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せせらぎの音が絶えない奥美濃の小京都、郡上八幡

「やなか水のこみち」は地元の子ども達の遊び場だ。

  • 消火用バケツが吊り下がる職人町。袖壁というしきりが隣家の2階との間につくられている。
  • 八幡城の天守閣から望む郡上八幡の町。三方を山に囲まれ、3つの川が流れる奥深い地にある。
  • 「日本名水百選」の第1号に指定された小駄良川河畔の「宗祇(そうぎ)水」。郡上八幡の水のシンボルだ。
水とともに暮らしてきた城下町

 東京から車で東名高速道路と東海北陸自動車道を通って5時間強、そそりたつ飛騨の山間の狭い盆地に郡上市は位置する。特に八幡町は三方を山に囲まれ、多くの谷川が流れ込む。湧水がいくつもあり、町には吉田川と小駄良(こだら)川が流れ、はずれの長良川へ合流する。戦国時代の武将遠藤盛数(もりかず)が築いた山城、八幡城の城下町として発展し、川は天然の濠でもあった。碁盤目状の古い町並みをそぞろ歩くと、職人町、鍛冶屋町、柳町などの古い町名が今なお残り、町中のいたるところにある水路を透明度の高い水が流れる。水の都郡上八幡といわれる所以だ。
 郡上八幡では暮らしに水が深く関わる。有名なのが「やなか水のこみち」や「いがわ小径」の水路だ。水路は生活用水として利用され、地域の子ども達の遊び場になったり、洗濯物や野菜などの洗い場になったりもする。もともとは江戸時代に一帯が大火事に見舞われたことから、六代目城主遠藤常友(つねとも)によって防火のために水路が張り巡らされたという。今でも民家の軒先には消火用バケツが吊り下がる。
 さらに興味深いのが、町中で出会う石や木でつくられた2段、3段からなる水槽だ。水舟と呼ばれる、独特な湧水の利用法だ。水槽は飲用と洗い物用に別れ、水舟の下に魚が飼われているところもある。食べ物の残りカスなどを魚が食べることで、自然に水が浄化される仕組みである。
 郡上八幡では豊かな水を工夫して利用する独自の水文化が受け継がれてきた。

「郡上八幡博覧館」で実演される郡上おどり。写真は「かわさき」という曲目。

  • 「げんげんばらばら」が好きだと話す小酒井敦子さん(左)と「猫の子」がいいと話す吉田美奈子さん(右)。
  • 明方ハムや肉桂玉など郡上市の物産を扱う「郡上八幡博覧館」内の「お土産処春駒」。
  • 館内には、郡上竿をはじめ郡上紬や食品サンプルなど文化や伝統の技が紹介されている。
400年の伝統をもつ郡上おどり

 提灯が揺れ、手拍子と下駄の音が響く夏の夜に、「郡上の八幡出てゆくときは 雨も降らぬに袖しぼる」と歌われる郡上おどり。7月から9月にかけて30数夜、10種類もの曲目を町をあげて踊り続ける盆踊りだ。とくに盂蘭盆会の8月13日から16日までの4日間は、夜8時から明け方4時、5時まで踊り明かす徹夜おどりになっていることでも知られる。
 もともと江戸時代初期、八幡城主四代遠藤慶隆(よしたか)が領内の庶民の心の安寧と平和のために保護したことから始まったと伝わる。さらに13代青山幸道(よしみち)は、郡上一揆ともいわれた農民一揆の宝暦騒動によって荒んだ領民との融和を計るため、踊りを奨励した。そのためますます盆踊りが盛んになったという。
 現在では日本三大民踊の一つとして国の重要無形民俗文化財にもなっており、「郡上八幡博覧館」では、歴史や文化の紹介のほか、郡上おどりの実演が行われている。踊り手の吉田美奈子さんや小酒井敦子さんは地元出身で、小さな頃から郡上おどりに参加してきた。「他県の人もたくさん参加されます。踊り終わった時に皆で味わう爽快感がいいんです。大勢の人が下駄を鳴らして、皆同じ振り付けを踊っていくので、一体感が生まれます」という。地元の人も観光客も観る踊りではなく、一緒になって参加する。それが郡上おどりの醍醐味なのだ。

郡上八幡博覧館

「齋藤美術館」館長の斎藤仁司さん。江戸から明治にかけて使われていた帳簿の一種、大福帳も見せてくれた。

  • 水琴窟もある中庭。樹齢100年をこえる松が立派な枝を張り、つくばいにはヒヨドリなどの野鳥が水浴びにくる。
  • カフェでは京都産の抹茶などをいただける。観光客がホッとひと息つけるスポットだ。
  • コレクションの並ぶ美術館。
茶人との交流が盛んだった豪商の文化

 郡上八幡は、昔ながらの町家が軒を連ねる。京都に似て間口は狭く、「うなぎの寝床」と呼ばれるような奥行きと、隣あう家々の延焼を防ぐために設けられた袖壁というしきりが特徴的だ。
 その代表的な町家が、江戸時代に両替商として栄えた齋藤家だ。中庭や水琴窟がある約150坪もの広大な敷地には母屋や蔵が点在し、現在11代目である斎藤仁司さんが館長を務める「齋藤美術館」を中心に、カフェ「町家さいとう」や和雑貨を扱う「竜庵」が営まれている。
「旧家は人に見せないというのが基本。本当の美術愛好家など一部の趣味人にとっておきの品を見せてお互い楽しむという文化でした。だから昔はこのカフェの空間は、渋紙がひかれて必要な時しか使われなかったんですよ」と斎藤さんは話す。約30年前、郡上八幡は観光地ではなかった。そこで観光地化に必要な「観る、買う、食べる」の一つ、「観る」のために美術品を公開することを決めて以来、郡上の文化の一郭を担ってきた。「当時、北大路魯山人も茶の繋がりで交流があり、魯山人の器も所蔵しています」と話すコレクションは、茶道具や書画など約200点。当主は代々茶人で、郡上藩主だった遠藤家、青山家と親交があり、藩主から下賜されたものや京都で蒐集したものが多く並ぶ。中にはギヤマングラスや盆景などがあり、当時の当主や茶人たちの風雅な趣味がうかがえる。
 郡上は歴史の町であり、文化の町。その流れは今も町家の中にひっそりと息づいている。

齋藤美術館
  • [Part.1]せせらぎの音が絶えない奥美濃の小京都、郡上八幡
  • [Part.2]里川の清流が育む郡上鮎
  • [Part.3]清冽な川の恵みを凝縮した料理

※掲載の写真は平成28年6月に撮影したものです。

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