特定荷主での「物流統括管理者(CLO)」の設置が必須に法改正で求められるCLO選任と、荷主企業が見直すべき物流戦略
2026/07/24
2026/07/24
「物資の流通の効率化に関する法律」が改正され、2026年4月に全面施行されました。物流における諸問題に対応するために、すべての荷主と物流事業者に対して、物流効率化の取り組みを規定したものですが、その中で大きな注目を集めているのが、前年度取扱貨物総重量9万トン以上の荷主企業に義務付けられた「物流統括管理者(CLO)の選任」です。
物流は日本の経済や消費者の生活を支える重要なインフラであり、国土交通省の資料(2025年)によれば、物流業界の営業収入の合計は約29兆円(全産業の2%)、従業員数は約226万人(全就業者数の3%)にも及びます。これだけ大きな経済規模であるにもかかわらず、このまま何も対応しなければ、2030年度に最大25%程度の輸送力不足が生じる可能性がある(国土交通省)とされています。ここ数年は「2024年問題」に対応する、官民協力のもとさまざまな対策によって、改善が進んでいるものの、現在でもドライバー不足や多重下請構造、輸送力低下といった問題が解決したとは言えない状況です。それは経済的な側面に加えて、災害時の物資供給リスク、CO₂排出量削減等の社会的課題への対応にもつながっていきます。
複雑で多方面にわたる物流の問題は、運送会社や物流事業者単独の改善で解決するものではありません。そこで国は、荷主企業が経営課題の一つとして物流の問題を捉え、より大きな取り組みとして、物流業務の生産性向上や効果的なサプライチェーンの構築を行うことを求めたのです。
CLOとは「Chief Logistics Officer」の略で、CEO(Chief Executive Officer)やCFO(Chief Financial Officer)と同じく、経営層の視点から特定領域を統括する役割を指します。国土交通省の提言では、「経営戦略の視点から物流を統括管理し、物流全体の最適化を図ることで企業価値の向上と社会的課題の解決に貢献する人物」とされています。つまり、原材料の調達から販売までのサプライチェーン効率化に加え、社会課題の解決にも関わる、企業経営に深く関与する役割が求められています。
すでに欧米ではCEOやCFOと並ぶ役員クラスとして定着している企業も多く、サプライチェーンの責任者を経営の中核に据えるケースが増えているようです。
日本においても、企業内には少なくとも物流部門の責任者が置かれ、物流センター長や物流部長などの役職名で物流業務に取り組んでいますが、今回提示されたCLOは、物流部門だけではなくサプライチェーン全体を総合的に管理し、経営課題の一つとして物流戦略を主導する立場として位置付けられています。
国土交通省は、2026年3月に、今後の物流統括管理者(CLO)に期待される姿について検討を行い、提言としてとりまとめました。その中で、期待される役割と求められる知識・知見として、次のように記載されており、経営レベルに近い責任と知識・スキルが求められていることがわかります。
期待される役割
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求められる知識・知見
企業経営全体を俯瞰した判断や調整を行う者であり、ゼネラリストとしての能力が強く求められる。 |
国土交通省「物流効率化の推進に関する基本的な方針」によれば、荷主や物流事業者等には、荷待ち時間・荷役時間の短縮、積載効率の向上、関連する施策への貢献に関する目標が設定されています。特定荷主企業で選任されたCLOは、この目標達成のために、計画の策定から実施まで主導することになります。
特定事業者※が取り組むべき業務の一つが、「中長期計画」の策定です。CLOの選任は荷主企業のみが対象となりますが、「中長期計画」の作成は、特定事業者にあたるすべての事業者が対象となります。
※特定事業者指定基準:(特定荷主)取扱貨物の重量9万トン以上、(特定貨物自動車運送事業者等)保有車両台数150台以上、(特定倉庫業者)貨物の保管量70万トン以上
「中長期計画」は毎年度提出することを基本としつつ、中長期的に実施する措置を記載することを踏まえ、計画内容に変更がない限りは、5年に一度提出する必要があります。
計画には、判断基準で示す取り組み事項を踏まえ、「運転者1人当たりの1回の運送ごとの貨物の重量の増加」「運転者の荷待ち時間の短縮」「運転者の荷役等時間の短縮」に関し、「実施する措置」「具体的な措置の内容・目標等」「実施時期等」「参考事項」を記載することとされています。
