現在のコロナ禍はまだまだ収束の目途がつかない状況ではありますが、
新型コロナウイルス感染症を封じ込めた後の、
経済の持ち直しを確かなものとする新たな経済対策は、着々と進められています。
その中で、国土交通省は住宅取得で経済の回復を図る目的と、
住宅を通してグリーン社会の促進を図る目的として、大きく4つの支援策を進めています。
ここでは、これから住宅を取得するならぜひ知っておきたい情報についてご説明いたしましょう。
4つの支援策の特徴
① 住宅ローン減税 |
住宅ローン減税の控除期間13年間の措置期間に延長。 適用措置で床面積が40m2以上50m2未満の住宅も対象可能となる。 |
---|---|
② すまい給付金 |
住宅取得で現金最大50万円を給付。 一定期間内の契約で引き渡し期限と入居期限の延長と床面積の要件が緩和される。 |
③ 贈与税非課税 |
贈与税非課税枠の緩和および床面積の引き下げ。 適用期間、適用住宅取得で、最大1,500万円まで引き上げる。 |
④ グリーン住宅ポイント | 一定の省エネ性能の住宅取得やリフォームで、商品や追加工事と交換できるポイントを付与。 |
① 住宅ローン減税の特例措置について
住宅ローン減税とは、年末の住宅ローン残高(上限4,000万円まで)の1%が10年間にわたって戻ってくる制度です(認定長期優良住宅や認定低炭素住宅では上限が5,000万円)。令和元年に住宅ローン減税の特例措置が行われ、それによって通常は控除期間が10年間のところを13年間に延長しましたが、さらに今回、令和3年1月1日から令和4年12月31日までに入居の住宅についても、その特例措置が延長されました。ただし、この適用には以下の条件があります。
- 注文住宅を建てる場合は令和2年10月1日から令和3年9月30日 の間に契約を締結する。
- 新築建売住宅、中古住宅、リフォーム等の場合は令和2年12月1日から令和3年11月30日までの期間に契約を締結する。
また、上記の契約と入居期限(令和3年1月1日~令和4年12月31日)を満たせば、床面積が40m2以上50m2未満の住宅についても住宅ローン減税が13年間控除の対象となります。ただし、合計所得金額が1,000万円以下であることが条件となります。
住宅ローン減税の控除額の計算
1~10年目 |
住宅ローン年末残高※×1.0% ただし、「各年の控除限度額」、「年間所得税全額+住民税からの控除限度額」と比べ、最も少ない金額 |
---|---|
11年~13年目 |
A. 住宅ローン年末残高※×1.0% B. 住宅取得価格※×2.0%÷3 →A、Bいずれか少ない方 |
※一般住宅4,000万円、認定長期優良住宅や認定低炭素住宅は5,000万円が上限
・住民税からの控除上限額は13.65万円
11~13年目までの適用年の控除限度額は上表A、Bのいずれか小ない方の額となりますので注意が必要です。
② すまい給付金の要件緩和について
すまい給付金とは住宅取得者に対し、年収によって最大50万円まで給付される制度で、住宅ローン減税とあわせて利用できます。そのため今回の緩和についても、住宅ローン減税とあわせたのもとなり、下記(表2)の期間内に契約した方について、給付金の対象となる住宅の引き渡し・入居期限が令和3年12月31日から令和4年12月31日に延長となります。
また、給付金の対象となる住宅の床面積要件についても、50m2以上から40m2以上に緩和されます。(ただし一定の期間内での契約等条件あり)
すまい給付金は住宅の取得者を救済する制度のため、住宅ローンを利用しないで住宅を取得した方も、年齢が50歳以上などの条件を満たせば給付の対象となります。
給付基礎額は収入額(都道府県民税の所得割額)によって決まり、給付基礎額に登記上の持分割合を乗じた額(千円未満切り捨て)が給付されます。
表1 <給付基礎額>
消費税率10%:
住宅ローンを利用する場合
平成30年度以降の課税証明書 | |||
---|---|---|---|
政令指定都市以外 | 政令指定都市 | ||
給付基礎額 | 【参考】 収入額の目安※1 |
都道府県民税の所得割額 (神奈川県の場合※2) |
都道府県民税の所得割額 (神奈川県の場合※2) |
50万円 | 450万円以下 | 7.60万円以下 (7.64万円以下) |
3.800万円以下 (3.848万円以下) |
40万円 | 450万円超 525万円以下 |
7.60万円超 9.79万円以下 (7.64万円超 9.85万円以下) |
3.800万円超 4.895万円以下 (3.848万円超 4.956万円以下) |
30万円 | 525万円超 600万円以下 |
9.79万円超 11.90万円以下 (9.85万円超 11.97万円以下) |
4.895万円超 5.950万円以下 (4.956万円超 6.025万円以下) |
