トップ > PREMIST LIFE > 2016年7月号【趣】自分らしく想いを伝える、美文字の世界

PREMIST LIFE

趣 活き活きと豊かに輝き続けるために

自分らしく想いを伝える、美文字の世界 お手本通りでなくてもいい、あなただけの美文字を見つけましょう
自分だけの美文字を見つける旅をぜひ楽しんでみましょう。書家 中塚翠涛さん

たとえば、プレゼントに添えられた短いメッセージ。子どもが一生懸命書いた文字。決してお手本のようにきちんと整った文字でなくても、心がほっと和らぐ…。誰しもそんな経験があるのではないでしょうか。「それは、書いた方の"自分らしさ"がにじみ出ているからなんです」と笑顔でおっしゃるのは、書家として第一線で活躍されている中塚翠涛(なかつか すいとう)さんです。美文字とは、あなたらしさを伝える文字のこと。中塚さんと一緒に、美文字を見つける旅へ出掛けましょう。

  • 「上手に書きたい」から離れてみる。あなたが「好き!」と思う文字は?
  • 「雑な字」と「こなれた字」の違いは?印象を大きく変える、美文字のエッセンス
  • 筆記具選びで文字の表情が変わる。まずは試してみたい、おすすめの筆記具

「上手に書きたい」から離れてみる。あなたが「好き!」と思う文字は?「上手に書きたい」から離れてみる。あなたが「好き!」と思う文字は?

「たとえばこの中で、どの文字が好きですか?」

美文字の旅の始まりは、中塚さんからあなたへの質問です。きちんとした印象の字、少しつなげた大人っぽい字、ところどころに遊びがあってのびやかな字、そしてなんと、ギャル文字まで! さまざまなスタイルの文字は、すべて中塚さんが書いてくださいました。

「他に、お菓子のパッケージでも、お店のロゴでも、なんでも結構です。あなたが『ステキだな』と思う文字を選んで、マネをしてみましょう。こう言うと、『基礎も学んでいないのに、いきなり"好きな文字"から入っていいんですか?』と驚かれる方がたくさんいらっしゃいます。もちろん、文字を読みやすくするための基礎はありますが、それはあくまでも"通過点"。ゴールではないんです」

まずは、自分が向かう目的地を決めること。これが、美文字への第一歩です。

「雑な字」と「こなれた字」の違いは?印象を大きく変える、美文字のエッセンス「雑な字」と「こなれた字」の違いは?印象を大きく変える、美文字のエッセンス

中塚さんが「通過点」とおっしゃる基礎。それは、相手にとって「読みやすい文字」を書く思いやりです。そのために一番大切なことは、ていねいに書くこと。

「どんなスタイルの文字でも、『雑だな』と思わせてしまったら、気持ちは伝わりません。一画一画ていねいに書くことが大切です。

基本的なポイントは、『し』『り』『う』『も』などの縦長の文字をのびやかに、『い』『へ』『つ』など横長の文字はゆったりと空間を取ること。

そして、『点』をきちんと書くことです。『が』などの濁点や、読点、句読点などはついポンポンと適当に打ってしまいがちですが、ここをきちんと書くだけで印象が変わります。

手紙の場合は、相手のお名前をていねいに。早く書かれた印象でも、『雑』ではなくて『こなれ感』があるのは、このようなポイントを押さえた文字です」

筆記具選びで文字の表情が変わる。まずは試してみたい、おすすめの筆記具筆記具選びで文字の表情が変わる。まずは試してみたい、おすすめの筆記具

タイトルの写真で中塚さんがお持ちになっている「美文字のすすめ」の文字は、ごく一般的な筆ペンで書かれたものです。心まで豊かになるようなこの文字に、中塚さんは「みなさんのお住まいに爽やかな風が吹きこむように」との想いをこめてくださいました。書家である中塚さんですが、本格的な書道の道具ではない筆ペンも、さまざまな表現ができるので大のお気に入りだそうです。

「筆よりも気軽で、太さや濃さが自由に変えられる筆ペンはみなさんにもぜひおすすめです。文字を書くことが楽しくなりますよ。

お仕事などで日常的に使うなら、ゲルインキのボールペンを。太さは0.7mmが良いでしょう。油性のボールペンに比べてなめらかに動かせるので、思い通りの線が書けると思います。

一番大切なことは、いろいろと試し書きをしてみること。太さや濃さ、書き味などで自分に合ったものぜひ見つけてください」

今すぐできる!よく使う「横書き」のポイント今すぐできる!よく使う「横書き」のポイント

縦書きよりも、横書きを書く機会が多い現代。忙しいときなどは、ついつい走り書きになりがちです。そんなときでもちょっと意識するだけで、相手に「雑な字」と思われずに、きちんとした気持ちを伝えることができます。

最後に、中塚さんからみなさんへメッセージをいただきました。「文字を書くというと、ハガキやお礼状などをイメージされるかもしれませんが、そんなにかしこまらなくても、日常で楽しめることがたくさんあります。たとえば料理をつくったら、お品書きをつくってみる。お友達を招くホームパーティはもちろん、家族とのいつもの食事でも、それだけで会話が広がり、もっとワクワクできる楽しい時間になるはずです。
もちろん、文字はあなたの『好きな文字』で。そのときの気分によって、好きな文字が変わることもあるでしょう。文字はそのときの自分を映しています。好みのファッションが変わるように、自由な旅のように、文字との出会いを楽しんでみてください。それらはすべて、あなたの"美文字"なのですから」
日々の暮らしを豊かにしてくれる美文字の世界。あなたも、自分だけの美文字を見つける旅をぜひ楽しんでみましょう。

監修:中塚翠涛(なかつか すいとう)さん監修:中塚翠涛(なかつか すいとう)さん

書家。岡山県出身。4歳から書を学ぶ。大東文化大学文学部中国文学科(現・中国学科)卒業。古典的な書をもとに、様々なジャンルの題字やロゴ制作に携わる。テレビ朝日系「中居正広のミになる図書館」では「美文字大辞典」の講師として出演。手がけた題字は、ユネスコ「富士山世界遺産」、松竹映画「武士の献立」など多数。著書『30日できれいな字が書けるペン字練習帳』(宝島社)シリーズは、累計320万部を突破する大ベストセラーに。