くらしの定期便
暮らしを楽しく彩るアイデアをお届けします
LiveStyle Design くらしの定期便
『くらし たのし』で連載中の旅企画
「特別な時間デザイン」より、
本誌に掲載しきれなかった情報をお届け。
『くらし たのし』編集室目線で、
取材時のエピソードなどをご紹介します。
Akitainu no sato
大館(おおだて)駅前にある「秋田犬の里」では、ハチ公の銅像がお出迎え
市内ではさまざまな姿のハチ公像に出会えます
今回の取材で訪れた大館市は、亡き飼い主の帰りを待ち続けたことで有名な「忠犬ハチ公」の生まれの地。市内のあちらこちらでハチ公の銅像が見られ、愛されていることが分かります。
秋田犬の発祥の地でもある大館市では、秋田犬に出会えるスポットもたくさん。「秋田犬の里」では、2024年から大館駅観光駅長に任命された看板犬「想空(そら)くん」をはじめ、約30頭の秋田犬たちが日替わりでお出迎えしています。取材の合間に訪れると、展示室に「陸奥(むつ)くん」が現れました。大きな体をダイナミックに動かしながら、かわいらしい表情で遊ぶ陸奥くんにスタッフ一同ほっこり。癒やしの時間を過ごすことができました。
Nagomi no sato
オーナーの虻川 和枝(あぶかわ かずえ)さん。秋田の郷土料理「三五八(さごはち)漬け」を教わりました
麹の甘さが引き立ち、やみつきになるおいしさです
到着して荷物を降ろすと、オーナーの和枝さんがCDプレーヤーのボタンをぽちり。秋田弁のラジオ体操が流れてきました。初対面のお客さまとの距離を縮めるために必ず行っているようで、聞き慣れた言葉遣いと異なる音声案内にスタッフ一同は興味津々で聞き入りました。
一般のお客さまが宿泊する時は、夕食には手作りのきりたんぽ鍋を囲み、近所の温泉で温まるのがお決まりのコース。翌朝は地元野菜をふんだんに使った朝食で胃袋を満たします。ここを第二の故郷と思ってほしい、とほほ笑む和枝さん。宿泊後も長く連絡を取り合うお客さまもいらっしゃるそうで、和枝さんたちの温かい心と暮らしに魅了されたからこそだと感じられます。
きりたんぽ作りは、ご飯をつぶすところから体験
焼いた「たんぽ」に味噌を付けた「みそつけたんぽ」は、甘じょっぱさがくせになります
具材の一つ、比内地鶏は身が引き締まっていて、かむたびに旨味が口に広がります
すりつぶしたご飯を丸め、串に刺したものを「たんぽ」と呼び、きりたんぽは「たんぽ」を「切った」ものだと教えていただきました。和の里で用いられる串は秋田杉でできていて、和枝さんの夫、明弘さんの手作りです。県の北側の地域では「たんぽ」がよく食されますが、県央、県南の地域では、つぶしたご飯を丸めただけの「だまこ」が主流だそう。南北に広い秋田県は、県北・県央・県南で文化や習慣が異なるようで、その違いを味わうのも楽しいかもしれません。
Honokaze free site
まき割りは斧(おの)のコントロールがポイント。繰り返すうちにきれいに割れるようになりました
割ったまきを使って、たき火料理。近くの川は鮎釣りのスポットなのだとか
馬肉の煮物、馬肉をよく食べるそう
34年間勤めた中学校教員を辞め、2023年9月にこのフリーサイトを立ち上げたオーナーの工藤 智也さん。「自然の中で羽を伸ばし、日々の疲れをリフレッシュしてほしい」と話します。川でモクズガニを捕ったり、天体望遠鏡で星空を観察したりと、四季折々の楽しみを満喫できそうです。首都圏から移住してきたご近所の方々の声を聞きながら、お客さまに喜ばれる体験を考えていると聞き、お客さま思いの工藤さんの優しさに触れられました。
取材当日は、自然の中でできるアクティビティを中心に体験。古くから林業が盛んな秋田県内陸北部では木材の運搬を馬が行っていたため、馬は生活に密接した生き物でした。その馬を最後まで生かすために馬肉を食べる食文化があると教わり、現地での体験だからこそ学べることだと思いました。
白玉にくるみのソースをかけたくるみ餅作りも体験
香ばしいくるみの香りが口いっぱいに広がります
くるみはフリーサイト内で採集したものを使います。普段触れることのない堅いくるみの殻に苦戦しながら、中の実を取り出し、すりつぶしてソースを作ります。手作りの経験も相まって、特別なおいしさを感じられました。フリーサイト内にあるカフェでは、季節の食材を用いた料理やデザートを楽しめます。
Ryobi an
慎重な手つきでふたを貼り合わせます
杉板を縫い合わせる際に使う桜の木の皮
職人の巧みな技術で縫合します
工房に足を一歩踏み入れると杉の香りがスッと鼻を抜け、木のぬくもりを感じられる落ち着いた雰囲気が漂います。体験中、ふと作業の手を休めると一枚一枚異なる木目の美しさが目に入ります。
曲げわっぱの特徴的な曲線は、熱湯で柔らかくした杉板を型に巻き付け、曲げ加工を施すことで生まれます。板を折らずに、しなやかな曲線を生み出せるのは熟練の技なのだそうで、改めて手仕事の繊細さを実感しました。曲げた板は、桜の木の皮を薄く削った桜皮で縫合。山桜の樹皮を加工した桜皮細工(かばざいく)も、伝統工芸品に認定されている秋田ならではの技術で、自然資源を生かしながら技術を生み出してきた人々の様子がうかがえます。
大切に使い続ければ10年は持つ逸品が完成
曲げわっぱ製作体験教室にはさまざまな年代の方が参加されます。夏には親子連れも多いのだとか。製作した曲げわっぱは、ウレタン塗装を施すこともできます(別途料金)。塗装をすると食器用の中性洗剤でのお手入れが可能になるので、ぐんと使いやすくなります。
職人技が光る商品が並ぶ店内
中には、有名企業とコラボレーションした品も
日常生活で気軽に曲げわっぱを使ってほしい、という思いで商品作りを続けてきた「りょうび庵」。工房と併設するショップには、曲げわっぱの固定観念を覆すような、多種多様な商品が並んでいます。フランスパンを保存するバゲットコンテナやトレー、氷を入れてドリンクを冷やすワインクーラーなども曲げわっぱで作られていることに驚きました。