お近くのダイワハウス

診察を受けるメリットや、⾃⼰判断の危険性についてお伝えした前回。今回は、具体的な漢⽅の診察⽅法や治療内容について伺います。

「望・聞・問・切(ぼうぶんもんせつ)」で、⼼⾝の状態を⾒極める

前回もお伝えした通り、漢方は、偏った心身のバランスを中庸(バランスのとれた状態)に近づけていくための治療法です。漢方では「望・聞・問・切(ぼうぶんもんせつ)」といわれる四種の診察法を用いて心身の不調を引き起こす原因を丁寧に探り、各診察法によって得られた情報を整理し、心身全体を総合的に診ていくことで、解決策を見出していきます。

■望(視診)…患者さんの細かな点をしっかりと観察
姿勢、動作、表情、目の力強さ、舌、顔色、唇の色、皮膚、頭髪、爪などの状態を観察していきます。舌の所見は特に重視されます。舌の色や大きさ、乾燥・湿潤の程度、舌苔、舌下静脈の状態など観察していきます。そのため、診察前に色のついた飲み物を飲んだり(コーヒーなど)、飴やガムを食べたり、舌苔をブラシで取り除くといったことは控えていただいています。

■聞(聴診、臭診)…耳と鼻で感じる情報を集める
声の大きさや、言語の明瞭さ、会話の速度、口調、呼吸音、心音、腸蠕動音、体臭、口臭などから情報を得ます。診察を受ける際には、香水の使用は控えていただいた方がいいでしょう。

■問(問診)…症状から日常生活まで、詳しくヒアリング
気になる症状やお困りの症状はもちろん、食欲や睡眠の状態、嗜好品、喉の渇き、トイレの頻度、皮膚や髪の状態、精神状態、汗のかきかた、痛みがある場合は性質や部位、冷えやほてりの有無、むくみの有無、女性の方なら月経の状態など、多岐の項目にわたり、問診票に記入していただきます。
診察室ではその問診票を基に、さらにじっくりとお話を伺います。たとえば、汗をかくというお悩みなら、全身にかくのか、顔や脇、頭など特定部分なのか、またその状態がどれくらい続くのかなどを伺います。イライラするという場合は、イライラして八つ当たりするのか、それとも我慢してしまうのかなど、項目ごと更に詳しくお聞きします。
また、医師が誘導するのではなく、できるだけ、患者さんのご自身の言葉や表現方法で、気になる症状についてお話しいただきます。お話しされる内容に無駄な情報は一つもありません。多愁訴の方でも、ご自身の言葉で話すことにより、最も悩まされている症状は何か、整理しやすくなります。中には、話していくうちに、問診票に記載していた主訴とは全く異なる症状が、最も気になる症状であったということに気付く患者さんもいらっしゃいます。

■切(脈診、腹診)…体に触れて、状態を見極める
リラックスした自然な状態で触診を行います。特に重要なのは脈とお腹の状態。脈診では脈の触れ方や強さ、幅、性状などを診ます。次に仰向けに寝ていただき、両足は伸ばした状態で腹部の診察をおこないます。腹部の温かさ、腹力、緊張度、腹直筋の状態、特定部位の抵抗や痛みの有無、腹部動悸の有無など、くまなく診ていきます。腹部の診察の際、くすぐったがる患者さんがおられますが、これも重要な情報のひとつです。手足や背中、肩などの視診・触診も合わせて行います。

漢方薬はあくまで「薬」。自己判断は時として危険です

漢方治療は「望・聞・問・切」で患者さんの「体質」や「状態」を見極め、患者さんおひとりおひとりに合った漢方の処方や、生活習慣のアドバイスなどを行っていきます。
前回とりあげた「気・血・水」のバランスの崩れによる代表的な症状には以下のものがあります。

1)気虚(ききょ)…「気」が弱っている状態
【よくある症状】やる気がでない、疲れやすい、眠気、食欲不振、など
【主な漢方処方】補中益気湯、六君子湯など「気」を補う処方

2)気鬱・気滞(きうつ、きたい)…「気」が滞っている状態
【よくある症状】抑うつ(心が落ち込む状態)、閉塞感(のどや耳のつまりなど)、腹満感など
【主な漢方処方】半夏厚朴湯、香蘇散など「気」を巡らせる処方

3)気逆(きぎゃく)…「気」が逆上している状態
【よくある症状】のぼせ、動悸、気の焦り、など
【主な漢方処方】黄連解毒湯、桂枝加竜骨牡蠣湯など「気の上衝(じょうしょう)」を抑える処方

4)瘀血(おけつ)…「血」の巡りが滞っている状
【よくある症状】月経時の腹痛など月経トラブル、精神不穏、肩こり、目の下のくまなど
【主な漢方処方】桂枝茯苓丸、桃核承気湯など「瘀血」を改善させる作用のある処方

5)血虚(けっきょ)…「血」が不足している状態
【よくある症状】皮膚の乾燥、爪がもろい、髪が抜けやすい、など
【主な漢方処方】四物湯、当帰飲子など「血」を補う処方

6)水毒・水滞(すいどく・すいたい)…「水」の分布異常
【よくある症状】めまい、嘔吐、下痢、むくみ、乗り物酔いなど
【主な漢方処方】五苓散、真武湯など「水」の偏在を改善させる処方

上の漢方処方は、あくまでも一例。体力の有無、冷えや熱の有無、胃腸の強さなど、さまざまな条件で、上記の症状があっても、異なる処方薬が選択される場合があります。決して自己判断はしないでください。

漢方薬の処方と同じく大切なのが生活習慣へのアドバイス。体温調節しやすい服装から、食生活、飲み物の温度、就寝前のテレビ鑑賞やスマートフォン使用の際の注意など、日常的に取り組むと有効な方法もアドバイスしていきます。

患者さんとじっくり向き合い、細やかなケアをしていけるのが漢方治療のよいところ。患者さんのお話は、どんなことでも、治療の方法を決めていくうえで、無駄な情報はありません。遠慮せずに話していただくのがよいと思います。何となく調子が悪いけれど…と悩んでいる方は、ぜひ一度門を叩いてみてはいかがでしょうか。

ページ上部へ

Copyright DAIWA HOUSE INDUSTRY CO., LTD. All rights reserved.