大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

物流施設ソリューション

LOGISTICS NEXTSTAGE
ロジスティクスはネクストステージへと進化

vol.2「物流」の位置づけが大きく変化

  • 大和ハウス工業株式会社
    取締役常務執行役員 建築事業本部長
    浦川 竜哉
  • 早稲田大学ビジネススクール教授 内田 和成氏

公開日:2021/08/02

物流情報は、新たなビジネスのチャンス?

内田:本にも書かせていただきましたが、物流がそれほど伸びているのであれば、当然、不動産会社や建設会社もやりたいですよね。不動産会社で土地を持っているところや、建設会社もお手の物だと思うのですが、彼らは相変わらず脅威にはなっていないのでしょうか。

浦川:脅威になっています。当時で10社~20社だったと思いますが、今では60社以上になっています。まず参入障壁がそれほど高くありません。今は、お客様とのリレーションシップが少なくても、土地を買って、マルチテナント型を建ててじっと待っていれば、物流需要がありますから、立地と価格設定さえ間違えなければ誰かが借りてくれます。そういうわけで、ゼネコン、生命保険会社、不動産会社、あらゆるところが物流施設市場へ参入しています。
日本経済新聞(2021年5月31日朝刊)に「物流施設ブランドイメージアンケート」が掲載されました。それを見ると、各社が物流施設ブランドを展開しているのがわかります。

内田:各社ブランドがあることにすごく驚きましたが、それくらい競合がたくさん入ってきているということですね。
ところで、大和ハウス工業の大きな強みの一つは、物流施設内でのものの動きがわかることだと思います。それが次のビジネスチャンスにつながります。つまり、それをマーケティングに使うことができるということです。
私が面白いと思う例として、名刺管理の会社があります。名刺の管理というのは、それ自体、あまり面白味のある仕事ではないかもしれません。人が嫌がるような仕事だからアウトソーシングするわけです。ところが、さまざまな会社の名刺情報を集めることによって、この会社はどこの企業でどのような動きがあるのか全部わかるわけです。これは一見、些細に見える情報を集めると宝の山になるという典型例です。
もうひとつの例として、中小企業の導入が多い会計ソフトがあります。自社で経理システムを持たずに外部委託的な感覚で使われているのですが、毎日のお金の出入りをすべてこの会計ソフトに記録しますので、会計ソフトの会社は、導入企業のキャッシュフローをリアルタイムで把握することができます。
それによってどのようなメリットがあるのかを考えると、普通、銀行がそのような中小企業にお金を貸す場合、BS(貸借対照表)やPL(損益計算書)などの決算書を見たり、経営者の人物像を見たりして判断するといったオーソドックスなやり方になります。ところが、この会計ソフトを使っている会社であれば、毎日のお金の流れを把握することができます。売上とコストが見合っているか、ものづくりがきちんと進んでいるかなど、全部が見えるのです。つまり、銀行よりも信用調査の精度を格段に高くすることができますから、銀行と同じようなビジネスを始めれば、銀行にとっては大変な脅威になります。
そういった発想で考えると、今、大和ハウス工業が持っている全国約300カ所で稼働している企業の物流情報を整理して加工するとものすごいビジネスになると思うのです。

浦川:あくまでお客様へのサービスの一環としての話ではありますが、実は今、始めようとしています。どこまで売れているのか、何が売れているのか。つまり、入庫と出庫での与信管理です。物流のDX化を目指し、大和ハウス工業は2017年にダイワロジテックというホールティング会社(大和ハウス工業67%、大和物流33%出資会社)を設立しました。その中の子会社を活用して、お客様の在庫量、いつ、何が、どれくらい売れたか、不良在庫としてどれくらいたまっているのか、季節変動はどうなのかなど、会社の入出荷量と売れ行きを調べて、ある程度の与信管理をするようなシステムをつくろうとしています。

