ECがけん引する物流施設市場
2026/10/26
2026/10/26
E-commerce (以下:EC)市場の継続的な成長を受け、それを足元で支える物流施設は、すでに産業インフラとして不可欠な存在となっています。
ECの成長によって、当然、物流施設も進化していく必要がありますが、昨今のEC隆盛の背景、そしてECの発展に貢献する物流施設とはどうあるべきなのでしょうか。
経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」の結果によれば、2024年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、約26.1兆円(前年約24.8兆円、前々年約22.7兆円、前年比5.1%増)に拡大しています。
BtoC-EC市場規模の経年推移(単位:億円)
経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査報告書」より作成
BtoC市場に比べて、けた違いに大きいのがBtoBのEC市場です。2024年の国内BtoB-EC市場規模は、前年比10.5%増の約514兆4,069億円に達しています。
また、EC化率は、BtoC-ECで9.8%(前年比0.4ポイント増)、BtoB-ECで43.1%(前年比3.1ポイント増)となっており、BtoBにおいては、全取引の半数近くまで、ECによる取引となっているようです。
BtoB-EC市場規模の推移
経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査報告書」より作成
特に、食品製造業のBtoB-EC市場規模は約41兆5,859億円(前年比17.0%増)でEC化率81.3%、産業関連機器・精密機器製造業は約23兆8,228億円(前年比7.5%増)でEC化率47.8%、鉄・非鉄金属製造業は約33兆5,717億円(前年比8.6%増)でEC化率50.6%と、主要業種で市場が拡大しています(「令和6年度電子商取引に関する市場調査報告書」より)。物流市場においても、今後ますますECのウエートが大きくなりそうです。
CBRE「ジャパンロジスティクスマーケットビュー(2026年第2四半期)」によると、首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率は7.8%まで低下しました。一時期は大量供給による「供給過多」が心配されていましたが、EC関連企業を始めとする強いニーズもあり、需給バランスがとれてきました。ECが物流施設に与えている影響として、以下のような点が挙げられます。
昨今のEC関連事業の物流市場において、EC企業から物流を請け負う3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)事業者の重要性が非常に高くなっています。以前からの事業の中心であった製造業や小売業の物流アウトソーシング需要に加え、EC需要増によるデータの管理活用まで含めたオペレーション業務が拡大しているようです。
現在の3PL事業者は、単なる作業代行にとどまらず、物流戦略の企画・設計から倉庫運用、システム連携などのサービスを総合的に提供するケースも多く、EC事業者にとって欠かせないパートナーになっています。
「月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)」の調査では、2024年度の市場規模(物流企業46社の3PL売上高集計)は約4兆7400億円で、前年度から9%の成長となっています。
海外からのインバウンドの増加に伴い、日本の越境BtoC-EC(米国・中国)の総市場規模は4,410億円まで増加しました(経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査報告書」)。その影響もあり、成田国際空港や関西国際空港周辺、東京ベイエリア(湾岸エリア)の需要が高まっています。
ECの効率的な物流には、ラストワンマイルの緻密さに加えて、幹線輸送による大規模輸送も重要ですが、トラックドライバーの時間外労働規制(2024年問題)によって、一人のドライバーで長距離を運ぶことが難しくなり、ドライバーの拘束時間を短縮する手段の一つとして、中継輸送と中継拠点の活用が求められています。都市圏からの中継地点となりうる立地(高速インターの隣接地など)では、物流施設のニーズが生まれています。
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これまで中小企業が本格的なEC事業を展開しようとした場合、効果的な物流体制をつくるためにはシステムや倉庫運営への初期投資が参入障壁となる場合がありました。現在では、フルフィルメント代行サービスや高機能なEC構築プラットフォーム、「RaaS(Robot as a Service)」など、3PL事業者が提供するサービスをサブスクリプションとして活用することで、初期コストを抑えながらEC事業に取り組めるようになりました。
EC、特にBtoCにおいては、「多品種・小口・スピード」が求められるため、望まれる物流施設には、さまざまな条件がありますが、ドライバーや働き手不足が顕著になる昨今、特に自動化が実現できる物流施設が求められています。
ロボットや自動化設備を導入し、運営するためには、設備の大きさや重量、電気使用量に耐えられる物流施設である必要があります。
また、自動化には、ロボットやマテハン機器を効率的に稼働させる、WMS(倉庫管理システム)やWES(倉庫実行システム)を欠かすことができません。運営面での設備、機能にはなりますが、物流施設側としても導入可能な状態にしておくことは、重要な要素です。
施設の中だけでなく、トラックの出入りの効率化、滞留時間、ドライバーの負荷を減少させることも重要です。各階に直通できるランプウェイや待機場、そして、ドライバーの待ち時間を減らすトラック予約受付システム(バース管理)も、EC事業の成長には欠かすことのできない仕組みだと言えます。
EC物流は、入出庫やピッキング、荷物移動などの機械化が進んでも、ギフトラッピングや検品、柔軟な封入物の対応など、人手による作業が多く存在します。そのため、近隣から十分な働き手を集める必要があり、快適な労働環境を整えることが非常に重要です。身体に負担の少ない作業環境、リフレッシュできるアメニティやカフェなどの共有スペース、働きやすさを支える施設内の託児所などが求められます。
大和ハウス工業では、EC事業者に限らず、さまざまな物流オペレーションのためのソリューションを提供しています。例えば、物流テック企業のGROUND社と協業し、倉庫内を最適化する高度なAI統合管理システム(GWES)を、テナント向けに初期投資不要の「月額定額制」で提供しています。
また、大和ハウスグループのアッカ・インターナショナルを通じ、複数ECサイトの在庫一括管理からフルフィルメント(撮影・梱包・配送)までをワンストップで受託できる体制を整えています。
さらに、建築費用、人件費高騰、ストック物件の増加を背景として、既存倉庫の「再生事業」にも力を入れています。企業の統廃合などで不要になった施設や、事業拡大のために資産の組み換えを行う企業の古い倉庫や施設を、大和ハウス工業が買い取り、自動化対応倉庫へとリノベーションして再販・賃貸する事業(ビズ・リブネス)も行っています。
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都市圏においては、EC向けの物流施設の空きが少ない状況となっていますが、今後ECビジネスの発展には、充実した物流施設を欠かすことはできません。
今後は設計段階からの自動化の織り込みが不可欠です。例えば、自律走行ロボット(AMR)の高速走行を実現するには、床面の僅かな傾斜や凹凸を排した高精度な施工技術に加え、自動化設備を運用するための大容量電源や堅牢な通信ネットワークの整備が求められます。
立地面においては、今後すべての条件を備えた物流施設は望みにくい状況です。自社のEC事業にとって優先する課題を解決できる立地条件を探すべきなのかもしれません。例えば、ラストワンマイルの機能を果たすことを優先するか、特定地域を対象にした中継物流としてのニーズを満たすのか、あるいは、十分な労働力という観点からの立地条件を優先するのか、といった自社のおかれている状況に合った選択が必要となりそうです。
また、日本の2050年カーボンニュートラル目標に加えて、主要なECプラットフォーム企業は、サプライチェーン全体でのCO2削減を掲げています。選ばれる物流施設になるためには環境配慮も必要です。例えば、太陽光発電パネルの設置や非常用電源の装備、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)認証の取得による省エネ化は、これからの物流施設に欠かせない要素となるでしょう。
もはや、ECはビジネスや生活に欠かせないインフラ事業と言えるまでに大きく成長してきました。今後のECへの新規参入も多く見込まれる中、物流施設としても、これまで以上にEC対応型の施設が求められそうです。
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