大和ハウス工業株式会社

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コラム vol.569
  • 不動産市況を読み解く

増え続けるインバウンド観光客とアパートメントホテル需要

公開日:2025/09/30

2023年以降は訪日外国人観光客が急増しており、ホテル・宿泊市場は活況が続いています。日本政府観光局によれば、2025年7月の訪日外客数は343.7万人(前年同月比+4.4%)で7月としては過去最高を記録しました。また、国内観光客の動きも活発で、夏休み期間である8月は、連日多くの宿泊施設で高稼働率となっているようです。

訪日外客数4000万人越えは確実

前述の訪日外客数の2025年1~7月の合計数は2495万人で前年比+18.4%、このペースでいけば年間の訪日外国観光客数は4300万人を超えそうです。かつて日本政府が目標を掲げた、「2020年に訪日外国人数4000万人」が、いよいよ2025年には達成されそうです。特に今年は、EXPO 2025 大阪・関西万博開催(4月13日~10月13日まで)や沖縄での大型新テーマパーク開業もあって増加が予想されていましたが、昨年(2024年)1年間の訪日外客数3687万人を大きく超えそうな状況です(ちなみにコロナ禍前の2019年は3188万人でした)。
国別にみれば、近隣のアジア各国の方々が多い状況は変わりませんが、近年は経済成長が著しい東南アジアの国々やインドから訪れる方も増えています。また、欧米各国をみれば、関係の深いアメリカは以前から多かったのですが、他の欧州主要国からの訪問者も増えています。

新規上場リートは多人数向けホテルのリート

2025年8月13日に5銘柄目(全JREIT銘柄は58)のホテル特化型リートである霞が関ホテル投資法人が上昇しました。JREITでは4年ぶりとなる新規上場となります。霞が関ホテルリートは、ホテル特化型リートですが、物件ポートフォリオは、「多人数向けのホテル」15棟で、旗艦物件は開業したばかりの「seven × seven 石垣」ですが、リゾート型だけでなく都市型の「多人数向けホテル」も含まれています。
これまで日本では少なかった「多人数向けホテル」が中心ということで、訪日外国人が急増している状況、好調なインバウンド需要の波に乗ることが期待されるJREIT銘柄です。

多人数、長期滞在のニーズに対応するアパートメントホテル

訪日外国人観光客が増える中、家族などグループで日本を訪れる外国人観光客に求められるのが、大人数で宿泊することができる施設です。これまでの日本のホテルは2~3人が定員の部屋が多く、大家族やグループで宿泊する際には2~3室確保する必要があり、結果割高感がありました。こうした背景もあり、ホテルに限らず、大人数で泊まれる宿泊施設の需要は急拡大しています。
その解決策のひとつとなる宿泊施設が「アパートメントホテル」と呼ばれるものです。主に都市部に立地するアパートメントホテルは、長期滞在を前提として、自宅のように暮らせるホテルで、キッチンや洗濯スペースが設置されており、一般的な部屋は家族やグループ4~6人で過ごす想定の部屋となっています。急増するインバウンド観光客がメインターゲットのアパートメントホテルですが、この場合数日から1週間という期間の利用が多くなります。
また、国内のビジネスでの利用もあり、例えば研修期間中や長期出張の時など、1週間から数か月の利用となるようです。
都市部にある一般的なホテルの多くは、基本的に1~2人利用で、数日程度の宿泊を前提としている部屋が多くなっていますので「住まい」と「ホテル」の中間に位置するアパートメントホテルは、こうしたニーズに対応したものといえます。

土地活用としてのアパートメントホテル

土地活用としてのホテルでは宿泊特化型ホテル(≒ビジネスホテル)がありますが、ホテルでの高い収益性は、想定内の高稼働率と高単価が実現できて成り立ちますから、例えば2020~2022年ごろの新型コロナウイルスの影響が大きく稼働率が極めて低い時期などは、苦戦することになります。
その一方で、アパートメントホテルは、通常はホテルとして運営されていますが、建物や各部屋の室内においては一般的な賃貸住宅ですので、コロナ禍のような稼働率が大きく低下するような出来事が起こった場合には、賃貸住宅としての運用を行うこともできます。土地活用としての観点では、ホテル運営のリスクをヘッジする可能性を持ちつつ、ホテル運営の高収益性を狙うことができる投資ということができます。賃貸住宅は、入居者にとっては「自宅」ですから、入居率や賃料は、さまざまな事象があっても大きな影響は受けません。
建物的には宿泊特化ホテルというよりも賃貸住宅に近く、そのため宿泊特化ホテルよりも狭い敷地で建築できる可能性があり、立地も駅至近という必要もないでしょう。
大和ハウス工業でも多くの建築を行っていますが、観光客が変わらず増加することになれば、これから増える土地活用のひとつになる可能性があるかもしれません。

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