内田:それをもう少し進めた例として、ネスレジャパンという会社があります。ネスレジャパンさんはメーカーとして在庫を持たないようにしています。実は問屋が買い取っているわけですが、これは従来型の押し込みとは違います。問屋が効率的な経営をすることによって、いわゆるキャッシュ・コンバージョン・サイクルが短くなり、回転が速くなります。ネスレジャパンさんにとっては在庫を持たないことでバランスシートがきれいになり、キャッシュフローも良くなります。流通も、単に預かると利益が出るという仕組みではなく、出入りをきちんとすることによって利益を確保できるようにすると、問屋がメーカー以上に在庫管理をしっかりやるようになります。要は、全部買い取るわけですから。以前はメーカーのものを預かったり、倉庫屋が預かっていた分を全部自社で持っていました。結果的にネスレジャパンさんは財務的に改善したと思います。
御社も、物流の動きをきちんと把握することで、いわゆる債権の買い取りのような、預かっている在庫商品を買い取ってしまうという、金融業すらできるのではないでしょうか。お客さんのものの動きや金の動きをつかんだ企業はすごく強いと、私は思っています。

浦川:在庫の買い取りまでは考えたことがありませんでしたが、ものの流れ、在庫管理によって、ある程度どれくらい売れているのかをつかんで情報をストックして、加工するということはやっていきたいと思っています。

内田:大和ハウス工業さんはリートをすでにやっていますから、私から見ると、リートの中身がものになるだけなので、同じようなものだと言えなくもないですよね。やったらいいと言うわけではありませんが、その辺りにビジネスチャンスがあるのではないかと思います。私は、これからはものを持っていることではなく、その動きを見ることが大きなビジネスチャンスになると考えています。先ほど申し上げた名刺管理会社や会計ソフトのような会社を見ていると、どちらかというと人が嫌がる仕事を引き受けているはずなのに、気がついたら宝の山に化けています。このようなビジネスが良いのではないかと思います。

進む物流事業への進出

内田:もうひとつお伺いしたいことがあります。物流は、荷主から見ると、どちらかというとコアではないビジネスだと以前は思っていました。例えばユニクロさんにとって、かつては店舗が唯一最大の窓口だったので、物流はフルフィルメントというより、供給さえ途切れなければいい、ノンコアなビジネスだったと思います。しかし今、彼らにとってECが大事になってきたことで、物流がノンコアからコアに変わりつつあるのではないかという仮説を持つに至りました。
私はよく家電量販店で買い物をするのですが、その会社も今、自分のところで物流をやっています。経済効率からすると絶対にペイしないはずなのに、そこまで自社物流にこだわるのは、彼らにとってそこがお店に代わるチャネルになるのかもしれません。そうだとすると、小売店にとって、物流はノンコアからコアに代わる可能性があります。その辺りはどのようにご覧になっていますか。

浦川:おっしゃるとおりで、弊社と取引のある企業でも、自社物流に切り替えようとしています。さらに、自社物流に切り替えるだけでなく、物流業そのものをやろうとしているかもしれません。今後、そうした企業が、物流業をやる日が来るのかもしれません。
弊社とJR貨物さんは共同事業として、札幌のJR貨物さんの構内に約1万5千坪の物流センター「札幌レールゲート」を建てることが決まっています。大和ハウス工業が50年の借地をして建物を建て、われわれの責任でテナントを募るのですが、JR貨物さんはその建物に10%の出資をします。つまり物流に投資を始めています。

内田:JR貨物さんとしても、両建てで考えられているのでしょうね。自前でやるスタイル、御社のようなところと組んでやるスタイル、いろいろとトライしながら自分たちのやり方をつくっているのですね。

浦川:最近は共同事業が多くなってきました。大阪、札幌、仙台など、全国で展開しています。D&Fロジスティクス投資法人さんは、大和ハウス工業とファーストリテイリングの私募リートですし、ほかでも、ノンコアの非物流業である各社が少しずつ物流に参画してきています。物流を本業に結びつけたり、ノンコアをコア化していくような動きが全体的に起きているような気がします。