20万円 | 600万円超 675万円以下 |
11.90万円超 14.06万円以下 (11.97万円超 14.14万円以下) |
5.950万円超 7.030万円以下 (6.025万円超 7.118万円以下) |
10万円 | 675万円超 775万円以下 |
14.06万円超 17.26万円以下 (14.14万円超 17.36万円以下) |
7.030万円超 8.630万円以下 (7.118万円超 8.738万円以下) |
- ※1夫婦(妻は収入なし)及び中学生以下の子どもが2人のモデル世帯において、住宅取得する場合の夫の収入額の目安です。
- ※2神奈川県の場合は、政令指定都市とそれ以外の市町村の県民税の税率それぞれについて、0.025%付加されますので、給付基礎額に対応する県民税の所得割額は、上記の表の( )内の額となります。
表2 <給付金の対象となる期間>
契約期間 | 入居期限 | |
---|---|---|
注文住宅の新築の場合 | 令和2年10月1日から令和3年9月30日まで | 令和4年12月31日まで |
分譲住宅・既存住宅取得の場合 | 令和2年12月1日から令和3年11月30日まで |
③ 贈与税非課税枠の緩和について
個人から贈与された財産に対してかかる税金を贈与税と言いますが、両親や祖父母から住宅取得のために贈与を受けた場合には、非課税枠を利用することができます。今回の支援策では令和3年4月1日~令和3年12月31日に住宅取得にかかる契約締結を行った場合の、住宅取得のために贈与の非課税枠が、現行の1,200万円から1,500万円(省エネ住宅以外は700万円から1,000万円)に引き上げられました。
この非課税枠は、相続時精算課税制度と組み合わせて利用することも可能です。
住宅取得にかかわる契約の締結期間 | 省エネ住宅 | 左記以外 |
---|---|---|
令和2年4月1日~令和3年3月31日 | 1,500万円 | 1,000万円 |
令和3年4月1日~令和3年12月31日 | 1,200万円→1,500万円 | 700万円→1,000万円 |
※消費税10%で取得
また、対象となる住宅の床面積の下限について、50m2以上から40m2以上に引き下げられました。ただし、この床面積の引き下げは、贈与を受けた年の所得税にかかる合計所得金額が1,000万円以下の方が条件となっています。
④ 「グリーン住宅ポイント制度」について
「グリーン住宅ポイント制度」とは、高い省エネ性能と一定の省エネ性能を有する住宅の新築やリフォーム等に対して、商品や追加工事と交換できるポイントを付与するものです。
さらに、18歳未満の子どもが3人以上いるご家庭や、東京圏からの移住世帯についてなど、特例加算に当てはまる場合はさらに大きなポイントがもらえます。今回対象となるのは、下記の住宅やリフォーム等となります。
対象 | |
---|---|
④-1 注文住宅の新築、 新築分譲住宅の購入 |
令和2年12月15日から令和3年10月31日までの期間内に工事請負契約または、売買契約を締結したもの |
④-2 既存住宅の購入 | 不動産登記事項証明書において新築と記載された日付が、令和元年12月14日以前の住宅で、令和2年12月15日から令和3年10月31日までの期間内に売買契約を締結したもの |
④-3 リフォーム | 令和2年12月15日から令和3年10月31日までの期間内に工事請負契約を締結したもの |
④-4 賃貸住宅の新築 | 令和2年12月15日から令和3年10月31日までの期間内に工事請負契約を締結したもの |
- ※上記契約は変更契約を除く
- ※別途定める期間内にポイント発行申請、完了報告が可能なものに限る
さらに、対象住宅のタイプに応じて性能等のいずれかを満たすものがポイント発行の対象となります。どのような性能が必要でそれぞれいくらポイントが発行されるのか一つずつ確認していきましょう。
④-1 注文住宅の新築、新築分譲住宅の購入
下記のいずれかの性能を有する新築住宅を対象にポイント発行されます。
④-1 注文住宅の新築、新築分譲住宅の購入 | 発行ポイント | ||
---|---|---|---|
基本 | 特例加算合計 | ||
A. 高い省エネ性能等を有する住宅の場合 | 認定長期優良住宅 | 40万ポイント (戸あたり) |
60万ポイント (戸あたり) |
認定低炭素建築物 | |||
性能向上計画認定住宅 | |||
ZEH | |||
B. 一定の省エネ性能を有する住宅の場合 | 断熱等性能等級4かつ一次エネルギー消費量 等級4以上の性能を有する住宅 |
30万ポイント (戸あたり) |
30万ポイント (戸あたり) |
