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妙楽窯

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SLOWNER WEB MAGAZINE

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文化・歴史

食卓に花を添える、心地よい名脇役

ロイヤルシティ佐田岬リゾート/2022.03.31

妙楽窯

ロイヤルシティ佐田岬リゾートが広がる愛媛県伊方町(いかたちょう)。急峻な段々畑で育てられる柑橘類はバラエティに富み、宇和海と瀬戸内海に挟まれる地形から新鮮な魚介類にも恵まれ、近年、そうした食材が、町の『ふるさと納税返礼品』として高い人気を誇っています。これらの返礼品と人気を分かつのが、現代の料理やインテリアに馴染む「妙楽窯」の焼き物セットです。作者は佐々木智也さん。実家は、1604年(慶長9年)創建の『妙楽寺』で、佐々木さんは陶芸家で僧侶でもあります。
妙楽寺は檀家を持たず、厄払いや本願成就を祈る「祈祷寺」。代々副業を持ちながら、寺が守られています。ものづくりを仕事にすると決めていた佐々木さんは、大学の教育学部で美術を専攻。焼き物で有名な愛媛県砥部町で就職先を探していたところ、砥部焼の後継者育成事業『えひめ陶芸塾』を知り、大学を休学して入塾。焼き物を一から教わり、その後も地元の陶芸家に弟子入りし修行を続けました。「入塾した当初は、変わった色や形の器をつくっていましたが、師匠で陶芸家の石田誠さんが、ご自分で焼かれたシンプルな皿に自分でつくった料理を盛り付けて食べられているのを見て、『器に料理をよそう、食卓に並べる、食べる』という当たり前のことこそ、器づくりには大事だなと考えが変わりました」。

(写真左)佐々木さんの実家、『妙楽寺』。境内には、町の指定有形文化財となった「五輪塔」があります(写真右)佐々木さん自ら改装した倉庫には、作品がずらり。ふるさと納税返礼品の発注は毎年200~300件届いており、予想外の忙しさが続いているそうです

伝統を守りつつ、時代に合った器をつくりたい

『日常づかいしたくなる器』を模索する日々が続き、「独立後も1、2年は仕事にならなかった」と、佐々木さんは振り返ります。試行錯誤の末、ようやく思い描く器が焼けるようになった頃、佐々木さんの器は注目されるようになりました。土は白さが美しい砥部のものの他に、愛知の常滑から仕入れた土を使用。ロクロを回し、半乾きになるまで寝かせた後、手づくりの型に添わせてかたどっていきます。伝統的な模様の輪花皿や角皿、そば猪口、深皿など、ひとつのテーブルに並べても主張しすぎない見た目の心地よさと料理や果物、時には花など、盛られるものを引き立てる脇役の佇まいを感じる器の数々。湯呑み茶碗の厚みも絶妙で、快い口当たりです。「今も日々改良を重ねながら、自分が使いたいと思う器を目指しています。それが『いいね』と思われるのは、やはりうれしいですね。住まいも、食事の内容も、昔と比べるとずいぶん変わっています。焼き物の伝統を大事にしながら、今の人の生活に受け入れられる器をつくり続けたいです」。そう語る佐々木さんの作品は、伊方町の『道の駅伊方きらら館』のほか、四国内で行われるイベントなどで販売中です。

(写真左)倉庫を改装した作業場で、作陶に集中する佐々木さん (写真右)器の他に、オリジナルのピザ窯も製作

器からピザ窯まで。ものづくりへの消えない情熱

焼き物の技術と元来のものづくり好き、おいしいもの好きが高じて、ピザ窯づくりにも着手した佐々木さん。窯の内側は素焼きの土、開口部には本焼きした砥部焼が使われています。1枚ずつ焼けるコンパクトなサイズ感と、かまくらにも似たチャーミングなフォルムが注目され、佐田岬リゾートのオーナーさまからも発注があるそうです。「伊方町で暮らしていると、不便に思うところは確かにあります。その代わりに、こうして好きなことができるのは田舎ならではの良さ。都会ではできない生活ができていると思っています」。

「なんでも、自分でつくってみると、いろいろと勉強になります」。作陶や僧侶の仕事の傍ら、倉庫をシアタールームにリノベーションしたり、離れをリフォームしたりと、創作意欲が衰えない佐々木さん。衝動にも似た、ものづくりへの熱意がほとばしっています

取材撮影/2022年2月5日

妙楽窯/妙楽寺[現地から約20.2km]

妙楽窯/妙楽寺
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