



「B・B・B POTTERS」の2Fで、
気になる器たちと出会った。
「小石原ポタリー」という名前の付いた、
シンプルでありながら
存在感のある器たち。
陶器ならではの重厚な質感、
1つ1つ個性を持つ模様と色味、
「白」とテラコッタの
コントラスト。
しかしどの器も和食にも
洋食にも使える使い勝手の良いフォルム、
素材を活かした素朴な料理でも、
ぐっと引き立たせてくれるそのデザイン。
料理をする人なら誰もが惹かれずには
いられないこの小石原ポタリー、
実は10年前に生まれた
新たな"民芸の器"なのだ。
器に施された切れ目のような
細かい模様は「飛び鉋」と呼ばれる技法。
「刷毛目」と呼ばれる
ゆるやかな筋の模様や、
白い化粧土の色とともに、
これらはもともと福岡県
朝倉郡東峰村で300年以上の歴史を持つ
「小石原焼」の伝統的な技法だという。
その小石原焼きの窯元と、
フードコーディネーター・
長尾智子さんの
コラボレーションによって
開発され、
2007年に発売されたのが
この「小石原ポタリー」だ。
小石原ポタリー最大の特徴は、
形、大きさという規格は
統一されていながらも、
その模様や色味は窯元ごとに違い、
一つも同じものはないということ。
これは「小石原ポタリー」という
ブランドでありながら、
それらを作る10の窯元、それぞれの
個性や技法が出ているからなのだ。

作られた器は乾燥させ、窯で焼き上げられる。元永さんの器は化粧土をかけるまえに飛び鉋を入れるのが特徴

ろくろを回し、器を作り上げる。1つあたりものの数分で出来上がってしまう

作陶の最初の工程、菊もみ。粘土の中の空気を抜くように練り込む
そんな小石原ポタリーの生まれた
東峰村は、天神周辺から
車で1時間半。
人口約2000人の静かな村で、
小石原焼、そして高取焼という
2つの焼き物の窯が50ほどある。
時代の変化に合わせた新たな試みを
模索する中、東峰村の商工会が発端となり、
立ち上がったのが「小石原ポタリー」だという。
手がける窯の一つ、
「元永陶苑」を訪れた。
もともと高取焼がメインの
窯元だという元永彰一さんが、
小石原ポタリーに参加した理由は
「面白そうだったから」。
「でも、あんなに反響があるとは
思ってなかったよ」と笑う。
私たちの目の前で、
実際に器を作ってくれた。
小石原焼、高取焼双方とも
使われるのは地元の土。
空気を抜くために練り上げた土を
ろくろにのせると、
鮮やかな手つきで
椀やすり鉢、深皿などを
次々と作り出してゆく。
小石原焼の代表的な技法、
飛び鉋(かんな)も見せてくれた。
飛び「鉋」とは言うが、
実は使う道具は古い時計のゼンマイを
加工したもの。
半乾きの器をロクロにのせ、
回転させながら鉋を入れると、
細かいあの模様が瞬く間に
浮かび上がる。
その様はまるで魔法のよう。
小石原焼が白いのは、
釉薬の白さだけでなく
あとから白い粘土をかける、
いわゆる「化粧土」を使用するから。
もともと陶器より磁器のほうが
珍重されたから、「白い器」を
作りたかった。
しかしこのあたりでは白い土は
少ししか取れないから、化粧土として
使うことで白さを出した。
土の鉄分が多いから、
焼き方や温度で色が変化してゆく……
元永さんに伺う焼き物の話は、
どれも興味深い。

作陶に使われる道具たち。十字の棒はサイズを図る「とんぼ」と呼ばれるもの

手前は化粧土のあとに飛び鉋をかけた器。シンプルな技法でも実に多彩な表情を出せることに驚く

飛び鉋をかける様子。瞬く間に器全体に模様が広がる

元永さんの使用している薪窯。ガス窯もあり、小石原ポタリーの製品はガス窯で、それ以外のものは薪窯で焼くことが多いという

元永陶苑のショップには、元永さんの手がけた製品が並ぶ。もともと茶器などを得意としているのだとか

![高取焼元永陶苑[たかとりやきもとながとうえん]](images/part2/02_tenpo_pc.png)
福岡県朝倉郡東峰村大字小石原883-6
TEL:0946-74-2731
<営業時間>
9:00~18:00
<定休日>
不定休
※東峰村での小石原ポタリー商品販売は
ギャラリー小石原(福岡県朝倉郡東峰村大字小石原868-15)のみ
Part1で紹介した「B・B・B POTTERS」、
その2階にある「カフェポッターズ」では、
一部メニューに小石原ポタリーの器を
使用している。
古い伝統を持つ日本古来の焼き物は、
和食に合うことはあっても、
洋食のメニューには
なかなか合いづらかった。
小石原ポタリーの監修を手掛けた
長尾智子さんが目指したのは、
「料理をおいしくする器」。
今の私たちの日常的な食生活、
生活スタイルに合うよう、
底の部分……高台をなるべくなくしたり、
茶碗にもスープボウルにも
使えるようにと、形や大きさを徹底。
それでいて、小石原焼ならではの
風合いや魅力は従来通りにあり、
それぞれが個性としてより引き立つ。
伝統技法と新たなデザイン、
その2つが融合することで生まれた、
どんな料理にも合う「用の美」。
福岡の「手仕事」が、ここにもある。

小石原ポタリーの皿が使用されたToday's Lunch1000円(税込)。この日は野菜と豆がたっぷりのポトフ

ポッターズカフェでのひとときは、仕事や喧騒を忘れ、ホッと一息できる瞬間

チーズケーキ480円(税込)。お料理からスイーツまで幅広く合うのが小石原ポタリーの魅力


福岡県福岡市中央区薬院1-8-8 2F
TEL:092-739-2080
<営業時間>
11:30~20:00(LO19:30)