内田:昔のマーケティングの世界で言えば、まずメーカーがあって、そのメーカーの上流に部品メーカーや素材メーカーがあって、ものを仕入れて、生産をして、問屋を通して、小売店を使って消費者に売る、というのが一番シンプルなバリューチェーンでした。メーカーはメーカー、問屋は問屋、小売りは小売りで、中には垂直統合をしているところもありますが、基本的にはそれぞれ別の業態としてありました。
ところがこれだけECが普及して、さらに、産地から仕入れて直に売るなど、まったく新しいいろいろなやり方が出てきて、今までのようなバリューチェーンが崩れてしまっています。物流は、新しいバリューチェーンを待ってつなぐというより、もしかしたら物流そのものがコアになるかもしれないし、今まで小売りだと思っていたところ、問屋だと思っていたところが、物流機能を核にしてお客さんを獲得してしまうような、今までとは違う動きがありそうな気がしています。

浦川:今は両極端になっていると感じています。一方には、中間を取っ払うダイレクトな動きがあります。SPA(製造小売業)として、小売りとメーカー両方の機能を持っていたり、片や、大手量販企業の中には、自社で物流をやることはほとんどなく、3PL業者に任せている企業もあります。徹底したアウトソーシングでコスト管理をされているわけです。

内田:それは持たざる経営という従来型のやり方で、なんとなく限界が来ているというのが私の直感です。例えば大手量販店でECがなかなか進まないのは、従来型のバリューチェーンの効率を追究しすぎたが故に、EC時代やBtoCにうまく対応できなくなってしまったのではないかと仮説を立てています。

浦川:会社にもよりますが、小売業の多くは、物流をノンコアからコアにしようという動きはしていないと思います。逆に、アウトソーシングすることで、配送効率を上げようとしているのではないでしょうか。小売業だけではなく、メーカーにもそのような動きがあります。ある化粧品会社は、物流子会社を物流会社に売却して別会社を立ち上げ、完全にアウトソーシングしてしまう動きもありました。物流をノンコアからコアにしようというのではなく、完全に逆の動きです。切り離して単なる効率化だけを目指す動きと、もっと奥深く物流自身を本業にするような動き、二つあるような気がします。

内田:セブンイレブンさんは物流を徹底して効率化しアウトソーシングすることによって、あれだけの経営効率を上げてきたわけです。お店すら自分で持たず、大半はフランチャイズで他人資本です。しかし、そのやり方が今後どこまでいくのか少し心配です。仕入れも競争原理を働かせて、ある意味では効率追究の権化のような存在なのですが、そうであるが故にビジネスモデルを変えにくい。
自動車会社も自分たちを頂点にティア1、ティア2と系列化して、徹底的に効率化したが故に、EVのようにありもののモーターや材料を買ってくるようなやり方にはすぐには変われません。それと同じように、日本のメーカーや小売りは、今の消費者の購買行動の変化についていけないのではないかと危惧を抱いています。

官民連携によって社会の問題の解決に取り組む

浦川:もうひとつ我々が動いているものがあります。日本の公設市場、国や自治体が経営しているような卸市場が、現在、全国に約1200カ所あるといわれているのですが、PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ:官民連携)を使って、民間活力を導入していただきたいと考えています。全国の立地の良い場所に膨大な面積の市場があります。例えば淀橋の青果市場、大田区の花き市場、築地の市場も最たるものです。日本全国の良い場所に驚くほど大規模な市場があるのです。

内田:昔は鮮度を維持して運ぶ技術が低かったので、消費者に近いところにたくさんあるのでしょうね。

浦川:しかもその多くが、平屋で、古くて、建屋内も空きスペースが目立つ状況です。

内田:市場としての機能は残して建物の有効活用をするのですか。それとも、市場そのものを集約するのですか。

浦川:集約してなくすことはないのですが、業務やスペースの効率化を考え、コンパクトにします。そして残ったスペースを有効活用して、物流施設やマルシェにしたいと考えています。豊洲のように、午前中は観光客を入れて、夜は横のマルシェで食事や買い物をしてもらうなど、公設市場の民営化や協業によって相乗効果を生むようなことを考えています。

