


喫茶店の「喫茶」は、
もともと禅の言葉「喫茶去」が由来。
客に対し「お茶を一服いかがですか」と
勧めるような、
そんなニュアンスを持つ
この「喫茶去」から、
やがて"茶を喫する"="
喫茶"という言葉が生まれていった。
なので本来、
日本茶を指していた"喫茶"。
しかし日本ではやがて
コーヒーや紅茶を提供する
「喫茶店」が誕生。
そして1920年代から
日本に起こった"喫茶店ブーム"以降、
"喫茶"はまた別の形へと
発展してゆくこととなる。
日本茶が古くから
生活の中に根付いてきた
京都という土地は、
お茶を飲みながら語り合う……
茶を"喫する"とうことが
自然に行われてきたせいか、
はたまた多くの大学を持つ
学生街という側面も持つせいか。
個人経営の老舗喫茶や
人気カフェが多く残る、
「喫茶店、カフェ」文化が
根付いた土地。
Part1にも登場した
一保堂茶舗京都本店内の
喫茶室、 老舗レトロ喫茶、
長屋を改装した雰囲気がたまらない
人気スイーツサロン。
京都の"喫茶"の奥深さ、
バラエティ豊かさを感じさせる、
三者三様の店をご紹介。

嘉木で楽しめるお茶は、季節限定のものも合わせ14〜5種類。季節の主菓子か干菓子が付き、648円〜

その店を代表する茶銘と
同じ名前が付けられた喫茶室は、
一保堂茶舗京都本店に併設。
抹茶、玉露、煎茶、ほうじ茶……
一保堂で扱うさまざまなお茶を、
喫茶という形で
じっくり味わうことができる。
こちらの喫茶室の最大の特徴は、
抹茶以外は基本的に
「お客さま自らが淹れる」こと。
玉露は湯冷ましの60℃、煎茶は80℃……
とお茶の種類によって
抽出に適した温度と時間が異なる。
日本茶をふだん飲み慣れていない人だと、
「上手く淹れられないかも」と
不安になるかもしれない。
しかし、淹れ方はスタッフが
丁寧に教えてくれるので心配はご無用!
温度を下げるためポットのお湯を
茶碗に移し、そして急須へ。
指定された時間を待ち、
いざ茶碗に淹れたお茶を飲めば、
お茶本来の持つ香り高さ、
そして旨みや甘さに誰もが驚くはずだ。
おそらく、普段日本茶を
飲み慣れていない人ほど
その驚きは大きいはず。
自身で淹れる茶葉の場合はポットの
お湯を一緒に持ってきてくれるので、
二煎目以降変化する味わいを
楽しめるのもまた魅力。
一人でゆったりした時間を味わうもよし、
友達や家族と話をしながら
杯を重ねるもよし。
日本茶、そして"喫茶"の
本来の魅力を味わえる、そんな場所だ。

