フードコーディネーターとして雑誌や書籍で活躍する傍ら、築80年の古いお寿司屋さんを自分でリフォームした店舗付住居でカフェ「coya」を営む。その空間、そこに置かれた全てのモノたちは、きこさんの好きなモノばかり。その魅力に魅せられ通い続けるファンも少なくない。著書の『台所目録』(地球丸)も好評。

橙(だいだい)を薄くスライスして洗双糖(せんそうとう)というお砂糖をかぶせておきます。お湯で割ればレモネードに。紅茶にいれてもおいしい。
「子どもの頃も、大人になった今も、そうそう変わらないんです。年に数回訪れる暦にちなんだ行事を、実際にやってみると、やっぱり楽しいし、心が躍るものですよ」歳時記というと、なんか特別なことのように構えてしまいそうだが、実は、誰もが、かつては当たり前のようにしていたことが多いのだと、きこさん。
「子どもの頃の素敵な思い出もあるはずです。たとえばお正月なら、凧をあげた冬の青空の清々しさとか、お雑煮やおせちが並ぶ台所の満ち足りた雰囲気とか。そんな思い出が、あらためて行事を楽しむことで、いきいきと蘇ってくるんです」
とはいえ、きこさんは子どもの頃と同じように、「昔ながらのお正月をしましょう」と言っているのではない。実際、この本の中で紹介されているお雑煮も、トムヤム雑煮。昔ながらのお雑煮ももちろん美味しい。でもタイ料理をアレンジしたピリッと辛いお雑煮も美味しい。それだって、自分なりの行事の楽しみ方だと、教えてくれる。
「この本では、私なりの年中行事の仕方を集めました。暦にかこつけて、おいしいものをこしらえたり、暮らしを彩る工夫をすることは楽しいって、そう感じてもらえればいいなぁって思っています」
なるほど。かこつけて、それぐらいの気軽さなら、ちょっとやってみようかな、と思うから不思議だ。こうしなければいけない、という思いこみが行事を面倒に感じてしまう原因なのかもしれない。
「子どもがいなければ豆をまかないかもしれないけど、豆おこわを作れば節分だし、おひなさまを飾らなくても、ひなちらしが食べたいなとか。何かにかこつけておいしいものを食べるのって、いいですよね」
確かに、同じ鰻だって、夏の土用にかこつけて食べれば、気分も違う。しかもこの鰻もそうだが、暦にちなんだ行事は、健康という面からみても理にかなったものが多いのだという。
「七草粥はお正月のご馳走責めにあった体を、野のものの成分で調和をはかろうとしたもの。だから食べると気持ちも体もほっとしますよね。食べ物だけじゃなく、冬至のゆず湯は体を温めてくれるし。行事を楽しむと同時に、その由来や古来から伝えられている風習について調べてみると、とても興味深いんですよ。それはこの本を作ってみて、よく分かりました」
そう、この本には、きこさんならではの楽しみ方だけでなく、行事ごとの由来や風習についてもきちんと紹介されているから、ぜひ参考にして欲しい。

色の少ない冬には自然の中で見つけた赤い実も愛おしく感じる。





