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大切にしたい日本の文化――ふろしきを学ぶ

近年、クールビズやエコロジー志向、そして海外観光客の増加などの影響も手伝い、日本古来の衣食住文化を改めて見直そうという動きが強まっています。その一つが「ふろしき」。先人たちの知恵と心が込められたふろしきの歴史や新しい使い方について、専門家に伺いました。

布を幾通りにも使う、千年の知恵

●奈良時代から続く「包」の文化
ふろしき=“包む布”の歴史をひもとくと、はるか奈良時代までさかのぼることができます。東大寺の宝物庫・正倉院では、貴重な品を守るために布で包んで保管していました。
その後、平安時代になると、「ころもづつみ」と呼ばれ衣替えの時には衣類を包み運ぶ道具として使われるようになります。またその一方で、蒸し風呂に入浴の際、着替えを包んで持って行き脱衣場で敷いて使う布を「風呂敷」と呼んでいました。
江戸時代にはこの2つの流れが重なり、包む布のことを総称して「ふろしき」と呼ぶようになり、日常の道具や衣服を包むだけでなく、商売道具や旅の持ち物を運ぶ時など、じつにさまざまな用途に使われるようになったのです。

●一枚の布があらゆる用途に
ふろしきの魅力は、何といってもその多用性。包む、運ぶ、敷く、覆う、羽織るなど、さまざまな用途に使えます。また、包む時には丸いもの、四角いもの、長いものなど何でも包むことができます。海外でも、チベットやタイ、中国、アフリカなど、包み布の文化圏はありますが、ほぼ真四角の布一枚で何でも包み、結び方を幾通りも編み出してきたのは日本だけ。先人たちの柔軟な発想力、器用さの賜物です。
もともと日本人は、お箸や畳の和室のように、シンプルなものを工夫して多用途に使いこなすことで、ミニマリズムな暮らしを営んできました。ふろしきを使うことは、先人の知恵に触れることでもあるのです。

●心を「包んで」届ける
もう一つの魅力は、「包む」ことに“心”が込められていること。
先人たちはは昔から「大切なものを丁寧に扱いたい、相手に敬意を表したい」と思う時、包むという行為をしてきました。ふろしき自体は一枚の布ですが、大切に思うことが「包む」という形となり、その思いが相手に伝わる。これも日本ならではの表現方法です。贈答品も手持ちにこだわり、「包む」ことでしっかりと気持ちを伝える…という丁寧な心遣いが、見直されている今。よき習慣は、改めて大切にしたいものですね。

  • ふろしきの主なサイズ(四方)と適する用途 ●中巾(ちゅうはば)…約45~50cm
  金封、小物、お弁当を包む ●二巾(ふたはば)…約68~70cm プレゼント、衣類、ワインボトル1, 2本 ●二四巾(にしはば)…約90cm 一升瓶を包む、サブバッグ ●三巾(みはば)…約100~105cm バッグ、収納、テーブルクロス

●ふろしきを選ぶときのポイント
★寸法
ふろしきには決まった寸法があり、大きさによって適した用途があります。目安としては包むものが、ふろしきの対角線(斜めに向かい合った角を結ぶ線)の1/3程度の大きさであれば、きれいに仕上げられます。「どう」使いたいのかを考えて大きさを選ぶと、失敗がありません。
★色
普段使いにはぜひ好きな色を選んでいただきたいですが、慶弔では使える色が変わりますので注意しましょう。
慶事…赤、金茶(明るい色のもの)/ 慶弔…紫、鉄紺、緑(弔事…深めの暗い色)
(※紫は、古来より高貴な色とされ、慶弔共に使うに値する色の代表色。鉄紺も男性の場合は慶事にもご使用いただけます。)

●今なら、こんな使い方
冠婚葬祭で使いこなすのも素敵ですが、今らしい色や柄のものなら、こんな使い方はいかがでしょうか?

