松濤2-10-7
写真:株式会社エスエス
大和ハウス工業株式会社
金沢支社 北陸・信越建築設計部 主任
川口 典宏
NORIHIRO KAWAGUCHI
緑豊かな公園に5つの小屋を建て、「森のコミチ」を出現させる。その発想に驚き、ぜひ意図されているものを作り上げたいと決心しました。外装のルーバーは当社創業者の生誕地にゆかりのある吉野杉で、樹皮を残した板を240枚使っています。板は数パターンの形状に絞って製材し、ランダムに見えて実は出寸法や角度まで決め込んだ施工図を作成。建物コーナー部分の取り付けは、隈先生およびスタッフの方々と現場でも微調整しました。
写真:株式会社エスエス
現地は高低差のある傾斜地で、一部に擁壁をつくる計画でした。しかし、森の雰囲気を壊さないためには擁壁よりも植栽の方がいいのでは、と提案したところご快諾くださり、法面の植栽計画をお任せいただきました。また、間伐材のウッドチップを埋めた階段は、スタッフの方々とご相談しながら蹴上部分にフラットバーを採用。隈先生がお考えの世界観に合った材料を選定することができました。
プロジェクトを振り返って
隈先生たちが建築のコンセプトを貫こうとする姿勢は非常に勉強になりました。例えば外装ルーバーは、人が触れるところのささくれを削り、足元を植栽にするなど安全性に配慮。デザインを最後まで通すためのマネジメント力に感服しました。私は途中で転勤になりましたが、完成検査には参加。夜の照明がともり、最初に隈先生が描かれたスケッチそのままの光景を目の当たりにし、改めてその素晴らしさを実感しました。
大和ハウス工業株式会社
東京本店 東京建築設計部
大橋 龍
RYO OHASHI
私は、川口の設計サポートから入り、着工以降、本格的に担当させていただきました。最初にデザインを拝見した時は「面白そうなプロジェクトだ」と参加できることを喜んでいたのですが、具体的に納まりを考え出すと、絵をどう形にするのか、困難の連続でした。しかし、スタッフの方々が目地の色一つにもこだわり抜かれ、小さな建物であっても決して手を抜かない姿勢とプライドを肌で感じ、大いに感銘を受けました。
写真:株式会社エスエス
もし現地に行かれて、メタセコイアとサクラの輪切りが飾られた男性用トイレを見る機会があれば、壁面の仕上げにご注目ください。ここは「タイルの目地はできるだけ小さく」「壁とタイルはできるだけフラットに」とご要望いただき、何案かの納まり図をご提案して可能なかぎりフラットな壁面を完成させた場所です。細かい部分ではありますが、設計や施工の緻密さを感じていただけると思います。
プロジェクトを振り返って
私のお気に入りは敷地最上部の「森のコミチ」です。広い通路ではないので、木製ルーバーの表情を間近に見ることができ、さらに足元はウッドチップ、視線の先には木々と空があり、森に包まれている感覚に。ここを歩くのが本当に好きでした。建築は、ほんの少しディテールを変えるだけで印象がガラッと変わることを教わりました。ここでの学びを自分の中に落とし込み、社内にも水平展開できるよう、これからも努力し続けます。
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