ギャラリー杣人/鈴木木材


文化・歴史
ロイヤルシティ鹿部リゾート/2026.01.23

北海道の南西部、渡島半島(おしまはんとう)の日本海側に位置する厚沢部町(あっさぶちょう)。この周辺は本州と北海道の樹木が混じる地域で、北限のゴヨウマツやヒバ、南限のトドマツが混在するなど独特の植生が広がっています。北海道道67号線(通称:八厚やまぶきライン)沿いにたたずむ2階建ての建物と大量の木材が積まれた一角は、北海道一円の森から集めた広葉樹専門の製材工場と板展示販売場、そして木の住まいに似合う生活雑貨や自然食品を提案するギャラリー、その名も『ギャラリー杣人(そまびと)』。運営するのは、厚沢部町で70年近く製材所を営む「鈴木木材」です。


国道沿いに建つメインギャラリー兼事務所は、近所から移築した蔵を改修した建物。梁や柱には移築前から使われている古材と新しい材が入り混じり、店内は居心地の良さに包まれています。ここで販売されているのは、益子焼などの器のほか、北海道東川町を拠点とするアパレルブランドの靴下、添加物不使用の食品や調味料、そして広葉樹を座面に用いたスツール『反りっどスツール』などのオリジナルアイテムまで、愛着がわくような生活用品が集められています。

(写真左上)乾き物の盛り付けなどに使えるオリジナルカッティングボード。洗って風通しの良いところで乾かすだけで、特別な手入れも必要ない
(写真左下)加工時に出てくる広葉樹の反りや凹凸が味わいとなる「反りっどスツール」。裏面には樹種の焼印も
(写真右)同じ益子焼でも、焼窯それぞれの個性を感じられる。写真は栃木・益子で作陶する海炎窯の作品
ギャラリー裏の板展示販売場には、広葉樹の一枚板が所狭しと並んでいます。木の種類だけでもおよそ50種類揃っていますが、イヌエンジュ、ギンドロ、アサダなどどれも馴染みのない名前ばかり。広葉樹は同じ樹種でも一本一本に個性があるため機械化が難しく、ほぼ手仕事で製材されているといい、ここに揃うすべての板は、敷地内の製材工場で加工されています。割れや入皮(いりかわ)、節も「風合い」として残し、購入希望者にわかるように明記。建築のプロから一般の人まで「洗面台の天板に」「テーブルに」と自分だけの一枚を求めに訪れます。「硬くて重くて扱いづらいけど、自己主張があるのが広葉樹の味。暮らしの中のワンポイントに使うだけでも、存在感があるんです」と鈴木さんは語ります。
さまざまな樹種の一枚板が並ぶ板展示販売場。鈴木木材のような広葉樹専門の製材工場は、北海道内でも貴重な存在になりつつある
『BOOK CAFE』と名付けられたスペースでは、ひとりの専門職人が手がける自社オリジナルテーブルを展示しています。先ほどの板展示販売場の板とは違い、こちらは自然塗料で表面塗装した完成形の状態。色合いや木目、質感など、表情の違いがさらに際立ち、広葉樹の奥深さを感じられるスペースです。なかには広葉樹独特の反りや割れによる隙間を埋める「千切(ちぎ)り入れ」が施された板もあり、さりげなくも確かな職人の技術にも引き込まれます。


(写真左)表情豊かだが、加工時は扱いにくいのが広葉樹。加工の大半が手仕事で、表面も手刻みされているのがわかる
(写真右)ギャラリー杣人のオリジナルテーブルを展示する板展示販売場1階の「BOOK CAFE」
「ギャラリー杣人/鈴木木材」を訪れる人を見ていると、木を愛でるようにゆっくり過ごす姿が印象的です。その姿に「すごく楽しそうに木を見てくださるのは、ありがたいですよね」と微笑む鈴木さんは、こう続けます。「広葉樹は、1本の中でも製材して使えるところが少ないかもしれませんが、おがくずがキノコ栽培や牛舎の堆肥など、いろんな分野で使われるので利用できない部位はありません。サステナブルという言葉が最近よく使われますが、自然の流れのなかで生きていたら、そんなに騒がなくてもいいんじゃないかと思っています。実はとっても普通なことだから」。


(写真左)北海道東川町の家具メーカー『北の住まい設計社』が、鈴木木材の木材を用いたオリジナル家具のショールームも敷地内に。2階の床板は大工が既製品のハネ材を1枚ずつ仕上げたもので足触りが良い
(写真右)庭の木々の中にさりげなく飾られたギャラリー杣人の看板
![鈴木木材/ギャラリー杣人[現地から約72.9km]](images/article24/img10.png)