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コラム vol.552
  • 日本社会のこれから

「中小企業白書・小規模企業白書」に見る、事業承継における2025年問題

公開日:2025/05/30

日本の中小企業の経営者は高齢者が多く、このままの状態が続けば、中小企業の事業承継問題に大きな影響を与えると言われています。

2025年に日本の団塊の世代(戦後のベビーブーム〔1947年~1949年〕に生まれた世代)が75歳以上となることは「2025年問題」と呼ばれ、高齢化の進行は、医療・介護・年金といった社会保障分野の負担の増加が危惧されています。そして、75歳というのは、経営者の引退時期とも重なり、中小企業の事業承継問題が深刻化すると予測されています。

従業員や役員などの人材が豊富な大企業と異なり、中小企業の事業承継においては、後継者となる人材が不足しているケースが多く、このまま何も対策を行わずにいると、事業を承継することなく、廃業を余儀なくされる企業が増加し、日本経済に深刻な影響を及ぼす可能性があります。貴重な経営資源や技術、ノウハウを次世代に引き継げなければ、地域経済にも打撃を与える可能性があります。

2025年4月、中小企業庁より、「中小企業白書・小規模企業白書」が公表されました。その中で、「倒産・休廃業・事業承継」に関する調査データも掲載され、中小企業の後継者不在率は減少傾向にあり、経営者の年齢が60歳以上である企業においても、後継者不足の解消が進んでいること、また、一方で、中小企業の経営者年齢は、平準化が進むものの依然高い水準。60歳以上の経営者が、全体の過半数を占めていることなどが紹介されました。

依然として高い経営者年齢

日本の中小企業における経営者年齢の分布を見ると、2000年から2015年にかけては、経営者年齢のピークが徐々に高齢化し、2020年以降は、平準化の傾向となっているのがわかります。しかし、75歳以上の経営者は、増加傾向を継続しており、60歳以上の経営者が過半数を占めています。

図1:中小企業における経営者年齢の分布

中小企業庁「令和6年度 中小企業の動向資料」より(株)帝国データバンク「企業概要ファイル」再編加工

増加する休廃業・解散件数

下図は、休廃業・解散件数の推移を見たものです。休廃業・解散件数は2019年から2022年までは減少傾向にあったものの、2023年に増加傾向に転じ、2024年には約7万件となっています。ここへきて、高齢の経営者を持つ企業の休廃業・解散が増加しています。

図2:休廃業・解散件数の推移

中小企業庁「令和6年度 中小企業の動向資料」より(株)帝国データバンク「全国企業『休廃業・解散』動向調査」

(株)帝国データバンクが調査・保有する企業データベースのほか、各種法人データベースを基に集計したもの。休廃業・解散とは、倒産(法的整理)によるものを除き、特段の手続きを取らずに企業活動が停止した状態を確認(休廃)、若しくは商業登記等で解散(ただし「みなし解散」を除く)を確認できたものを指す。

下図は、休廃業・解散について経営者年齢の推移を見たものです。これを見ると、「70代」「80代以上」の割合が2016年と比較して増加している傾向にあり、「ピーク年齢」「平均年齢」も共に上昇傾向となっています(「ピーク年齢」とは、各年の休廃業・解散企業における経営者年齢のうち、最も多かった経営者の年齢を指します)。

また、経営者年齢が50代以下の場合の休廃業・解散企業は、合計でも20%以下であり、休廃業・解散の企業は、高齢者の経営者のケースが大半であることがわかります。

図3:休廃業・解散企業の経営者年齢の推移

中小企業庁「令和6年度 中小企業の動向資料」より(株)帝国データバンク「全国企業『休廃業・解散』動向調査」

(注)(株)帝国データバンクが調査・保有する企業データベースのほか、各種法人データベースを基に集計したもの。休廃業・解散とは、倒産(法的整理)によるものを除き、特段の手続きを取らずに企業活動が停止した状態を確認(休廃業)、若しくは商業登記等で解散(ただし「みなし解散」を除く)を確認できたものを指す。

後継者不在率は減少

中小企業における後継者不在率の推移を、経営者の年代別に見ると、「全体」として後継者不在率は減少傾向となっています。経営者の年齢が60代以上の企業においても、減少傾向となっていますので、国の支援策やM&Aの増加によって、少なくとも後継者問題に関しては、ある程度の進展が見られます。中でも、60代の経営者の場合、2011年には半数を超えていたのが、2024年には38.1%と改善しており、後継者問題に早期から取り組む経営者が増加していることの表れだといえるでしょう。

図4:中小企業における後継者不在率の推移(経営者の年代別)

中小企業庁「令和6年度 中小企業の動向資料」より(株)帝国データバンク「企業概要ファイル」、「信用調査報告書」再編加工

2025年以降も続く事業承継問題

少子高齢化が進行し、後継者人材の確保が厳しくなる中、中小企業では高齢の経営者がまだまだ少なくありません。2024年に倒産・廃業が増加していることからも、この傾向は続くと予測されます。特に地方では、若年層の流出が激しく、後継者どころか従業員すら確保できない状況があります。

中小企業庁の試算によれば、2025年までに70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となります。うち約半数が後継者未定となれば、127万(日本企業全体の1/3)が後継者未定の中小企業ということになり、多くの中小企業で後継者不在の問題に直面することになります。

事業承継を成功させるためには、後継者を見つけることが第一歩となりますが、何よりも、将来に向けた経営計画が不可欠です。M&Aを検討するにしても、後継者を探すにしても、その計画に対して共感を得ることができなければ、事業承継はうまく進展しないでしょう。しかし、実際に経営計画を作成している経営者は少ないとの調査結果もあり、今後の事業承継の進展に不安も残ります。

2025年問題に限らず、多くの中小企業にとって事業承継は、避けて通れない課題です。貴重な経営資源を継続させるためにも、経営者自身が早い段階から準備を進めることが求められます。

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