
社会貢献としての土地活用を考える(2)
公開日:2024/12/26
賃貸住宅経営自体、快適に過ごせる住まいを提供するという人の持つ基本的なニーズに応えるものですが、地域や社会に対する貢献活動としての側面もあります。「土地活用ラボ」の以前の記事「社会貢献としての土地活用を考える」では、超高齢社会を迎える日本において、高齢者向けの施設による高齢者の生活支援を中心とした社会貢献について紹介しましたが、ここでは地域活性化や災害対策という社会貢献について紹介します。
2021年3月に国土交通省から公表された「不動産分野における 地域社会・経済への貢献に関する 情報開示の事例集」では、「不動産に関する領域については、地域社会との強い関わり合いを持ち、地域社会のあり方等に大きな影響を与えるという不動産固有の特徴を踏まえ、レジリエンス(環境の変化や突然の危機に対する強靭性や回復力)の向上、持続可能で、衡平な社会の構築観点からの社会的課題の整理が求められている」とされており、不動産(施設)が持つ、地域のコミュニティ形成やレジリエンス強化という機能について提唱されました。
また、国土交通省が2019年に開催した「ESG不動産投資のあり方検討会」では、不動産投資におけるESGやSDGのあり方及び取り組み推進のための検討が実施されました。2019年7月に公表された当該検討会の中間とりまとめでは、不動産業界に求められる社会(S)への対応として、「地域社会・経済への寄与」「健康性・快適性の向上」「災害への対応」「超少子高齢化への対応」の4つが挙げられました。
地域社会・地域経済への貢献
現在多くの地域で、少子高齢化、人口減少の課題を考えていますが、地域活性化の解決策のひとつとして多くの地域で取り組まれているのは、若い世代の呼び込み、移住促進です。多くの自治体は子育てや生活の支援として、住まいや保育所などの支援策を打ち出しています。
若い世代が移住するとなれば、必要となるのが賃貸住宅です。住みやすく、快適で、さらに子育て世帯や共働き世帯が生活しやすい住まいを提供することができれば、十分な地域経済活性化の支援となりえます。
このような賃貸住宅の提供は、土地オーナー(賃貸住宅経営者)の経営判断によって可能となりますので、賃貸住宅経営者の役割は少なくありません。
健康・快適性の向上
世界的に脱炭素社会に向けた取り組みが進む中、戸建住宅では先行してZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の採用が進んでいますが、賃貸住宅においても、「ZEH-M(ゼッチマンション)」として、普及が広がっています。
ZEH-M仕様の賃貸住宅では、天井・外壁・窓・床の高い断熱性で、ZEH-Mではない賃貸住宅よりも夏は涼しく冬はあたたかく、一年を通して快適に過ごすことも可能です。また、冬の窓ガラスが結露しにくいのも特徴のひとつです。高断熱複合サッシで冬の寒さが室内に伝わりにくくなり、窓の結露を防止することで、カビが発生しにくく、健康にも配慮した賃貸住宅だと言えるでしょう。
災害への対応
築古で老朽化した木造賃貸住宅は、火災発生時に大きな被害を受けることが予測されます。近隣への延焼などのリスクもあります。
東京をはじめ多くの都市部において、大地震などの災害に備えたまちづくりが推進されていますが、中でも大きな問題とされているのが、都市部の密集した地域での火災です。木造住宅が密集する地域での火災は被害も甚大になることも予想され、こうした地域をいかに火災に強いまちへと変えることができるかが課題となっています。賃貸住宅においても、築古の木造から耐火構造の賃貸住宅への建て替え促進が求められています。
不動産オーナーとして取り組む地域貢献活動
地域において、複数の不動産や建物を保有する土地オーナーは、地元の名士であることも多く、地域において、大きな影響力を持つ人も少なくないでしょう。
不動産(賃貸住宅)オーナーとして、施設建築以外にも地域に貢献できる活動は少なくありません。賃貸住宅オーナーの多くは法人として経営に当たられていると思いますので、個人だけではなく、法人として地域に貢献することもひとつの方法です。法人として行うことで、社員や関係会社など、より大きなリソースを活用することができ、間接的に企業価値を高めることにもつながります。
たとえば、地域の空き家となっている住宅や商店をリノベーションなどによって積極的に活用し、移住者や起業家などを支援することも可能でしょう。
また、外国人観光客の来訪を促進するために、多言語対応可能な外国人向けの宿泊施設や住まいを提供することも、昨今の外国人観光客の増加を見れば、必要となるかもしれません。
地元にお住まいの人に向けても、地域の人が参加できるイベントを開催し、コミュニティの形成に役立てるなどの施策ができそうです。
賃貸住宅オーナーとして、地域に貢献できる活動は、それぞれの地域が抱える問題によって変わってきますので、まずは、ご自身が賃貸住宅を行っている地域の課題は何かを把握することが大切なのは言うまでもありません。