2012年4月に渋谷ヒカリエが開業し、東急東横線と東京メトロ副都心線の相互直通運転も2013年3月に開始する渋谷駅界隈。
これまでも東京を代表とする大都市として知られていたこの街が、今再び大きく注目されています。
そんな渋谷の街について、あなたはどんなイメージを持っていますか?『若者の街』、『カルチャーの街』、『ビジネスの街』。
どれも渋谷を象徴する大きな側面ではありますが、もちろん、それだけではありません。
渋谷という街には、もっと懐深くて人間味溢れる、風情たっぷりの魅力が沢山あるのです。
今回は、そんな渋谷の街の魅力を住まうTOKYOの視点で紐解いていきましょう。
ふと渋谷に足を踏み入れてみると、そこには幾つもの坂があることに気づくはず。
坂と暮らしが密接に関係する場所では、古来より多くの人々が行き交い、様々な風習やしきたりが生み出されてきました。
渋谷の街もまた然り。
一般に知られる『若者の街』というイメージとはまた一味違う、『坂』と共に育まれてきた数々の風情と文化が、ここには根深く息づいているのです。
地図にもその名が載る大きな坂から、路地裏の名も無き坂まで。渋谷駅界隈には、多くの坂が存在します。
中でも、渋谷という街の個性を色濃く反映する坂のひとつ、スペイン坂。
その特徴的な名前は、昭和50年、当時まだ無名だったこの坂に店を構えていた、スペイン風喫茶店のオーナーによって命名されたと言われています。それに呼応するように、以後スペイン坂沿いには、欧州風の外観のカフェやショップが、数多く軒を並べるように。
気付けば辺りは異国情緒あふれる街並みへと変身し、そこから多くの文化が生み出されたのです。
その名残りは、今も健在。イタリアの街角にあるバールのような雰囲気の老舗カフェ&バー『人間関係』や、坂の頂上に立地する単館系映画館『シネマライズ』など。
様々な文化の発信地として、一人のカフェオーナーが提案した『スペイン坂』という名前が、今も渋谷の街に彩りを与え続けているのです。
渋谷駅西口から国道246号線を渡った一帯には、『桜丘(さくらがおか)』という地域が存在します。その名の通り、数多くの桜が植えられているこのエリア。中でもメインストリートとして親しまれる坂、通称『さくら通り』は、知る人ぞ知る美しい桜並木として、多くの人々を魅了しています。夜にはライトアップも施され、『渋谷さくらフェスタ』という名のイベントも開催。
何かと忙しい渋谷という街の中で、新しい季節の息吹を感じられ、一時の癒しと日本らしい春が楽しめるスポットとして、多くの人々から愛されています。その一方で、少し裏手にはインフォスタワーやセルリアンタワーなどのオフィスビルも数多く存在。IT産業黎明期
(れいめいき)には“ビットバレー”とも呼ばれた、国内IT業界の中枢としての側面も。そんな渋谷区桜丘町(さくらがおかちょう)にある『さくら通り』もまた、今の渋谷を象徴する坂といえるでしょう。
『侘び・寂び』を愛する昔ながらの日本の心と、常に進化し続けるITビジネスパーソンが共存する、新旧文化の交錯地点なのです。
相互直通運転の開始で注目される東急東横線と東京メトロ副都心線。副都心線の出入り口方面でもある渋谷駅東口側には、
もうひとつ渋谷を代表する坂があります。
それは、宮益坂(みやますざか)。江戸時代には、富士山を望む坂『富士見坂』とも呼ばれていたこの坂一帯には、古くより商人町が形成されていました。今もその面影は脈々と受け継がれ、一般に抱かれる渋谷の街のイメージとは異なる、落ち着きある雰囲気をかもし出しています。
なかでも象徴的な場所が、駅から坂を上る左手に位置する、宮益御嶽神社(みやますみたけじんじゃ)。宮益坂から境内へと向かう参道に入れば、明らかにその『空気感』が変わる瞬間を感じることが出来るはず。室町時代初期に創建された由緒ある神社だけに、その風格は別格です。毎年9月には例大祭も開催。法被姿の男たちが神輿を担いで街を練り歩く姿は、渋谷住民なら誰でも知っている、夏の風物詩となっています。
渋谷という街の先進性に、古くから伝わる商人町の落ち着きある暮らし。さらには、宮益御嶽神社を中心とする、日本古来の伝統文化までが根付く宮益坂。皆さんが知らない『ゆとりと風情のある街、渋谷』が、ここには今も息づいているのです。
渋谷の駅からほど近いのに、繁華街やビジネス街ともまた違う、しっとりとした空気が漂う宮益坂。夜も楽しめるこのエリアを、久しぶりに昼の明るい時間に歩いてみましたが、改めてその雰囲気のよさに気付かされました。道行く人々も、みなさんどこか余裕があるんです。そうそう、本文中でも触れてる宮益御嶽神社には、国内でも非常に珍しいニホンオオカミの狛犬(こまいぬ)がいるので、お近くにお寄りの際は、ぜひ立ち寄ってみてください。