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鹿児島県霧島市

“暮らす森”を知ろう

SLOWNER WEB MAGAZINE

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自然・風土

悠久のときを刻む神話のまち、霧島を行く

霧島高千穂リゾートランド/2025.03.28

鹿児島県霧島市

鹿児島県の中央部に広がる、鹿児島県霧島市。日本で最初の国立公園のひとつ「霧島錦江湾国立公園(指定当時は霧島国立公園)」を有し、天孫降臨神話の舞台といわれる高千穂峰や神話の主人公瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)を祀った霧島神宮など、悠久の歴史を物語る場所が点在しています。霧島神宮は、1234年(文暦元年)まで高千穂峰の西麓の高千穂河原にあったとされ、現在も高千穂峰の荒々しい山肌を背に古宮址が鎮座しています。

(写真左)霧島神宮へと続く静かな参道 (写真右)杉木立の中で威厳を放つ山神社

幾度もの噴火や火災に見舞われた後、1715年(正徳5年)、島津吉貴公の寄進で現在の場所に再建された霧島神宮。荘厳な森に囲まれた社殿までの参道も美しく、凛とした空気に満ちています。社殿脇にある旧参道を上がっていくと、杉木立の中に白木の鳥居が見えてきます。小さな祠が鎮座するここは「山神社」。大山祇神(オオヤマツミノカミ)を御祭神とし、霧島神宮とはまた違う威厳を感じます。山神社の脇を、さらに上へと向かうこの古道は高千穂嶽道(おたけみち)と呼ばれ、霧島神宮の古宮址がある高千穂河原へと続いています。

(写真左)「霧島の七不思議」に数えられる若宮神社と御手洗川 (写真右)白い水飛沫をあげながら、苔むした岩肌を走る御手洗の滝

霧島神宮を中心とした界隈では、昔から不思議な現象が起こるといわれており、地元の人々の間で「霧島の七不思議」と呼ばれているとか。例えば、霧島神宮の近くを流れる小さな川、御手洗川もそのひとつ。毎年11月頃から4月頃までは枯れており、5月になると突然、魚と一緒に清らかな水が湧き出すといわれています。その下流にある御手洗の滝は、夏にはそうめん流しでにぎわう場所。落差約4mと滝としては小さな滝ですが、苔むした岩肌を縫うように清流が幻想的で、パワースポットとしても人気です。

庭園を望む座敷の隣に、洋間の応接室がレイアウトされた旧田中家別邸

錦江湾の東から、桜島を望む

1922年(大正11年)の完成から100年以上経つという旧田中家別邸。外観は和風建築ながら、内観には座敷のほかに、シャンデリアや大理石をあしらったマントルピースを配した洋間もあり、大正時代の住宅建築を色濃く残す建物として県の有形文化財に指定。雄大な桜島を借景とする庭園も市の文化財に指定されています。この家の主は、旧福山町出身の故・田中省三(せいぞう)。関西実業界で活躍し、衆議院議員も務めた田中は私財を投じて旧制福山中学校を設置するなど、地元の教育に尽力した人物で、1925年(大正14年)にその生涯を閉じました。

霧島市の冬の風物詩、中茶屋公園から望む「ダイヤモンド桜島」

集落の中の坂道を上ると、中茶屋公園にたどり着きます。目線の先には、錦江湾に浮かぶ桜島の稜線が何にも邪魔されることなく一望できます。特に冬至の少し前からは、太陽が桜島のちょうど山頂あたりに沈む時期で、夕焼けの中に浮かび上がる桜島のシルエットが幻想的。桜島に後光が差すその光景は「ダイヤモンド桜島」と呼ばれ、翌1月中旬頃まで見ることができます。

(写真左)明治期の建築様式を伝える貴重な建造物として2006年(平成18年)に国の登録有形文化財となったJR大隅横川駅
(写真右)ホームの柱には今も第二次世界大戦時の機銃掃射の痕跡が残る

神秘的な美しさを見せる霧島の水辺

熊本県八代市の八代駅から宮崎県を経て、鹿児島県霧島市の隼人駅を結ぶJR肥薩(ひさつ)線。横川町の中心部にある大隅横川駅は、1903年(明治36年)に開業した鹿児島県内最古の木造駅舎が残っています。屋根は波を打ったような形の桟瓦(さんがわら)を葺いた切妻屋根で、待合室には竿縁(さおぶち)天井、待合室とホームに下屋(げや)が取り付けられるなど、明治期の建築様式があちこちに。金の採掘で栄えた町らしく、堂々とした造りの駅舎には、第二次世界大戦時に受けた機銃掃射の弾痕も残り、町の歴史を静かに物語ります。

久留味川に注ぐ大出水の湧水。湧水の水温は年間平均15℃。

横川町の人里離れた山の中に「大出水(おおでみず)の湧水」と呼ばれる湧水が湧き出ています。ここは霧島連山を水源とする、毎分22トンもの水が湧き出る場所。その横を流れる久留味川の緩やかな流れは、周囲の神秘的な景観と相まっていつまでも見入ることができます。また、妙見温泉街を流れる天降川(あもりがわ)も、川底が見えるほど透き通った美しい川です。天降川の中流域は、流れで旋回する小石が軟弱な岩盤の川床を削ってできた「真米甌穴群(まごめおうけつぐん)」が見られる地質学的にも貴重な地域。自然の中でも、霧島の悠久の時間を感じることができます。

(写真左)清麗な天降川が流れる妙見温泉街
(写真右)甌穴とは、河床などの岩盤にできる円形の穴のこと。真米甌穴群は加久藤(かくとう)カルデラや阿多カルデラなどから噴出した火砕流が積み重なった一帯に広がっている

霧島神宮[現地から約2.9km]/高千穂河原[現地から約8.1km]
若宮神社[現地から約3.4km]/御手洗の滝[現地から約3.4km]
旧田中家別邸[現地から約27.4km]/中茶屋公園[現地から約30.1km]
JR大隅横川駅[現地から約26.4km]/大出水の湧水[現地から約23.5km]
妙見温泉街[現地から約18.1km]/真米甌穴群[現地から約21.1km]

取材撮影/2024年12月15日~12月17日

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