具体的な数値目標の一つが、「2028年度までに、全国の貨物自動車による輸送のうち5割の運行で1運行荷待ち荷役時間等を1時間短縮することで、運転者1人当たりの荷待ち・荷役時間等を年間125時間短縮」することです※。ドライバーが無償で行う荷物の積み下ろしは、現在でも古い商慣習として残っているケースもあり、発荷主・着荷主・物流事業者全体で取り組む問題でもあります。ドライバーの荷待ち・荷役時間の削減は、全体の運送コストの削減、効率化につながります。
※自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト「新物効法に基づく対応事項」(厚生労働省)
もう一つの目標となるのが、「2028年度までに、積載効率について、全国の貨物自動車による輸送のうち5割の車両で50%を目指し、全体の車両で積載効率44%への増加」を実現することです。積載効率の改善は、ドライバー不足の解決やコスト削減に直結する、即刻取り組むべき課題です。大きく改善しようとするならば、共同輸配送やモーダルシフトなど、一企業の枠を超えた取り組みが必要となりますので、まさにCLOの活躍の場だといえるでしょう。
また、上記2つの目標の達成に向けた取り組みを通じて、「効率的な共同輸配送、共同拠点利用等を図るフィジカルインターネット※の実現を図るとともに、地球温暖化対策計画における脱炭素物流の推進に貢献する」という目標も記載されています。
※インターネット通信の考え方(共通の回線を用いてパケット単位で通信を効率的に実現)を物流(フィジカル)に適用した新しい物流の仕組み
CLOは、政府が掲げる数値目標の達成や、自社のサプライチェーン全体における課題解決に向けて、全社的な物流戦略の見直しと具体的な施策推進を担うことになります。一方で、CLOとして果たすべき役割、業務範囲、施策内容については、荷主企業の間でまだ十分な共通認識が形成されているとは言いづらい状況です。
そこで経済産業省では、具体的な業務イメージが共通認識され、円滑なCLO選任、戦略策定の一助となるよう、物流改革を先行して推進する優良事例を「CLO取組事例集」として収集・整理しました。

その中では、株式会社サンゲツ、株式会社J-オイルミルズ、株式会社SUBARU、ダイキン工業株式会社などの事例が紹介されており、いずれの事例も、全社的に物流改革を行った好事例となっています。
2026年4月からのCLO選任の義務化を受けて、実質的な取り組みはこれからという企業も多いのではないでしょうか。企業の置かれた状況はそれぞれ異なりますので、まずは自社のサプライチェーンの状況を正確に把握し、改革の方向性を見いだしていく作業から始めていく必要があります。
物流課題が、日常的に経営課題に上がることがまず必要となるでしょう。物流センターをコストセンターとしてではなく、経営上の課題として物流を捉えることが何よりも重要なことです。CLOを中心として、物流課題は全部門に関わる問題であることを経営陣で共有し、経営的な判断を行うことが求められます。
中長期計画を策定し、数値目標の達成に向けた効果的な施策を行うには、基になるデータが必要です。物流施設の活用状態や業務プロセス、配送上においてはトラック荷待ち時間、積載率、実車率、納品までのリードタイムの状況など、実態を正確に把握することから始める必要があります。そして、施策後の効果検証を確実に行うことも重要です。
国も指摘しているように、物流の問題は、運送会社や荷主企業だけで解決できるものではありません。発荷主、着荷主、3PL会社、運送会社、同業会社まで含め、サプライチェーン上のさまざまな関係者とのパートナーシップのもとで取り組む必要があります。仕入れ・生産・販売部門との連動に加え、業界全体での施策の検討や連携など、CLOには組織や企業の垣根を越えた大規模な取り組みが期待されます。
大和ハウス工業では、グループ会社や多彩なパートナー企業との協力体制のもと、物流やサプライチェーンが抱える課題解決に向けたさまざまなソリューションをご用意しています。具体的には、適切な物流不動産・施設の提供、WMSの構築、デジタルデータによる作業内容の見える化、ロボティクスの導入・支援による業務プロセスの効率化、さらには働き方改革や従業員満足度向上まで、幅広い領域を支援しています。
次の価値を、つぎつぎと。DPL Service Contents
今回の法改正は、国からの勧告・命令も想定されるなど、厳しい側面もあるように、物流問題の解決は待ったなしの状態であると言えるでしょう。
物流に関わる課題に悩む企業にとっては、非常に負担の大きい対策が必要な場合もあるかもしれませんが、むしろ、単に「法改正のため」ということではなく、本質的に物流を「企業の新たな競争力」として捉え、成長させる機会だと考えることも一つの方向です。CLOを中心として、サプライチェーン全体における競争戦略の構築に向けて、一歩踏み出すときが今なのかもしれません。
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