恵比寿 1-2-16
写真:株式会社エスエス
大和ハウス工業株式会社
東京本店 東京建築設計部 主任技術者
長谷部 祐司
YUJI HASEBE
「槇先生のプロジェクトを担当させてください」と手を挙げ、これまで設計された建築物をいくつも見学してイメージを膨らませていました。ところが予想とは全く違うデザインで、しかも約1.5カ月という短期間で基本設計やパース、模型、曲面屋根構造の基本検討まで終えられていることに驚嘆。世界的な建築事務所の意気込みとプライドを感じ、私自身も「基本設計の精度」について考える良い機会になりました。
写真:株式会社エスエス
タコの遊具がある公園にできた「イカのトイレ」。軽快な曲面屋根は16mm厚、重さ約2トンの鋼板を薄いフラットバーで支える独創的な構造です。さらに、一般的には屋根に軒樋(のきどい)をつけますが、この建物にはありません。屋根の落とし口に雨水が集まる仕掛けを屋根上面に施し、軒樋のないデザインを実現されているのです。雨仕舞いひとつとっても、そこまで計算されているのかと想像しながらご覧いただけたらと思います。
プロジェクトを振り返って
今回、槇先生の事務所と協働するという、またとない機会をいただきました。そこで「公共トイレ」という条件下で独創的なデザインを貫きながら、利用する人の目線で設計される様子を間近で拝見し、私自身、大きな収穫を得られました。私はプロジェクトの全体最適化や各部署との調整などのプロジェクトマネジメントを得意としてきましたが、今回の経験を糧に、さらに広い視野を持てるよう努力してまいります。
大和ハウス工業株式会社
東京建築設計部
辻林 希
NOZOMI TSUJIBAYASHI
昔から「人が集まる施設を建てたい」という想いがあり、このプロジェクトに立候補しました。完成後、学生時代から読んでいた建築雑誌に取り上げられ、スタッフの一人として自分の名前が載ったときは感慨深いものがありました。恵比寿には他のトイレも点在しているので、プライベートで恵比寿のトイレツアーをしたことも。いつ訪れても建物の写真を撮っている人たちがいて、このプロジェクトへの注目度を肌で感じています。
写真:株式会社エスエス
印象に残っているのは、事務所のご担当者がおっしゃった「利用される方の使いやすさ、安全が第一」という言葉です。デザインにこだわり、ディテールまで一切妥協されない反面、行政が求める「使いやすさ」や「安全」に関わる部分は柔軟にご対応。デザインと運用面をバランスよく考えられる姿勢に感心しました。さらに、元からある監視カメラや自動販売機の位置など周辺環境までも検討され、設計者としてのあるべき姿を教えていただきました。
プロジェクトを振り返って
このプロジェクトは途中参加ですが、上司や同僚、協力会社など全員が「槇先生や事務所の名前を背負った建物をつくらなければならない」という認識で結束し、一体感をもって進めることができました。さまざまな方のご協力を得て、最終的には「良いものができた」とお褒めの言葉をかけていただき、本当にうれしく思っています。
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