★ホームパーティーに
お料理を持ち寄り、気軽に集まるポットラックパーティー。料理を盛ったお皿にそのままラップをかけ、ふろしきで包んで持って行けば、詰めかえなくても大丈夫。洗い物の時にはエプロンに。子どもが洋服を汚しそうなら前掛けに。外などに座る時には、敷布にも使えます。

★サブバッグに
荷物が増えたな…と思ったらふろしきを取り出し、結ぶだけでかわいいバッグに。エコバッグにもピッタリです。しっかりと結べば、パソコンなど重いものも入る強さに。また、持ち手部分をほどいて結びなおせば、フックのない手すりなどにもぶら下げておけます。

★ギフトラッピングに
誕生日や記念日、季節の贈り物を、イメージに合ったふろしきで包んで持って行くと、とても喜んでいただけます。また、もらった方が「包み方を教えて!」と反応してくださることも多く、豊かなコミュニケーションが育めます。

★海外の方へのお土産に
日本のことを伝えたい時には、ふろしきを持って行き、話のきっかけとして使いましょう。訪日された方も、日本に行ってきた!というツールとして楽しく利用されているようです。

★お弁当包みに
お子さんなどのお弁当は、親子の絆を育む「知育」として包んでみてください。ほどいたり結んだりする手の動きは、お子さんの成長にも役立ちますよ。

知っていると楽しい!ふろしきアレンジ

ふろしきを楽しく使うためには、「真結び」「一つ結び」の2つをおぼえましょう。じつは普段からよくやっている結び方。この2つを応用すると、いろいろなアレンジができるようになります。

★真結び…2枚の布を結び合わせます。

  • 1.一回結ぶ

  • 2.奥の先端部分を手前にかぶせて輪に通す

  • 3.左右にひっぱってできあがり

★ひとつ結び…1枚の布で結び目をつくります。

  • 1.結びやすいように先端を長く持つ

  • 2.輪をつくり、先端を輪の中に通す

  • 3.できあがり

覚えていると役立つ、3つのふろしきアレンジをご紹介します。

★バッグ:荷物が増えた時に便利!
三巾(みはば/100~105cm四方)のふろしきを使いましょう。

  • 1.裏面が外側にくるようにして三角にたたむ

  • 2.両端をひとつ結びにする

  • 3.裏返して、両端の結び目を中に入れる

  • 4.先端を真結びすると、ショルダータイプの「しずくバッグ」のできあがり

  • 5.(応用)3.から上の角を真結びせずに、一回深く結ぶ

  • 6.先端を真結びすると、ハンドル付の「お出かけバッグ」のできあがり

少しのアレンジで、簡単に2種類のバッグが完成。
・「しずくバッグ」は、大きなものを入れて持ち歩くのに便利。
・「おでかけバッグ」は、口が閉まって安全なので、スマホやお財布など細かい物も安心です

★瓶包み:瓶ものの持ち歩きやプレゼントに。ワインボトルや日本酒の四合瓶なら
二巾(ふたはば/68~70cm四方)のふろしきがキレイに仕上がります。

  • 1.裏を上にして敷き、瓶を中央に立てて置く

  • 2.手前と奥の端を瓶の口元で真結びにする

  • 3.左右の端をもちあげ、瓶に沿わせながら後ろに回す

  • 4.後ろで交差させ、手前に回しながら瓶を寝かせて真結びにする

  • 5.瓶を起こし、真結びを整えてできあがり

  • 6.(持ち歩く時)瓶の口元の真結びを一つだけほどき、それぞれを左右反対方向にねじる

  • 7.ねじった両端で真結びをすれば、持ち手のできあがり

★花包み:華やかな見た目がプレゼントにぴったり。丸や四角、いろいろな形を包めます。
包むものがふろしきの対角線の1/3程度になるような大きさを選びましょう。

  • 1.裏を上にして敷き、包むものを中央に置く

  • 2.手前と奥の端を箱の上に寄せ、根元を握る

  • 3.左右の端を2の後ろに回し、後ろで交差させ前方に持ってくる

  • 4.左右の端をたぐりよせた根元に巻きつけ、手前で真結びする

  • 5.先端の片方を穴に差し込む

  • 6.もう一方の先端も差し込み、整えてできあがり

ふろしきをどう使いこなすかは、自分の発想力を磨くことにも繋がります。
ぜひあなたならではのアレンジを楽しんでみてくださいね。

山田 悦子

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