NEW

2022年7月に誕生した「プレミスト南山」は、南山という土地の歴史を体現した住まいとして、この地を愛好する方々から高い評価をいただきました。第1回目は、「プレミスト南山」が目指したコンセプトについて、建築を担当した細川がお話します。
憩いの地・南山を未来に根づかせる価値ある家
昭和区南山町は、戦後に発展を遂げた愛知県屈指の別荘地。緑豊かなこの丘陵地は、トヨタ自動車株式会社の創業者をはじめ、中部の財界人が数多居を構えるという形でその歴史を繫いできました。周辺には隼人池公園、八事山興正寺、南山学園、昭和美術館など由緒ある建築物を擁し、並木道には広大な敷地を持つ私邸が建ち並ぶ、閑静な邸宅街として知られる地です。
この地に誕生する「プレミスト南山」にも、然るべき品格が求められていた、と細川は当時を振り返ります。
細川:「プレミスト南山は、お住まいになる方の志向から100㎡を超える専有住居を想定しており、名古屋市内でも有数の高額物件になることが当初から予定されていました。南山という場所の歴史を繫ぎ、未来に根づかせる物件を手がけること、これは弊社にとっても名古屋でのフラッグシップを打ち立てるような挑戦になると、大きな意義を感じていましたね」
プロジェクトの対象となったのは南山町の東北部に位置する、かつて一邸宅が建っていた1592㎡の敷地。周辺エリアを綿密に調査する中で、建てるべきレジデンスのフォルムが見えてきたといいます。
細川:「特徴的だったのは、周囲のお住まいほぼ全てに大きな緑があり、道路から室内が見えないように建物が建てられていたことです。プライバシーに配慮した建物の形状と、緑が連続する住宅中心の街並みが、この街に落ち着いた景観を生み出していることを実感しました。
この景観に相応しい建物として、①スケール感を周囲の戸建と近づける ②マンションらしい外観にしない ③緑の連続性を分断しない ④プライバシー性を高める という要素が大切だと考えました」
こうして生まれたコンセプトは「大邸宅」。
細川:「低層の建物全体を一つの大きな邸宅(別荘)に見せ、緑を多く配置することで、南山の景観に最大限調和させることを目指したものです。住む方だけでなく周辺の住民の方にとっても、心地よい空間であってほしいという想いを込めました」
悠然と佇む安らぎの邸宅へ

「プレミスト南山」は地下1階地上3階建。高低差7mの斜面地に建つ姿は、存在感を放ちつつも街の風景に溶け込んでいます。

外観は、「大邸宅」というコンセプトの通り、ひとつの邸宅に見えることを意識したという細川。
細川:「建物のスケール感が出ないよう、基準階を基壇部よりセットバックさせ、窓と等間隔に配置した化粧壁で建物を分節し、大きな面が見えないような形状にしました。またデザイン性のある化粧壁を配置して外からバルコニーが見えにくくなるようにすることでバルコニーの存在感をなくし、マンションを感じさせないような設えにしています。また、この化粧壁はプライバシーの配慮にも役立っています。通常、RC建物の外壁は壁厚180mm程度ですが、プレミスト南山は壁厚280mmと100㎜厚みを持たせました。建物の外観に陰影が生まれると同時に、斜めから見た時に居室内が見えにくくなるというメリットがあります。このディテールにより、極力プライバシーに配慮されるよう留意しました」
デザインの基本的な構成は、基壇部、基準階、建物頂部の三層構造。
細川:「地下1階・地上3階建てという低層の規模感で、マンションらしく見えないデザインを検討し、この三層構造を採用しました。デザイン要素や仕上げ材を敢えて減らし、素材の質感と陰影を出すディテールに拘りデザインしています。
エントランスとなる基壇部は、住民の方の目線に近い場所です。錆御影石にランダムなボーダーを入れ、あえてロット違いの石で色に変化をつけることで、壁面が単調にならないように配慮しました。
基準階は土を素焼きして生成した二丁掛タイルを縦貼りし、半端が出ないよう丁寧にタイル割しています。
素材は手仕上げのタイルや天然石など、比較検討を重ねた上で厳選したものを使用しています。この物件を手がけるにあたって弊社の戸建住宅のノウハウを随所で活かすことができましたし、設計をお願いしたIAO竹田設計さんにもいろいろなお知恵を拝借することができました」
高低差を利用し潤沢な緑を導入
「緑を継承する」という言葉にふさわしく、豊かな緑を湛えるプレミスト南山。自治体の定める規定値を超え、敷地面積の約35%を緑地帯として確保しています。
細川「駐車場や自転車置場などの設備をすべて建物内に集約し、空地をほぼすべて緑地となるように計画しました。この建物は敷地の高低差を解消するべく地下階を設けていますが、その地下階の屋根に設けた植栽と、坂道に沿って植栽した沿道緑化を2段に配置することで立体的な緑を演出しています。最大の環境配慮としては、もともとの邸宅にあった樹木を吟味し、10本の既存樹を残しています。年月をかけて育成された緑を、多少なりとも次代に繋げることができました」
緑を湛えた大邸宅として完成した「プレミスト南山」。次回は「大邸宅が伝える住まい方の提案」についてお伝えします。(第2回へ続く)