

「マナー」と聞くと、なんとなく堅苦しいイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。「それは、相手に失礼のないように、自分が恥ずかしい思いをしないように…というマイナスからの発想で学ぼうとするためです」と語るのは、マナースクール「ライビウム」代表の諏内えみさん。そうではなくプラスの発想で、毎日をもっと楽しく、人生そのものを輝かせるために学ぶ。それが、諏内さんが提案する「真のマナー」です。さっそく教えていただきましょう。
向かい合って話すとき、相手に失礼のないようにと意識するあまり、会話が弾まない…。そんな経験はありませんか? 諏内さんが提案するマナーの第一歩、それは会話をするときの姿勢です。
「マナーで大切なことは、相手にとって心地よい時間をつくりだすことです。前向きな姿勢が伝わってくる。リラックスしているのに、だらしなくない。そんな美しい姿勢のポイントは『手の位置』。ひざの上に置いたままでは、たとえ失礼でなくても堅苦しい印象を与えてしまいます。話が始まったらテーブルの上に軽く手をのせると、関心を持ってきちんと聞いているという気持ちが伝わります。少し身を乗り出すようにするのもいいですね」
改まった席などのテーブルマナーは意識して学ぶ方が多くても、見落としがちなのがティータイム。たとえばアフタヌーンティーなどに欠かせないミニサイズのサンドイッチをいただく際、普通に食べると横から具がはみ出てしまったり、パンに歯形が残ったりしてしまいます。せっかくの優雅なひとときを心から楽しむためにも、スマートにいただきたいものですね。そのコツは、とても簡単。「縦にして口に入れる」ことです。
「意外とご存じない方が多いのですが、ぜひお試しください。こうすることで中身が出ず美しくいただけますし、パンに歯形もつかないので、一緒に召し上がっている方にも気持ちのいい印象を与えることができますよ」
日常のしぐさを、もうひとつ。ティーカップを持つときは持ち手に指を通さず、つまむようにして持つことで、ぐっと品よくスマートに映ります。
「大きなマグカップのときは指を通してもよいのですが、一般的なティーカップは持ち手の下の付け根のあたりに中指を添えるようにしてつまみます。慣れていないと指先に力が入って無理をしている印象を与えるので、いつでもさりげなく持てるよう、日頃から意識しておくといいですよ」
特別な日だけでなく、日常のしぐさから磨いていく。その心遣いがあなたを魅力的に見せるだけでなく、周りの方とのコミュニケーションを変え、そして人生そのものを輝かせていきます。
上着を着ることが増えるこれからの季節。訪問先で脱いだ後、帰りに着る際、スマートに映るしぐさを教えていただきました。
◆ジャケットをたたむ
ジャケットやコートを脱ぐなら室内に入る前に。歩きながらでもさりげなくできて、しわになりにくいたたみ方をご紹介します。室内で脱ぐときは「失礼いたします」と一言添えることをお忘れなく。
(1)ジャケットの両肩に手を入れる
(2)手を合わせて、ジャケットを2つに折る
(3)片方の前身ごろを裏返しながら、もう片方の前身ごろにかぶせる
(4)2つ折りにして持つ
◆ジャケットを着る
バサッと広げながら上から腕を通すと、雑な印象を与えます。肩より上に手を上げない、腕は下から通すことがポイントです。
(1)片袖に腕を通す
(2)もう片方の腕を下げた状態で、下から袖に通す。
(3)ボタンを留める
「もう一度会いたい。話してみたい」と相手に思っていただける。ビジネスでもプライベートでも、そんな時間を生み出すことが真のマナーとおっしゃる諏内さん。最後にみなさんへメッセージをいただきました。
「マナーはあなた自身を輝かせるだけでなく、あなたとともに過ごした方の気持ちをなごませ、心地よい時間をつくりだしてくれます。そうすれば、また次の時間につながりますね。そうして毎日が、人生が豊かになっていきます。これは家族など、身近な人と過ごすときでも同じです」
あなたが輝くことで、周囲が、人生が美しく輝き始める。心豊かな時間を自分から生み出していくことができる、そんな大人の女性のマナーを、あなたもぜひ身につけていきましょう。
「マナースクール ライビウム」「親子・お受験作法教室 ライビウム」代表。一部上場企業トップ陣のメディアトレーニングを始め、映画やドラマでの女優のエレガント所作指導を手掛ける。洗練された上質マナーや美しい所作、スマートな社交術、会話力の指導に定評がある。テレビ出演や著書も多数。