2021年最新路線価を読み解く
公開日:2021/07/30
POINT!
・2021年の路線価は47ある都道府県のうち39で下落し、全国平均で前年比-0.5%
・県庁所在地の最高路線価が上昇したのは8都市のみ、22都市で下落した
2021年7月1日に2021年分の路線価が国税庁より発表されました。路線価は、1月1日が評価時点で、国土交通省の公示地価と同じです。路線価は、地価公示価格などを基にした価格(時価)の80%程度を目途に評価されていますので、2021年3月に発表された公示地価と同じような状況となっています。
- 注:路線価は修正される可能性があります。以下の数字は2021年7月1日に国税庁が発表した数字を基にしています。
相続などで重要な指標となる路線価
路線価は、土地活用をされている方にはとても関心の高い相続税や贈与税の算定基準となるものです。今回発表された路線価は、2021年1月1日以降に発生した相続や贈与の相続税額や贈与税額算定に影響する重要な数字となります。いうまでもなく、年単位で路線価等は変わりますが、こうした税の算定基準となるのは、相続や贈与が発生した時点の数字で、申告した時点の数字ではありませんので、注意が必要です。
また、路線価を基に土地に関する税が算出されますが、特定や補正などの計算方式はかなり複雑ですので、税理士などの専門家に相談するといいでしょう。
路線価(あるいは、路線価が設定されていない土地の評価倍率)は、全国にある宅地、田、畑、山林を対象として定められています。ここでいう宅地とは、住宅地だけでなく、商業施設やビル、工場など、その用途にかかわらず、「建物の敷地となる土地」を指します。
全国平均では6年ぶりの下落
2021年分の路線価(標準宅地)の全国平均は前年比-0.5%と6年ぶりに下落しました。これは、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、特に都市部商業地では、オフィスや商業系テナントの需要が減少、またインバウンド観光客の減少などが要因と思われます。
都道府県別では、東京都や大阪府は8年ぶりの下落となりました。全国39都府県で下落し、上昇したのは7道県のみとなっています。前年は上昇した都道府県が21でしたので、大幅に減ったことになります。
県庁所在地の最高路線価
図1の都道府県庁所在地の最高路線価を見ると、上昇したのは前年より30都市減って8都市となりました。一方、下落したのは、前年の1都市から22都市に増え、全国的に新型コロナウイルス感染症の影響が出たことがうかがえます。
注目は、昨年は路線価が40.8%も急上昇した沖縄県那覇市の路線価最高地点(久茂地3丁目、国際通り)で、今年は-1.4%と急落しました。
図1:都道府県別 県庁所在都市の路線価最高地点 前年変動率
2021年路線価(国税庁資料)より作成
詳細は、下記Webサイトを検索すれば、オーナー様が所有されている土地の路線価が検索できます。
昨年同様、修正はあるのか
昨年、大きな話題となった路線価の期間中(年)の修正ですが、今年も修正の可能性があるかもしれないことを、国税庁が示唆しています。
路線価は通常、今回発表された1月1日時点の評価額が年間を通じて適用されます。しかし、国税庁は2020年7~12月分については、2020年3月頃から新型コロナウイルス感染拡大の影響により、20%を超える大幅な地価下落が見られたとして、2021年1月と4月に、大阪市の繁華街など13地域で減額修正を行いました。
国税庁は、2021年分に関しても、地価変動等に柔軟に対応できるよう、動向調査を実施する
と発表しています。
しかし、今年の路線価は新型コロナウイルス感染症の影響が反映されているといえる数字でした。1月1日時点も7月現在も、観光地などが置かれている環境は、ともに「良くない状況」で大きな違いはありません。そのため、おそらく減額修正はないものと思われます。