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コラム vol.547-1
  • 土地活用税務コラム

空室を生まない賃貸住宅経営(1)長期的な賃貸住宅経営のために、地域のニーズを把握する

公開日:2025/05/02

賃貸住宅経営を行う際には、建築計画から管理まで、不動産会社や建設会社にすべて一任する方法もありますが、自分自身で納得して賃貸住宅経営を行うには、やはり、地域のニーズ、需要を自分自身で調査し、その上で、適切な建物、設備、間取り等の賃貸住宅経営計画を不動産会社や建設会社に相談することも必要です。

周辺地域のニーズをつかむ

まず、自分が計画している賃貸経営のご入居者の候補が、該当するエリア内にどのくらい存在しているのかを知ることが賃貸住宅経営の第一歩となります。周辺にご入居者がいないところでどれだけ立派な賃貸住宅を建てても経営はうまくいきません。いくつかのポイントに沿って確認することが必要です。

人口(転入・転出)

現在、多くの地域で人口は減少傾向にありますが、自治体や地域によって、人口移動が起きていますので、重要なことは、将来に向けて、人口がどのように変化していくのかをある程度把握することです。
これは全国レベルの話ですが、総務省が公表している「住民基本台帳人口移動報告」を見ると、全国都道府県や市町村によって、さまざまな移動人口状態が示されています。このようなデータを参考にして、計画の地域、エリアが今後、どのような移動人口を示していくのかを予測することが大切です。自治体によっては、子育て支援や移住等の人口の呼び込み施策を行っていますので、その施策の効果や今後の計画等を確認してみるのも一つの方法です。10年後、20年後の入居需要について予測することは、賃貸住宅経営にとってとても大切なことです。

施設(学校、商業施設、企業の工場など)

おおまかな人口に関連することに加えて、周辺環境は、ご入居者の属性に大きく関連します。たとえば、大学や専門学校などの学校が多いとなれば、ワンルーム等の需要が多いと判断できますし、企業の工場やオフィスの需要があると判断できれば、単身者向けに加えて、家族向けの賃貸住宅の需要も期待できるかもしれません。商業施設、特に大型スーパーやショッピングセンターが近くにあれば、家族に需要の高い地域となる可能性もあります。
ただし、施設が単一の場合だと、その施設の移転あるいは閉店などがあると、ご入居者の需要が低下してしまう可能性もありますので、その点には注意が必要です。

将来的な開発予定

自治体が行う施策のほかに、将来の開発計画があるかどうかも重要なポイントです。駅前再開発などの計画がある地域では、今後、地価の上昇も見込め、賃料や収益性に好影響を与えるでしょう。また、地価の上昇は、将来売却等の出口戦略にも良い影響を与えます。自治体の情報には、常に目を通しておくことも賃貸住宅経営には欠かすことのできない大切なポイントです。

法律・規制

土地(市街地)には用途地域といわれる区分があり、建築できる建物の用途が決まっています。人口10万人以上の市などであれば必ず指定されるため、都市計画の基本となっています。用途地域は主に住居系、商業系及び工業系の3種類に分けられ、さらに13種類に細分化されています。

住居系 第一種低層住居専用地域 低層住宅のための地域。小規模なお店や事務所をかねた住宅や、小中学校などが建てられます。
第二種低層住居専用地域 主に低層住宅のための地域。小中学校などのほか、150m2までの一定のお店などが建てられます。
第一種中高層住居専用地域 中高層住宅のための地域。病院、大学、500m2までの一定のお店などが建てられます。
第二種中高層住居専用地域 主に中高層住宅のための地域。病院、大学などのほか、1,500m2までの一定のお店や事務所など必要な利便施設が建てられます。
第一種住居地域 住居の環境を守るための地域。3,000m2までの店舗、事務所、ホテルなどは建てられます。
第二種住居地域 主に住居の環境を守るための地域。店舗、事務所、ホテル、カラオケボックスなどは建てられます。
準住居地域 道路の沿道において、自動車関連施設などの立地と、これと調和した住居の環境を保護するための地域です。
商業系 近隣商業地域 まわりの住民が日用品の買物などをするための地域。住宅や店舗のほかに小規模の工場も建てられます。
商業地域 銀行、映画館、飲食店、百貨店などが集まる地域。住宅や小規模の工場も建てられます。
工業系 準工業地域 主に軽工業の工場やサービス施設等が立地する地域。危険性、環境悪化が大きい工場のほかは、ほとんど建てられます。
工業地域 どんな工場でも建てられる地域。住宅やお店は建てられますが、学校、病院、ホテルなどは建てられません。
工業専用地域 工場のための地域。どんな工場でも建てられますが、住宅、お店、学校、病院、ホテルなどは建てられません。

国土交通省資料より

住居系でも分かれているのは、建ぺい率や容積率が異なるためです。「第一種低層住居専用地域」の建ぺい率は場所によって30%・40%・50%・60%の違いがあり、容積率も50%~200%となります。「第一種住居地域」では建ぺい率が50%・60%・80%、容積率は100%~500%。つまり第一種住居地域のほうが第一種低層住居専用地域より広い家を建てられることになります。さらに、同じ用途地域の種別であっても、その地域によって数字は変わります。

また同じ「低層住居専用地域」でも、第一種では基本的にコンビニエンスストアは建てられませんが、第二種は建てられます。そのため、第一種は夜も静かな住宅街、第二種は家の近くにコンビニがあって利便性が高い可能性がある等、特性が変わってきます。

賃貸住宅は、工業専用地域には建てることができません。

このように、用途地域によって「建てられる家の大きさや高さ」や「周辺の住環境」が異なります。用途地域を事前に調べることで、暮らしが想像しやすくなります。

ただし、用途地域に関する条件や規制は難解で、全て把握するのは簡単ではありません。実際の計画については専門家に相談しながら把握してください。

周辺地域を歩いて調べる

地域の情報を把握しているのは、地元の不動産会社でしょう。特に、古くからその地域で事業を行っている不動産会社は、歴史から見たこれからの予測、将来の計画まで、詳しい情報を持っている可能性が高いといえます。

また、計画している場所を生活者の視点に立って、歩いてみることも大切なことです。最寄り駅までの徒歩ルートにはどのような店舗があって、営業時間は何時までか、買い物に不便さはないか、小学校まではどの程度の距離か等、生活者の立場に立つことで、ご入居者の気持ちになって賃貸住宅経営を考えることにつながります。歩く時間も、朝昼夜、天気の良い日、悪い日等、複数回歩くことで、その町の特徴も自ずと把握できるでしょう。まさに生きた市場調査データとなります。

こうした調査を行うことで、賃貸住宅経営者としての考え、意見が生まれてきますので、専門家に相談する際に、必ず役に立つでしょう。

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