国も推進し、注目を集めるモーダルシフト。
なぜ普及が進まないのか
2024/08/26
2024/08/26
近年、物流業界ではモーダルシフトの必要性が言われてきました。モーダルシフトとは貨物輸送に使用する乗り物をトラックから、鉄道や船舶へと変更することを指しますが、特に2024年問題と言われるドライバーの労働力不足が現実となった今、改めて注目を集めています。
国は、2023年10月の「物流革新緊急パッケージ」で、鉄道コンテナ貨物と内航海運(フェリー、RORO船※等)について、「輸送量・輸送分担率を今後10年程度で倍増」の目標を掲げ、同年11月には2030年代前半に鉄道コンテナ貨物が年間3600万トン(輸送分担率0.8%)、内航海運が1億トン(2.6%)という数値目標を示しました。
※貨物を積んだトラックやシャーシ(荷台)ごと輸送する船舶
日本貨物鉄道株式会社(以下、JR貨物)は、2022年に開催された「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」の中間とりまとめでの内容を踏まえ、2020年度実績の168億トンキロに対して、2025年度のコンテナ輸送量を196億トンキロに引き上げることを必達目標、209億トンキロをチャレンジ目標として設定しました。
モーダルシフトを行うことで、環境やコスト面で多くのメリットがあると言われていますが、最大のポイントは、何といってもトラックドライバーの人材不足の解消につながると期待されていることです。
日本の物流産業はトラック輸送への依存が大きく、トラックドライバーの人材不足は喫緊の課題です。公益社団法人鉄道貨物協会の報告書によれば、2028年度には約27万8千人ものドライバーが不足するとも予測されており、問題は深刻です。
国土交通省は、貨物列車1編成(26両編成 運転士1人)で10トントラック最大65台(運転手65人)分の輸送が可能だとしており、対して大型トラックの積載量は通常で20トン、最大で25トンまでと法律で定められています。単純計算でも貨物列車1編成は、大型トラック26台分に相当するわけです。
また、一般的な内航貨物船(国内用)では、499総トンの船舶が使用されており、労働人数においても、船舶1隻あたり5人の船員で済みます。これらの要素から、貨物列車、内航貨物船にシフトすることができれば、人員不足解消にもつながるとしています。
現在の物流業界においては、物流コストの増加も大きな問題のひとつです。日本銀行が公表している「企業向けサービス価格指数(2024年4月速報)」によると、2015年に比べて道路貨物輸送の価格指数は約15.4%上昇しています。総平均の上昇幅が11.9%であるのに対し、トラック輸送ではコスト上昇幅が大きくなっています。鉄道を利用した場合、条件によって異なりますが、350kmを超える長距離輸送ではコスト削減になり、また鉄道や船舶は、需要期による運賃の変動リスクが少なく、輸送コストが安定しているとも言われています。
トラック輸送には環境負荷の問題もあります。国土交通省によると、2022年度における日本の二酸化炭素排出量(10億3,700万トン)のうち、運輸部門からの排出量(1億9,180万トン)は18.5%を占めています。自動車全体では運輸部門の85.8%(日本全体の15.9%)、うち、旅客自動車が運輸部門の47.8%(日本全体の8.8%)、貨物自動車が運輸部門の38.0%(日本全体の7.0%)を排出しています。
運輸部門における二酸化炭素排出量

出典:国土交通省より作成
また、貨物輸送における輸送機関別の二酸化炭素の「輸送量当たりの二酸化炭素の排出量(貨物)」は、貨物車の割合が約95%となっており、船舶と鉄道を合わせても、5%に満たない数値となっています(国土交通省HPより)。二酸化炭素の排出量という点から考えると、船舶や鉄道が望ましい輸送方法であるといえます。
大和ハウス工業においても、モーダルシフトの取り組みを行っています。
2022年5月に、大和ハウス工業とJR貨物の共同事業として、札幌市に「DPL札幌レールゲート」を竣工しました。本物流施設は、札幌貨物ターミナル駅構内に立地しているため、入居企業は同施設から直に鉄道コンテナによる全国各地への輸送が可能となるので、トラック輸送からのモーダルシフトを行う際にも、荷物の積み替え等の作業が軽減できます。
また、2024年4月に共同事業第2弾として、京葉臨海鉄道臨海本線「千葉貨物」駅と連携が可能な距離に位置する「DPL千葉レールゲート」を着工しました。
国土交通省は、様々な利点があるとして以前からモーダルシフトを推し進めていますが、国内貨物の輸送量(トンキロ)を輸送手段別にみると、自動車が約50%、内航海運が約40%、鉄道は5%程度に過ぎないのが現状のようです。モーダルシフトが進まないのは、どのような原因があるのでしょうか。
国内貨物輸送量の推移(トンキロベース)

出典:国土交通省総合政策局情報政策本部「自動車輸送統計年報」「鉄道輸送統計年報」「内航船舶輸送統計年報」「航空輸送統計年報」より作成
モーダルシフトでは、トラック輸送に比べて輸送時間(リードタイム)が一般的に増加します。例えば、船舶では東京~北海道間、東京~福岡間の輸送は短くても3日間必要です。また、鉄道や船舶への積み卸しなどでトラック輸送に比べて貨物の積み替え作業が増えます。近年、短いリードタイムが好まれる傾向もあり、鉄道や船舶による輸送が敬遠される一因となっています。
モーダルシフトを行う場合、利用範囲が限られる傾向があります。自社の輸送ルートの近くに、すでに確立された鉄道や船舶のルートがあれば活用することができますが、ルートがない場合、コストや時間が増加してしまうこともあります。
更なる普及に向けて解決が必要な課題が存在するモーダルシフトではありますが、労働力不足の問題や二酸化炭素の排出量の観点から見れば、モーダルシフトの普及は将来に向けて必要不可欠なテーマの一つです。
民間においては、前述した貨物ターミナルと連携した物流施設の開発をはじめとして、様々なアイデアの活用やDXの推進によって一つずつ課題を解決できる可能性があります。
一方で、リードタイムの問題にしても、国は「物流革新に向けた政策パッケージ」の中で、「ゆとりを持った配達日時の指定等」を促したり、荷主経営層の意識改革・行動変容を促す規制的措置の導入を進めたりしています。
国においても法律や制度面によるモーダルシフト促進策が進むことで、モーダルシフトの状況に合わせた、環境にも優しい物流手段として選ばれるケースが増えるかもしれません。
このように官民が課題解決に向けてそれぞれの役割を果たしていくことが、モーダルシフトの普及を促進し、サステイナブルな物流システムの実現に向けた第一歩になるのではないでしょうか。

DPL札幌レールゲート

DPL千葉レールゲート
完成予想図/設計図書を基に描き起こしたもので、実際とは多少異なる場合があります。
ご相談・お問い合わせ
マルチテナント型物流センターへの入居から、
専用センター建設、
その他、
物流に関する課題など、お気軽にご相談ください。
物流センターへの入居 / 専用センターの建設 /
事業用地への新規進出