物流施設の老朽化にどう対応するか
2026/05/22
2026/05/22
2030年に向けた「総合物流施策大綱」(国土交通省)が公表されるなど、日本における物流への課題意識、重要性はますます高まっています。物流はもはや社会のインフラであり、企業にとっても、複雑化、多様化するサプライチェーンを支える機能として、企業経営における重要課題となっています。
特に昨今は、2024年問題を中心とした、労働者不足に関わる問題が大きく影響し、多くの企業がその対策に取り組みました。その対策の一つとして、物流施設内のオペレーションの効率化、省人化のためのDXやロボティクス、マテハン機器の導入といった施策がよく取り上げられますが、その時の導入の障壁となり得るのが、物流施設自体の老朽化です。
日本では高度経済成長期(1950〜1970年代)以前に建てられた倉庫も多く、すでに築40年以上経過している倉庫も少なくありません。40年以上も前に建てられた物流施設では、そもそも、電力や設計などにおいてDXやマテハン機器などの想定されていないケースも多く、物流施設の老朽化は物流戦略改革のボトルネックになることもあります。
さらに、耐震性に対する安全性の問題もあります。昨今、日本においては大きな自然災害が多発しており、老朽化した物流施設は、保管する製品の損失だけではなく、従業員の安全性や周辺地域への影響など、大きなリスクを抱えています。働く環境としても、古い施設では空調の管理が十分ではないケースや、手すりなどの安全性にも問題が起こりやすくなります。その場合には、従業員の離職の増加やモチベーションの低下をもたらし、さらなる人手不足を引き起こしてしまうリスクもあります。
国土交通省が2025年4月に公表した「『物流拠点の今後のあり方に関する検討会』における報告書」では、現在物流拠点が直面している課題として、以下の5つがあるとした上で、今後の方向性とそれに対する支援策を言及しました。
「(3)物流拠点の老朽化」とあるように、国も「物流施設の老朽化」は企業のサプライチェーンを支える上で大きな課題としており、物流拠点が直面している問題の一つに挙げています。
同報告書では、「築年数別の登録件数」が紹介されており、営業用倉庫のうち築40年を超える倉庫が、普通倉庫では約20%、冷蔵倉庫では約34%に上るなど、長期にわたり使用されている施設が多数存在しています。また、一般トラックターミナルは、1960年代後半から1970年にかけて供用開始された施設が集中しており、50年以上経過している施設が多いようです。
1~3類倉庫の経過年数別登録件数

国土交通省「第2回 物流拠点の今後のあり方に関する検討会」内(一般社団法人 日本倉庫協会集計)より作成
冷蔵倉庫の経過年数

国土交通省「第1回 物流拠点の今後のあり方に関する検討会」内(一般社団法人 日本冷蔵倉庫協会調べ 令和5年12月時点、容積ベース)より作成
当然、老朽化しているから建て替えれば良いという簡単な話ではありません。同報告書によれば、建て替えを行うには、代替地を確保する必要もあり、加えて昨今の建設コストの高騰によって、建て替えをちゅうちょする企業もあります。また、倉庫業における保管料金およびトラックターミナルにおける使用料金の低水準での推移、電気代や労務費等の保管料金への転嫁不足等、ほかにもさまざまな要素があり、建て替えやリノベーション等の対応に苦慮しています。建て替えが進んでいない状況を変えていくには、1社だけで解決できる問題ではなく、「事業者間の連携や、地方公共団体の関与による計画的な代替地確保などによる計画的な建て替えが欠かせない」(国土交通省「物流拠点の今後のあり方に関する検討会」における報告書)としています。
このまま倉庫の老朽化が進んでいくと、DXや快適な労働環境のための福利厚生施設など、新しい機能の採用ができなかったり、修繕や補強のコストもかかったりするなど、労働環境の悪化などの弊害が生じることもあります。
こうした状況を受け、国も支援策の策定に乗り出しています。建て替えや倉庫の統廃合を行うには、資金の確保や、ビルド&スクラップするための土地の確保が困難であるほか、現行の支援は、倉庫業者が整備する営業倉庫に対する税制支援(倉庫税制)にとどまっているため、施設が立地する土地の高度利用や多機能化、高度化、異なる業種間での協業が必要であるとしています。
さらに、老朽化した施設の再構築や新規供給を促すため、多機能化や協業化が可能な物流拠点に対する円滑な整備・再構築について、地方公共団体も参画するスキームを設けるとともに、必要な支援措置等を検討するとしています。
国土交通省や自治体では、老朽化した倉庫を建て替えるために容積率の緩和や補助制度を提供するケースがあります。すでに、倉庫・工場建設の補助金が用意されており、「ものづくり補助金(建屋は総経費40%以下)」「各自治体企業立地補助金(数千万円〜数億円)」「先進的省エネルギー投資促進支援事業」「中小企業省力化投資補助金」が活用できる場合もあります。
また、地方自治体では企業誘致のために補助金を用意している場合があります。国の補助金に加えて検討することで、工場・倉庫建設の自己負担を削減することも可能です。
(詳しい内容はそれぞれの公式サイトをご参照ください)
物流施設の老朽化は、企業のサプライチェーンを見直す上で重要な問題となり得ますが単に老朽化の改善のみを行ったところで、全体の問題は解決されない場合もあり、総合的な判断が必要となります。
まず、実際の劣化度合いや維持コストの確認が必要です。仮に残耐用年数がまだ残っている場合でも、メンテナンス費に問題があるのであれば、早期の建て替えや大規模改修を判断する必要もあるでしょう。経営計画と照らし合わせながら、リスクとコストのバランスをとることが必要です。また、財務戦略との整合性も必要です。現在、自社物件であるならば、財務上の問題をクリアするための方策も必要となるかもしれません。
将来的な物流戦略なくして、施設の改修計画はありえません。今後、さらに変化が激しくなることを想定すれば、拠点の移動や統廃合が頻繁になることも考えられます。簡単なことではありませんが、将来を見据えた物流ビジョンを描き、経営計画に取り入れることが重要です。大和ハウス工業が提供するDPLシリーズは、建て替えや統廃合を検討する企業に向けて、将来のDX活用による物流戦略への対応、所有から賃貸への変更や一時的な入居など、総合的な経営戦略に基づいたさまざまな支援が可能な物流施設です。
施設が老朽化しているからといって、イコール建て替えや移転の選択が必須というわけではありません。元来、物流施設は堅ろうに建てられていますので、リノベーションや用途変更による活用も検討すべきでしょう。立地や不動産市況を踏まえながら、検討したい施策です。大和ハウス工業では、「BIZ Livness(ビズ・リブネス)」として物流施設の再生にも取り組んでおり、増加するストック物件の再生は、資源の有効活用、事業展開のスピードという点でも効果的な手法と言えるでしょう。
現在、物流施設は、サプライチェーンの拠点のみではなく、地域においては、防災拠点やコミュニティ拠点としての役割もあります。企業の地域への貢献も考慮した上で戦略を策定することも重要です。
物流施設の老朽化は、生産性の低下をもたらすだけではなく、災害時の人的・物的被害や、長期的なコストの拡大を招いてしまうリスクもあります。建て替えや統廃合は、大きな経営判断の一つですが、ますます重要性が高まる物流戦略改革は、将来へ向けた一つのチャンスと捉えることも可能です。適切な判断のもと、物流戦略を構築することが今後の経営に影響を与えることは間違いないといえるでしょう。
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