かつて日本には、夏になると家の中の建具や敷物などを、風通しがよく涼感のある素材に替える習慣がありました。それは、蒸し暑い夏を快適に過ごすための先人たちの知恵。これを現代の暮らしに取り入れるなら、ファブリック製品を爽やかなリネンに替えてみてはいかがでしょう。それだけで、お部屋がフレッシュな空気で満たされそうです。
亜麻の茎を原料としてつくられるリネンは、一般に「麻」と呼ばれる素材の中でいちばんやわらかく、肌ざわりがよいといわれています。シルクやコットンに比べて吸水・発散性に優れているため、暑い季節もサラッと快適。ナチュラルな風合いは見た目にも爽やかで、心にまで涼感を届けてくれます。
リネンの繊維構造は、汚れが繊維の奥へ入り込みにくいのもうれしいポイントです。しかも、水に濡れると強度がアップするので、洗濯機でジャブジャブ洗っても大丈夫。シワになりやすいからと敬遠する方もいらっしゃいますが、それも味わいとして楽しめれば、これほど夏にぴったりの素材はないと思いませんか。
カーテンやカーペットなど面積の大きなものを替えることができたら、お部屋のイメージは大きく変わります。でも、それはちょっと大変ですよね。そこで、まずはクッションカバーなどの小物から模様替えしてみましょう。わずか数分でできる小さな模様替えでも、お部屋の中に新鮮な風が吹き抜けるのを感じられます。
リネン素材のインテリア小物も、最近はモダンから和風まで多彩な色・柄、デザインが揃っています。淡いカラーやリゾート気分が味わえるポップな柄を選んで、ひと足早く夏休み気分に浸るのもいいですね。
ペクチンを含むリネンの繊維構造は、雑菌が入り込みにくく、汚れが落ちやすいので、キッチンクロスやテーブルウェアなど、食まわりにもぴったりです。ガラス器やシルバーのカトラリーなど、涼やかな食器との相性も抜群。洗うほどにやわらかさを増すので、ぜひ長く使い続けていただきたい素材です。
いつもは敬遠しがちなビビッドカラーやポップなプリントも、コースターやテーブルナプキンなどの小物なら、失敗をおそれずに挑戦できそうです。暑さで食欲がないときは、目に涼を運ぶテーブルコーディネイトを楽しんで、食卓を爽やかに盛り上げてみませんか。