内田:マーケットとしては大きそうですが、簡単には進まない感じがしますね。

浦川:おっしゃるとおりで、だから誰も今までやらなかったのですが、今回、大和ハウス工業が富山で第一号の内示をいただきました(※)。肉、魚、花き、野菜、それぞれの部門や組合と話をしながら、民営化を進めていきます。将来的には市の補助も受けながら、大和ハウス工業が効率化を図り、物流施設や商業施設など、残った敷地の有効利用を行うことで、さまざまな効果をもたらすことを目指します。

※富山市は令和3年3月31日、富山市公設地方卸売市場再整備事業として、優先交渉権者を決定した。グループ名称:新とやまいちば創生プロジェクトチーム、 事業代表企業:大和ハウス工業(株)富山支店(富山市ホームページより)

内田:それは面白いですね。しかし、日本の将来を考えたとき、そういったことをやろうとすると、小規模小売店の圧迫や減少を加速するのではないかといった話がどうしても出てきます。だからこそ市場の効率化が進んでこないのだと思います。一方、流れを止めるような動きをしていても未来は描けません。日本の小売業や小規模事業者をどんなふうにしていくのかという青写真と合わせずに、効率化だけでやっていくと、日本には未来がないのではないかと心配しています。せっかくそこまでやるのであれば、青写真も合わせてやっていただけたらと思います。
私のゼミに大手量販店から派遣されてきている女性がいます。大規模小売業が悪者扱いされることがありますが、彼女はそれが気に入らなかったようです。大規模小売業がくると本当に雇用が減るのか、あるいは地元のものを使わなくなるのか、丹念にデータで調べたところ必ずしもそうではなかったそうです。そういった今まで常識と思われてきたことが実は常識ではなかったのです。
この例で考えれば、青果の効率化が行われていないために破棄が多かったり、需要と供給のミスマッチがあったり、一方では価格が非常に安いのに東京では高いなど、国民の生活にとってのマイナスも多くあるわけです。ですから、お話しされた市場の事業が、国民の生活レベルを上げることにもつながり、小規模事業者を生かす方向にいくのであれば、もっと大手を振ってできるのではないかと思いました。

浦川:小規模事業者、小売りはコロナ禍の問題もあって、今は大きな社会的課題にもなっています。今後、その辺も考えたいですね。

内田:日本は少子高齢化で若手が少なくなっていくので、基本は省力化していかないと未来はありません。総論としてはそうなのですが、個別論で言うと、大企業がAIを入れて工場の従業員を半減するとなると、それを全部足していくとどうなるのかという議論が必ず起きます。大和ハウス工業は業界のリーダーですから、全体図の中でそのような事業をやっていくことが、人が減っていき、年齢が上がっていく日本の未来につながるというところまで描いていただきたいと思った次第です。競争社会の中で勝ち抜くことはもちろん必要ですが、ここまでの地位を築いてきたら、もう少し日本の未来をつくっていくところまでやられたらなお良いのではないかと思います。

浦川:小売りや小規模事業者を生かすところまでは至っていないのですが、日本では、サプライチェーンのグローバル化に加えて、農林水産業もグローバル化しています。この30年で水産漁獲量は半減し、日本の食料自給率は38%を切ってきています。さらに急速に悪化する可能性があり、自給率が20%、10%を切ると、原油やLNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)、ナフサを止められる以上に怖いことになってしまいます。
実は、ご縁があって、ノルウェーのアトランティックサーモンの日本最大の閉鎖型陸上養殖施設を、静岡県小山町と連携し、富士小山の工業団地でお手伝いすることになりました。サーモンを陸上養殖することで食の安定供給を図り、規模を問わず小売市場に出していくという漁業の一つの工業化です。3枚におろすまでを機械でやり、最後は少し人の手をかけて、急速冷蔵、もしくは生のまま全国に配送します。
配送に関しては、大和ハウス工業の90%子会社で若松梱包運輸倉庫という、石川県に本社がある、冷凍・冷蔵やコンビニ輸送に強い会社があります。この会社を使って全国へ陸上養殖の鮭を出荷しようと考えています。

vol.3 ロジスティクスによって、社会へ貢献するビジネスへ へ続く

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