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コラム vol.554
  • 土地活用税務コラム

賃貸住宅経営戦略は、将来の世帯の状況予測が不可欠

公開日:2025/06/30

将来の個人としての資産形成や、法人として新たな事業展開や財務状況の改善のために、不動産活用や賃貸住宅経営を検討されている方は少なくないと思いますが、不動産価格の上昇や急激な少子高齢化による人口状況の変化は、不動産賃貸経営にとっても大きな影響を与えるため、確かな経営戦略を持って取り組むことがより重要になっています。

賃貸住宅経営を行う際は、周辺地域に住む方々の属性やニーズを捉え、ご入居対象者やその暮らし方を想定しながら、間取りや設備、周辺賃貸住宅との差異化など、いわゆる「賃貸住宅経営戦略」を策定していくことになります。
例えば、重要な戦略のひとつとなる間取りや設備を考える場合、以下のような情報とそれに対する意思決定が必要となります。

  • (1)「人口(推移)」「年齢構成」「周辺施設」などのエリア属性
  • (2)対象としたいご入居者
  • (3)ご入居者の想定ニーズ
  • (4)周辺施設との差異化

単純な単身者とファミリー層で検討しない

間取りを検討する場合、単純に「単身者」と「ファミリー層」というくくりで考えてしまうと、結果的にニーズにマッチしなかったということが起こりえます。
次のグラフを見ていただくとよくわかりますが、まず家族世帯では、夫婦と子の世帯は、大きく減少を続け、かつて標準とされていた両親と子どもという家族像は、現在でも5世帯中1世帯しかないことになります。家族世帯としては、微増もしくは微減の状態となっているのが「夫婦のみ世帯」と「ひとり親世帯」です。合わせると約3割存在しており、もはや家族1世帯の人数は二人、もしくは3名のほうが主流になっているといっても過言ではありません。 つまり、一言で「家族」といっても、かつてのイメージで捉えてしまうと、賃貸住宅経営戦略の方向性を大きく間違えてしまう可能性もあります。 賃貸住宅を行う予定の地域の状況を正確につかむことが何よりも重要となりそうです。

図1:世帯構成の推移と見通し

出典:厚生労働省 総務省統計局「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)(令和6年推計)

将来の世帯数状況を考える

状況を把握することができれば、想定するご入居者にあった間取りや設備を提供することになりますが、さらに考えなければならないことは、将来に向けて、こうした世帯状況がどう変化していくかを把握することです。
グラフでも明らかなように、世帯数において増加しているのは、単身世帯、高齢者単身世帯です。単身世帯は、すでに4割近くなっており、今後も増加が見込まれています。2050年で44.3%に達する見込みとなっています。(全世帯数約5,570万世帯:2020年) 単身世帯といっても、内容はさまざまです。令和5年版 厚生労働白書に、男女別の年齢階級別単独世帯数の推移が掲載されています。
1990年は、男性においては、単身者といえば「20~29歳」でした。女性も「20~29歳」の単身者が最も多い世代となっていました。ところが、2040年の推計では、男性においては「60~69歳」が最も多くなり、「20~29歳」「50~59歳」「70~79歳」がほとんど同数で並ぶ予測がされています。女性においては、「80歳以上」が最も多くなり、「20~29歳」の単身者はむしろ少数世代となっています。2040年といっても、わずか15年後です。 賃貸住宅経営は、長期にわたって行うものです。わずか15年の間にこれほどの世帯年齢に変化があるとすれば、大きな影響を与えるのは間違いありません。

図2

前出のグラフを見ても、一般世帯総数に占める65歳以上の単独世帯の割合は、令和2(2020)年の13.2%から一貫して上昇し、令和32(2050)年には20.6%へと7.4ポイント上昇すると予測されています。つまり、5世帯に1世帯は、65歳以上の単独世帯となるわけです。

こうした年齢の推移を見ると、単身者が多いと若い層を想定して「1K、1DK」、家族向けだから若い夫婦と小さい子どもを想定して「2LDK、3LDK」と安易に決めることは避けなければならないでしょう。
特に、将来「高齢者」の単身世帯が増加することは、これから賃貸住宅経営を行おうと考える人にとっては、注視しなければならないデータだといえます。

ただし、賃貸住宅経営は事業であり、ほかとの差異化がポイントであることには間違いありません。
単身者向けであっても、家で過ごす時間を大切にしたい、自炊をしっかり行いたいというニーズに応えた1DK、収納スペースの充実、生活空間の質を考慮した2DK。また、子どもの成長段階に応じて使い分けが可能なリビングの大きな2LDK、プライベートタイムを守りたいカップルのための2LDK、自分の趣味や作業に没頭できるプライベートな空間のある3LDKなど、ご入居者の生活提案が可能な賃貸住宅を建設するもの、戦略のひとつといえるでしょう。

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