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伝燈とは、燈に油を注ぎ続けた、たゆまぬ努力の結晶。

文楽大夫 六代目 竹本 織太夫 氏

大阪で生まれた伝統芸「文楽」

「文楽」の呼び名で知られる伝統芸能・人形浄瑠璃文楽。語り手の太夫、三味線弾き、人形遣い、これら三者が一体となり物語を進行していく人形芝居です。大阪ミナミの地が生み出した文楽は300年以上の歴史があり、演目の時代設定や語り口調などに、少々難しいイメージを持たれることも少なくありません。ですが、物語は江戸時代の実話を元にしたものもあり、風刺を効かせた場面や思わず笑いが起こる場面には、江戸時代も現代も人は変わらないと思わせられる面白さが散りばめられています。

国立文楽劇場のある界隈には、演目の舞台になった神社やお寺が数多く建ち並び、日常のそこかしこに息づく文楽の歴史を感じることができます。今回は、豊竹咲甫太夫改め、2018年1月に六代目を襲名された竹本織太夫氏に、文楽の舞台にもなっている上本町の魅力と、伝統芸能への思い、文楽を広める活動についてお話を伺いました。

上本町は神聖で大切な場所

織太夫氏の師匠は、八代目竹本綱太夫を父親に持つ豊竹咲太夫氏。「上本町に住む師匠とソフトクリームを食べながら、美味しい食べ物屋さんや演目に出てくる神社やお寺などを一緒に歩いたのは、子ども時代の最高の思い出です。稽古の時は厳しくても、様々な場所に連れて行ってもらい、我が子のように可愛がっていただきました」そんな師匠との思い出話を聞かせてくださいました。

上本町と所縁の深く、『曾根崎心中』にも出てくる生國魂神社にも、師匠と何度も訪れたそうです。また、四天王寺には、初代義太夫、二代目義太夫、豊竹若太夫など、多くの浄瑠璃界の先師たちの供養塔があります。織太夫氏にとって上本町地区は、「神聖で、とても大切な場所」なのですね。

伝統芸能の奥深さを物語る

「竹本織太夫を名乗ってからは、全身全霊で舞台に取り組む姿勢、そして的確な人物描写を常に心がけています」 今は亡き八代目竹本綱太夫の前名である竹本織太夫を襲名され、その芸を継承して舞台を務めることが自分の役割だと話される織太夫氏。文楽に携わる家に生まれ、祖父も弟も、伯父も大伯父も、文楽の三味線弾きでした。太夫に魅力を感じて自ら選んだ道を、「魚屋の息子が、寿司屋の職人になるのと同じ」と表現されます。

織太夫氏はこの道35年。「一つの道を35年間続けることへの思いとは、どんなものなのか」を聞かせていただこうとしたところ、「『この芸は一生では足らん、二生ほしい』と言われるほど難しいのが文楽の道。わたしはまだ35年しか経っていない。諸先輩方の活躍、芸を見れば、自分は鼻垂れ小僧も同然」と、伝統芸能の奥深さを物語る言葉が返ってきました。

文楽をアイデンティティとして

国立文楽劇場にほど近い高津小学校で、織太夫氏が文楽を教える「子ども文楽」は、16年間続いています。1年生から常に上級生の稽古を見て育ち、6年生で稽古の集大成として文楽を舞台で演じます。「6年生になったらこの役をする!」と決めている子どももいるのだとか。最近では上級生が下級生に挨拶の仕方を一から教えている様子も見ることができ、織太夫氏が16年間で培ってきた伝統が、学校にしっかりと根を下ろしているのを感じることができます。

大大阪時代と言われた約100年前、230万人都市だった大阪では、浄瑠璃人口は5万人とも言われました。織太夫氏が「子ども文楽」を続けているのも、今後100年の文楽に役立ち、この町に恩返しをしたいという思いからです。

「『文楽』の名称の発祥地でもあるこの街で、1クラス30人の子ども達と16年間、文楽を通して関わってきました。そうして繋がった約500人の子ども達とそのご家族も含む地元の方々が、文楽をアイデンティティだと思っていただけるよう、今後も努めて参りたい。そして、浄瑠璃教室でお稽古をしたり、人々が浄瑠璃を口ずさむような時代が来ると嬉しい」と、未来を楽しみに語っておられる姿が印象的でした。

伝統の燈を燃やしつづける

「伝統芸能の伝統は、『伝えて統べる(すべる)』と書きますが、本来は『燈(ともしび)を伝える』と書いて『伝燈』です。わたしたちの伝燈というのは、血でつながっているわけではありません。文楽が末永く続くために、《燈》の炎を燃やしているのです。そのために必要なのが《油》。油を怠ることを、油断と言います。文楽の燈を絶やさないためには、油を注いで燃やし続けなければいけないのです。伝統とは、その燈に油を注ぎ続けてきた、たゆまぬ努力の結晶と言えるでしょう。舞台に集ってくださるお客様のために、わたくし自身が燃えていないといけないのです」

柔らかな語り口調の中にも、織太夫氏の強い信念が垣間見られた瞬間でした。

上町台地が抱える国立文楽劇場で、現代まで脈々と受け継がれてきた燈に、幸いにも私たちは触れることができます。伝統の町で伝統芸能を楽しむ。そんな優雅で深い学びの時間をぜひ味わいたいものです。

文楽大夫 六代目 竹本 織太夫 氏 (撮影場所:国立文楽会館 徒歩17分/約1300m)
※掲載の写真は2018年5月に撮影したものです。

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