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コラム vol.551
  • 土地活用税務コラム

賃貸住宅経営における「工法の違い」軽量鉄骨と重量鉄骨の違いとは

公開日:2025/05/30

賃貸住宅を建築する際は、「木造(W造):主要な支えが木材で建築されている構造」「鉄骨造(S造):建物の骨組みに鉄骨を用いられる構造」「鉄筋コンクリート造(RC造):鉄筋とコンクリートで造られた構造」の3種類の工法が用いられることが一般的です。中でも鉄骨造は、木造よりも耐久性、耐震性などに優れていることから、多くの賃貸住宅で用いられている構造ですが、鋼材の厚みによって、軽量鉄骨と重量鉄骨に分かれています。「軽量鉄骨:鋼材の厚みが6mm未満(一戸建てや3階建てまでの集合住宅の場合が多い)」「重量鉄骨:鋼材の厚みが6mm以上(店舗併用や3階建て以上の賃貸住宅の場合が多い)」に分かれます。

一般的な住居に多い木造とマンションに多い鉄筋コンクリートについては、見た目にもわかりやすく、違いも認識しやすいと思いますので、ここでは、外観を見ただけでは違いが分かりにくい、軽量鉄骨と重量鉄骨の違いについて紹介します。
軽量鉄骨と重量鉄骨は使用する鋼材の厚みによって分類されますが、その違いを簡単に紹介します。

表1:軽量鉄骨と重量鉄骨の違い

  軽量鉄骨 重量鉄骨
鉄骨材(鋼材)の厚み 6mm未満 6mm以上
主な建築用途 戸建て住宅・低層賃貸住宅・小型店舗など マンション・3階建て以上の賃貸住宅・商業施設など
法定耐用年数 19~34年 34年
主に採用される工法・構造 プレハブ工法
鉄骨軸組工法(ブレース工法)
鉄骨ラーメン構造
鉄骨ユニット工法

機能としての違い

鉄骨材の厚みの違いは、いくつかの機能的な違いをもたらします。まず、重量鉄骨は梁が太いため、大きな空間を作ることが可能です。そのため、自由なレイアウトがしやすく、店舗や事務所に向いているといえます。店舗を併用した賃貸住宅には重量鉄骨が向いているといわれる所以です。また、強度が高く、鉄骨柱の本数が少なくて済むため、リフォ-ム時に間取りを変更しやすいともいえるでしょう。
また、地震時の揺れにも強いことから、3階建て以上の賃貸住宅は重量鉄骨造が適しているともいわれています。よって、都市部などでの狭小土地でも、法的に問題がなければ高さのある住居を建てることも可能となります。柱や梁が太く壁が厚いことから、防音性にも優れています。賃貸住宅やマンションでは、騒音トラブルは大きな問題のひとつですので、防音性能に優れているのは、賃貸住宅ではメリットになりえます。
ただし、重量鉄骨は軽量鉄骨よりも建築コストは高くなります。また、建物全体も軽量鉄骨よりも重くなるため、地盤補強が必要になるケースもあり、あくまで、長期的な賃貸住宅経営として収益バランスを見ながら柔軟に判断することが大切です。

対して軽量鉄骨は、鉄骨部材の薄さから、3階建てまでの低層住宅の建築に適しているといわれていますが、最近では技術の向上により軽量鉄骨の3階建て賃貸住宅も多く見かけるようになりました。
軽量鉄骨は、施工性にも優れ、重量鉄骨に比べると建築コストも低いのが大きなメリットといえます。建築コストは木造よりも高くなりますが、重量鉄骨や鉄筋コンクリートよりは低く、デザイン性の高い賃貸住宅を建てることができれば、ご入居者の評価も得られやすく、バランスの良い構造だといえるでしょう。賃料を少しでも抑えたい若い世代や、デザインを重視するご入居者を対象とした賃貸住宅であれば、検討する余地がありそうです。工期が短いのも特徴で、賃貸住宅経営の視点からも、早期の入居によって収益化も早くなります。

あくまで経営計画に即した工法を選ぶ

工法上の機能的な違いを認識した上で、どのような工法を選ぶのかは、あくまで経営計画や、賃貸住宅を建てる目的、考え方によります。例えば、賃貸住宅は大切な資産であり、資産価値を保ちたいと考えるならば、できる限り資産価値の下がりにくい重量鉄骨造を選択することも考えられますし、建築コストを抑えて、できる限り賃料を低く提供したいと考えるならば、建築コストの低い工法を選択すべきでしょう。 昨今の軽量鉄骨による賃貸住宅は、断熱性、耐震性、防音性も向上していますので、長期的な賃貸住宅経営の視点から検討することが重要です。

減価償却を考慮した選択を

賃貸住宅の工法を決めるにあたって、押さえておきたいのが、減価償却の年数です。「構造の種類」によって、「法定耐用年数」が異なるため、経費として減価償却費を計上できる金額や期間の長さが違うからです。軽量鉄骨と重量鉄骨の法定耐用年数と、定額法償却率は、以下の通りです。

構造 耐用年数 定額法償却率
鉄骨造 軽量鉄骨造 3mm以下 19年 0.053%
3mm超4mm以下 27年 0.038%
4mm超 34年 0.030%
重量鉄骨造 34年 0.030%

3ミリ以下の軽量鉄骨の場合、減価償却費を計上できる年数が19年となりますので、比較的短期で減価償却費の計上が終わってしまいます。一方で重量鉄骨造の場合、法定耐用年数は34年と長くなっています。そのため、長期的に減価償却費の計上が可能であり、長期的な経営に向いているといえます。なお、法定耐用年数を過ぎると減価償却費の計上ができなくなり、利益が増加してしまいますので、所得税などの税負担が増えてしまうことには注意が必要です。

賃貸住宅経営を行う際には、木造、鉄筋コンクリートを含む、どの工法で建てるかという問題は、長期的な収益に直結する問題です。また、建築会社やハウスメーカーによっても得意な工法がありますので、専門家に相談しながら、自身の賃貸住宅経営計画に沿った工法を選ぶようにしましょう。

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