抹茶を注文した場合は、店内の茶釜からスタッフが湯を注ぎ丁寧に点ててくれる。その様子を眺めるのもまた一興

初めてのお客様にはスタッフが淹れ方をレクチャーしてくれるので安心。ちょっとしたことで味わいが変わってくる、日本茶の繊細さに驚く

日常的に日本茶を飲んでいる人でも、「普段は適当に淹れているかも」という人はいるはず。自分の手できちんと淹れたお茶はまた、格別の味わい

観光地の喧騒から一転、ブルーの照明が印象的な店内は、まるで海の底に沈んだかのような雰囲気

多くの観光客や買い物客で賑わう
京都随一の繁華街、
四条河原町交差点。
そのほど近く、高瀬川沿いに
まるで時が止まったかのような
喫茶店が存在する。
それがここ、喫茶ソワレ。
老舗喫茶が数多く存在する京都だが、
こちらもその代表的な店舗の1つ。
初めて足を踏み入れた人は、
異世界のようなその雰囲気に
驚くはずだ。
青に統一された照明、
壁に飾られた東郷青児の直筆画、
建物一面に施された豪奢な装飾……。
かつては多くの文化人や著名人が
訪れたことでも知られる
喫茶ソワレの創業は1948年。
移り変わりが激しい
今日の中心部にありながら、
70年近くこの場所が大切に守られてきた、
その事実にまず感動する。
看板メニューは、5色のゼリーが
ソーダに沈んだ「ゼリーポンチ」。
その宝石のような美しさは、崩すのが
ついもったいなく感じてしまうほど。
意を決して口に運べば、
ゼリーの儚げな口当たりと、
ソーダのほのかな甘さ……
まるで自分が昭和の美人画の主人公か、
乙女絵の世界にトリップしたような、
そんな気分になってしまう。
ちなみにこちらの店が創業時から
守る大きな特徴は「BGMがないこと」。
これはお客同士の会話自体が、
店のBGMがなるとの考え方から。
昭和の時代から、多くの若者達の
「恋の語らい」の場ともなってきたという
この店で、
かつての恋人たちや
文化人の語らいを想像しながら、
格別な時間を過ごしては。

ゼリーポンチ650円。二代目オーナーのときに考案されたというこちらのメニューは、近年SNSなどでその美しさが話題になることもしばしば

店内の照明が青い理由は、創業者が交友があったという染織家・上村六郎氏の「女性がきれいに見える」というアドバイスから

創業者・元木和夫氏がもともと東郷青児作品のコレクターだったことから、やがて東郷氏も訪れたというこの場所。グラスやカップには東郷氏のイラストが入り、こちらや店内の直筆画目当てに訪れる人も多い

生クリームが別添えされたウインナーコーヒー600円。こちらのカップも東郷青児氏のイラスト入り

![喫茶ソワレ[きっさそわれ]](images/part2/02_tenpo_pc.png)
京都府京都市下京区西木屋町四条上ル真町95
TEL:075-221-0351
<営業時間>
13:00~19:30(L.O 1F-18:00 2F-18:45)
<定休日>
月曜日休

“和”のしつらいが感じられる坪庭を眺めながら、洋菓子とお茶を楽しむ……京都らしい贅沢なひととき

京都の"喫茶"は時代とともに、
バラエティ豊かにもなっていくことに。
時にはカフェスタイルだったり、
時にはパティスリー併設の
サロンだったり……。
こちらはそんな、
京都の"新たな喫茶"の1つ。
京都の人気スイーツ店、
「パティスリー オ・グルニエ・ドール」が
2010年に新たに
開店させたティーサロンだ。
「京都の台所」と言われる商店街、
錦市場のほど近くにある
古い京町家を改装した店内は、
シックながら落ち着いた雰囲気。
そして何より目を引くのは、
入口近くにあるショーケースに並ぶ
美味しそうなケーキ!
訪れた人誰もが、
思わず心を躍らせてしまうはずだ。
それもそのはず、こちらの
オーナーシェフ・西原金蔵氏は、
「フランス料理界の巨星」
アラン・シャペル氏の愛弟子として
活躍した経歴も持つ、
日本を代表するパティシエの一人なのだ。
果物は旬のもの、かつ店の貯蔵庫で
熟成させた食べ頃の物だけを使う。
その日に出すケーキは、
当日の朝に焼き上げる……
オ・グルニエ・ドールの
ケーキの美味しさは、西原氏の
そんな妥協なき姿勢から
生み出される。
素材一つ一つの魅力がぎゅっと詰まった
珠玉のスイーツたちは、
その味わいはどこかホッとする
温かみを持つ。
この店が観光客だけでなく、
京都っ子にも支持されるのは
それゆえだろう。
サロンの中心部に見えるのは、
ガラス張りの坪庭。
スイーツとともに四季の移ろいを
五感でじっくりと味わえる、
京都ならではの空間なのだ。

人気スイーツのピラミッド550円(税込)。またリンゴタルト390円(税込)は季節に応じて津軽、紅玉、ふじと使い分け、その味わいの違いを楽しむファンも多い

鮮やかなフルーツと、リッチな味わいのタルト生地のコントラストが楽しいフルーツタルト1100円(税込)。ポットで出てくる紅茶は575円(税込)〜

元の町家を活かした造りのせいか、スタイリッシュでありながら居心地のいい空間。美味しいスイーツとともに、どんどん会話が弾んでしまいそうだ


京都府京都市中京区菊屋町519-1
TEL:075-468-8625
<営業時間>
11:00~19:00
<定休日>
水曜日休(火曜日・木曜日不定休)