザインで、ここにしか無い価値を生み出せるよう検討を重ねました。さらに専有部に広がる心地よい開放的な設計で「ゆとり」のある真のラグジュアリー空間の創出をイメージしています。この王道と挑戦という双方の価値を実現する卓越したギャップと融合で、物件の魅力を高めようと試みました」
緑と街を映し、街と一体となって景観を創る

鉢山町交番の交差点から緩やかな南平坂を上ると、右手に見えてくるのがプレミスト南平台。重厚な擁壁と、透明なガラスサッシのレジデンスが往来する人の目を集めます。
高橋:「南平坂に面する擁壁は、大判のジンバブエブラックの石積みで構成しました。低い所では3.5m、高い所では5mの高さがあり、容易に中を覗けず入ることができない堅牢性を表現しています。また限られた空間の中で、周囲の植生と合わせた緑を多く盛り込んでいます。この物件は元々の地形を継承する形で開発しており、擁壁の中間位の高さに地盤面があるのですが、そこに樹木を植えています。駐車場入口の上にも特製のプランターを作成して植樹を行い、擁壁から緑が溢れだすようなイメージを作っています」
高橋:「先進性のあるファサードとして、特注のステンレスガラスサッシを南平坂に向けて斜めに傾けるデザインにしました。坂道を歩く人々には対面の緑を迫りくるように感じさせ、室内からは坂道を見下ろしたくなるような親近感が生まれることを目的としています。対面に建つ迎賓館の豊かな緑を鏡のように映して緑量を補完しながら、街に建物を溶け込ませるという2つの効果を実現させました。ここでもテーマ通り、敷地内外の緑地や街を映し出す薄い一枚の被膜で、プライバシーとパブリックの境界を試みています。建物外から見る姿と室内から見る景色にギャップを生ませ、この街に溶け込み、この街と一体となった、永く受け継がれる景観を目指しました」
プレミスト南平台の「開放性」を表す象徴となっているのが、各専有部に設けられたインナーバルコニーやルーフバルコニー。最上階にはルーフテラスを設置しました。
高橋:「インナーバルコニーは通常プランでも5m×3mの大きさを確保し、ゆとりのある空間を実現しています。2mを超えるバルコニーは容積対象面積に入ってしまうのですが、良い空間を作りたい、この土地ならば需要がある、という我々プロジェクトの熱意が届き、実現へと舵を切ることができました」
物件を創るにあたって、意匠はもちろん工程においても多くの課題があったと佐川は語ります。
佐川:「もともと、この物件は既存物件の解体からスタートしました。敷地いっぱいに建物が建っていたため、近隣への立ち入りも必要でしたし、解体時の騒音や埃なども当然発生します。近隣の理事会や個人宅に足を運んで事前にご説明し、ご了解のもとでご迷惑がかからないよう慎重に工程を進めていきました。また敷地内の樹木は高さ的に完成後に入れることができないため、ゼネコンさんや造園業者さんにご協力をいただきながら、工事中に7mの樹木を植え、枯れないよう管理を続けました。擁壁の工事でも施工会社さんと検討し、近隣の敷地に入らず敷地内で最後の仕上げができるようパーツをPC(ユニット)化するような手立てを考えました。全工程をかなり計画的に行う必要があり費用もかかりましたが、気を使うべき大切なことだと捉えています」
高橋:「無電線化も、早期の段階から計画していたことの一つでした。東京電力と通信5社、渋谷区の街灯などの電線を地下に埋めたり迂回させたりして無電線化を行いました。こちらもかなり時間と労力を使っていますし、佐川にも尽力してもらいましたが、やはり景観的に非常に重要だった、と完成物を見て実感しています」
街と一体化するファサードで新たなアプローチを投げかけた「プレミスト南平台」。次回は「プレミスト南平台が織りなす「貴石」の空間」についてお伝えします。(第2回へ続く)