大分県立美術館(OPAM)
食・趣味・娯楽
ロイヤルシティ別府湾杵築リゾート/2025.08.29
ロイヤルシティ別府湾杵築リゾートから車で約1時間の場所に位置する大分県立美術館(愛称OPAM/オーパム)は、2025年(令和7年)4月に開館10周年を迎えました。それまでにあった県立芸術会館の老朽化と展示スペースの手狭さを解決するべく、OPAMに与えられたミッションは「県民に開かれた美術館」であるということ。町の景観に新たな表情をもたらした建築デザインと3世代が楽しめる行き届いた企画力で、名実ともに日常に溶け込んだ美術館として根付いています。
あまり美術館に訪れない人たちに向け、「町にひらかれた縁側としての美術館」という視点でデザインされた
大分の伝統工芸である竹工芸をイメージした外壁のファサードをはじめ、爽快なデザインで大分の街に新しい表情を加えたのは、世界的な建築家、坂 茂(ばん しげる)氏。県民に開かれた美術館というミッションに応えるため、美術館を訪れない人を引き寄せ、日常的に何度でも足を運べるような美術館をテーマに設計されました。道路を隔てて向かいにある「iichiko総合文化センター」とは、屋根付きの連絡道路(ペデストリアンデッキ)を通じて往来が可能。こちらのデザインも竹工芸をモチーフにしています。
OPAM2階へ繋がるペデストリアンデッキ
作品との出会い、あるいは美術館体験そのものとの出会いを重視してつくられたOPAM。外を歩いていても美術館の中の様子がわかるように、ガラス張りになっています。しかも、南側全面のファサードがガラスの水平折戸となっており、最大約6mの高さまで開放可能です。開放されたアトリウムではイベントが行われるほか、近くの保育園児たちがお散歩途中に入ってきたりと、まさに「県民に開かれた美術館」になっています。
1階アトリウム。初夏から秋の間、ファサードが開き、町と繋がる
1階は企画展や催しにあわせて、ショップやカフェ、展示室がフレキシブルに可動できるフリースペース、2階はカフェをはじめ、ワークショップが行える教育普及のスペース、さらにエスカレーターで3階まで上がると、天窓が開いた屋外展示スペースがお出迎え。竹工芸の「六つ目編み」をイメージした木組の天井、床には日田石が採用されるなど、大分の風土を取り入れた空間では、髙山辰雄、福田平八郎らの日本画、田能村竹田(たのむらちくでん)の南画など、大分が誇る約5,000点のコレクションから厳選された作品が展示されています。
(写真左)空に開かれた3階の中庭「天庭(あまにわ)」
(写真右)1階展示「ユーラシアの庭」。1600年、オランダ船リーフデ号が大分の臼杵に漂着したことに始まる日蘭交流の歴史にちなみ、オランダと日本のデザイナーが作品で競演
たとえば、親子3世代で来館し、1階のキッズスペースや2階のアトリエで子どもたちと遊んだ後、1階や3階で催される展覧会に行くなど、幅広い世代に美術鑑賞を楽しんでもらうために、企画にも趣向を凝らしているというOPAM。特に館内外で実施しているワークショップの年間開催数は、全国の美術館でも有数といわれるほど、子どもたちに向けた芸術の普及活動に力を入れています。子どもたちから預かったぬいぐるみが館内で1泊し、その様子を冊子にして進呈する『ぬいぐるみお泊まり会』など、ユニークな企画もあり目が離せません。
大分県産の食材を使ったランチやスイーツを提供する「カフェ シャリテ」。インテリアも坂 茂氏が得意とする「紙管」を使ったデザイン
仕事帰りの人や遠方から訪れる人もゆとりを持って立ち寄れるように、開館時間を日曜〜木曜は19時まで、金曜土曜は20時までに設定。年末年始もイベントを開催するなど、年中無休で来訪者を迎え入れるOPAMは、開館10年目を目前に入場者数500万人を達成しました。「これから10年後、20年後も、リビングに来る感覚で美術館に来てもらえるように。いいものを多くの方に観てもらうための努力を惜しまずやっていきたい」と語るのは副館長の松尾浩司さん。美術館を人々の日常に。そのための工夫を凝らすOPAMに、県外からも多くのファンが訪れています。
大分県立美術館 副館長の松尾浩司さん「10周年の企画展を観た子どもたちの感想を聞いて、その視点に驚きました。彼らが大人になっても立ち寄れる美術館でありたいです」