発行ポイントには基本と特例加算があり、下記のような特例加算の条件を満たすことでさらに多くのポイントを取得することができます。
- 東京圏(条件不利地域を除く)から移住のための住宅
- 多子世帯が取得する住宅
- 三世代同居仕様である住宅
- 災害リスクが高い区域からの移住するのための住宅
④-2 既存住宅の新築
④-2 既存住宅の購入 | 発行ポイント |
---|---|
空き家バンク登録住宅 | 30万ポイント(戸あたり) ※住宅の除却を伴う場合は合計45万ポイント |
東京圏(条件不利地域を除く)からの移住のための住宅 | |
災害リスクが高い区域からの移住のための住宅 | |
住宅の除却に伴い購入する既存住宅 | 15万ポイント(戸あたり) |
④-3 住宅のリフォーム(持ち家・賃貸)
リフォームの発行ポイント数は一戸あたり上限が30万ポイントとなっていますが、下記の場合は上限が引き上げられます。
- 若者や子育て世帯がリフォームを行う場合は上限が45万ポイントまで引き上げられ、さらに既存住宅を購入し、リフォームした場合は上限が60万ポイント。
- 若者・子育て世帯以外で、安心R住宅※(特定既存住宅情報提供事業者団体登録制度)を購入しリフォームした場合は、上限が45万ポイント。
対象工事等 | 発行ポイント数 | |
---|---|---|
断熱改修 | ガラス | 0.2万~0.7万ポイント/枚 |
内外窓 | 1.3万~2万ポイント/カ所 | |
ドア | 2.4万または2.8万ポイント/カ所 | |
外壁 | 5万または10万ポイント/戸※ | |
屋根・天井 | 1.6万または3.2万ポイント/戸※ | |
床 | 3万または6万ポイント/戸※ | |
エコ住宅設備 | 太陽熱利用システム、高断熱浴槽 高効率給湯器 |
2.4万ポイント/戸 |
節水型トイレ | 1.6万ポイント/台 | |
節湯水栓 | 0.4万ポイント/台 | |
バリアフリー改修 | 手すり | 0.5万ポイント/戸 |
段差解消 | 0.6万ポイント/戸 | |
廊下幅等の拡張 | 2.8万ポイント/戸 | |
ホームEVの新設 | 15万ポイント/戸 | |
衝撃緩和畳の設置 | 1.7万ポイント/戸 | |
耐震改修 | 15万ポイント/戸 | |
リフォーム瑕疵保険等への加入 | 0.7万ポイント/契約 |
※5万、1.6万、3万は部分断熱の場合
また、既存住宅を購入しリフォームした場合には各ポイントが2倍となります。ただし、それぞれの項目で1申請あたり合計ポイント数が5万ポイント未満のものはポイントの発行申請はできません。
④-4 賃貸住宅の新築
賃貸住宅の建築は、施工者に工事を発注して新築する2戸以上の賃貸用共同住宅が対象となり、賃貸併用住宅や店舗併用住宅は対象となりません。賃貸住宅の発行ポイント数は下記に該当する賃貸住宅で、10万ポイントにその総戸数をかけたものとなります。
④-4 賃貸住宅の新築 | 発行ポイント |
---|---|
高い省エネ消費性能を有する(住宅トップランナー制度の賃貸住宅にかかる基準に適合)すべての住戸の床面積が40m2以上の賃貸住宅 | 10万ポイント(戸あたり) |
ポイントの交換
これらの取得したポイントは一定の要件に適合する商品や追加工事に交換ができるようになります。(賃貸住宅の新築では追加工事のみ、ただし令和4年1月15日までの完了報告が必須)
交換予定商品としては、新たな日常に資する追加工事や防災などの追加工事、省エネ・環境配慮に優れた商品、防災、健康、家事負担減、子育て関連商品や地域振興にかかる商品となっていますが、交換商品の公表は3月下旬、商品交換の受付開始は6月初旬の予定です。
「グリーン住宅ポイント制度」は上記の他に、細かい条件設定がある項目もあり、また随時情報も更新されますので、最新情報については国土交通省のHP及びグリーン住宅ポイント事務局のHPをご確認ください。
まとめ
新型コロナウイルス感染症における影響は、私たちの価値観にもさまざまな変化を与えています。今まで思い描いていた「理想の住まい」に対しても、購入のタイミングであったり、場所や間取り、設備などの価値観が変わってきているかもしれません。
国の政策もポストコロナを想定し、経済の回復をいろいろな形で準備し始めています。有益な情報を活かし、新しい価値観にあった生活を始める準備をしてはいかがでしょうか。

執筆者
山田健介
FPplants株式会社 代表取締役社長
住宅メーカーから金融機関を経て「お客さまにお金の正しい知識や情報をお伝えしたい」という思いからFPによるサービスを行う会社を設立。現在は全国のFPを教育する傍ら、執筆、セミナーを行う。特にライフプラン作成、住宅、保険に関する相談を得意とする。
※掲載の情報は2021年2月現在のものです。内容は変わる場合がございますので、ご了承ください。