まぎらわしい不動産等の貸付による所得区分をまとめると、以下のようになります。
広告などのため、土地、建物の屋上や側面などにネオンサインや広告看板を取り付けさせることによって受ける使用料は不動産所得になります。
特定の土地だけを提供し、自動車の管理はその持ち主に任せている場合は不動産所得になりますが、管理員を置き、夜間は施錠して自動車の出入りを規制しているような場合や、不特定多数の自動車を駐車させている場合など、自己の責任において保管することによる所得は事業所得(事業と言えない規模のものは雑所得)となります。
一般的には不動産所得ですが、賄い付き下宿のような場合は、その経営の程度に応じて事業所得、または雑所得となります。
借地権や地役権の設定、借地権の転貸により一時に受け取る権利金や頭金などは原則として不動産所得ですが、特定の借地権、地役権の設定に基づく権利金、及び金銭の借入れなどから生ずる特別の経済的利益は譲渡所得、及び事業所得、または雑所得となる場合があります。
借地権などの契約期間満了にともなう存続期間延長の対価として受ける更新料や、借地人の名義が変わるため地主の承諾を求める対価として支払われる名義書替料は、原則として不動産所得となります。しかし、名目上更新料であっても契約の重要部分について変更を加える更改の場合は、新たな借地権設定の対価として、対象となった土地の時価1/2を超えるときは譲渡所得になります。
不動産業者が販売の目的で取得した不動産を一時的に貸付した場合の所得は、不動産販売業の付随的業務から生じたものであり、事業所得となります。また貸金業者が代物弁済等により取得した不動産の一時的貸付の場合の所得も同じです。
事業主が従業員に寄宿舎などを提供している場合に受ける賃貸料は、通常、福利厚生的な要素が強く実費程度となっているものです。この場合は、不動産所得の区分計算を省略し、事業所得として計算します。
海水浴場などにおけるバンガローなど、簡易な施設の季節的貸付による所得は、事業所得または雑所得となります。
不動産所得の総収入金額は地代、家賃、権利金、名義書替料などが主ですが、借家人から徴収する共益費や貸付建物の破損などにより受ける実費弁償金なども収入金額となります。一方で必要経費には、土地建物の固定資産税や減価償却費、建築費用に充てた借入金の利子、修繕費などがあります。また、事業専従者控除(または青色専従者給与)は不動産の貸付が事業といえる程度の規模で行われている場合に限って、必要経費とすることができます。この場合、原則として「共同住宅などは10戸以上」、「独立家屋では5棟以上」の貸付をしていれば、事業規模とされます。
収入金額の中で帰属年分の判定が難しいのは、敷金や保証金などの名目の預かり金のうち、契約解除のときに返さなくてもよい部分の金額の収入金計上時期です。これは①から③までの区分に応じてそれぞれの年分の収入金額となります。
②の計算例 敷金の収入金計上額の計算
Aさんは平成27年4月に所有していた家屋を賃貸し、敷金40万円を受け取りました。
敷金の返還条件は以下の通りです。
賃貸後返還しないこととしている部分
1年以内に解約のとき ……… 敷金のうち10%
2年以内に解約のとき ……… 敷金のうち15%
2年を超えて解約のとき …… 敷金のうち20%
敷金の収入金計上時期の計算
27年分の収入にすべき金額 ………… 40万円× 10%= 4万円
28年分の収入にすべき金額 ………… 40万円×(15%− 10%)= 2万円
29年分の収入にすべき金額 ………… 40万円×{20%−(10%+ 5%)}= 2万円