くらしの定期便
暮らしを楽しく彩るアイデアをお届けします
LiveStyle Design くらしの定期便
『くらし たのし』で連載中の旅企画
「特別な時間デザイン」より、
本誌に掲載しきれなかった情報をお届け。
『くらし たのし』編集室目線で、
取材時のエピソードなどをご紹介します。
アーケードの中ほどに位置するnoma-noma
取材1件目は、松山市の中心、大街道商店街の一角にあるジュースバー&ギフトショップ「noma-noma」へ。スタッフが豊富なメニューや店内の果物に見とれている間に、お店の方がジュースをご用意してくださいました。「『100%の生ジュース』にこだわり、作り置きせずに注文を受けてから果汁を搾ります。種類にもよりますが、1杯あたり3個~5個くらいの柑橘を使っているんですよ」と店長の佐藤さん。ぜいたくな1杯ですが、値段は300円~500円とお手頃。撮影後に試飲させていただくと、心地よい酸味と甘味が体に染み渡ります。noma-nomaのコンセプト「ココロもカラダもハッピーになれるお店」の通り、飲むと幸せな気分になりました。
旬の柑橘(かんきつ)を使った生ジュース。種類によって、見た目や味も異なります
ゼリーなどの加工品のラインアップも豊富
佐藤さんによると、お店を訪れる客層は「老若男女、さまざまなお客さまが来てくださいます。地元の方と観光の方は半々くらいです」とのこと。生ジュースを飲んで気に入った柑橘を購入する方、1日に何回も来店していろいろなメニューを楽しむ方など、多くの方が来店されるようです。愛媛県産の柑橘を使用したゼリーなどの加工品も販売しており、一年を通しておいしい柑橘を味わえます。
店内外にフレッシュな香りが広がるnoma-noma。店前を通りかかった方から「香水ショップかと思った」と言われたこともあるそう。柑橘の爽やかな香りや味わいは、旅の始まりにも、休憩にも、締めにもぴったりです。
今治タオル 本店外観
異なるタオルメーカーによる白いタオルが陳列された棚。 柔らかさや微妙な肌触りの違いを比較できます
続いて訪れたのは今治市。この地でタオル産業の発展を担ってきた今治タオルは、2007年に「今治タオルブランド」を確立し、安心・安全・高品質な製品を作り続けています。
今治タオル 本店は、「今治タオルファクトリー」をコンセプトに2017年にリニューアルオープン。明るく清潔感あふれる店内には各タオルメーカーによる今治タオルブランドの商品がずらりと並んでおり、手触りを確かめながら、お気に入りのタオルを探すことができます。
そもそも今治がタオル産地として発展した理由は、水に恵まれた土地にあります。今治の中心を流れる蒼社(そうじゃ)川の伏流水が、糸を染めるのに適した軟水なのだそう。織物産地としての歴史は江戸時代にまでさかのぼり、近代化が進む中でタオル作りも広がっていきました。
【タオルソムリエに聞いた、タオルを長く使い続けるポイント】
明治初期、日本で最初にタオルを織り始めた「ヒゴ織機」(復元)
ヒゴ(竹)を入れて織り進め、ヒゴを抜くとパイルが形成される仕組
機械上部から張られた柄出し装置に目が奪われる、近代のタオル織機。機械下部に見えるグリーンとオレンジの部分が、織り上がったばかりのタオル
今治タオル 本店に隣接する今治タオル LABでは、さまざまなコンテンツを通して、今治タオルの歴史や価値を学べます。
スタッフは織機体験にチャレンジ。手足を使って、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を交錯させ、パイルを形成しながら織り上げていきます。1cmを織るのも想像以上に時間を要すことを知り、織物職人の根気強く丁寧なものづくりへの姿勢を実感しました。
LABの中心にあるのは近代のタオル織機。1mを約10分で織るといい、機械化によっていかに効率が上がったかが分かります。大きな音とともに、複雑な模様の入ったタオルが織り上がりました。
直径はなんと6m!実際に大型コンテナ運搬船に搭載されたものと同型のスクリューオブジェ
移動中に突如現れたオブジェに、カメラマンが思わずシャッターを切りました。海運業・造船業などが盛んな海事都市として知られる今治市らしいオブジェです。市の目抜き通り「広小路」に面したロケーションに、市内大手造船会社の寄贈により設置されました。SNSでは映えスポットとしても人気です。
白い塗り壁と藍色ののれんが印象的
庭の緑を眺めながら、ゆっくりと食事を楽しめます
店内のあちこちに、庭で摘んだというかわいらしい草花が。店主によるインテリアのコーディネートも必見です
メインのチキンソテーに添えられた姫レモンを絞って。絞った手を嗅ぐと、山椒に似たスパイシーな香りがします
田畑を抜けた先に立つ古民家カフェ、な野屋へお邪魔しました。出迎えてくれたのは店主の中原さんご夫妻です。古い建物が醸し出す独特の風情に浸りつつ、さっそく週替わりランチを注文しました。
料理に使われる食材は、中原さんが育てた米や野菜をはじめ、地元で採れたものが中心です。「家庭でも食べる一般的な野菜を使っているので、作り手や調理方法が異なるだけで味がこんなに違うんだ、と驚かれるお客さまもいらっしゃいます」と中原さん。お客さまに安心・安全なものを提供したいという思いで、食材には強いこだわりをお持ちのようです。週替わりのメニューを求めて、足しげく通う方も多いのだとか。
「店内は自分たちで改修を行いました。元々の雰囲気を残しつつ、少し整えた程度ですが」と語る中原さん。素材の魅力を見抜き、それを引き立たせるように手を加える。提供されている料理にも通ずる、中原さんの価値観をよく表した言葉のように感じました。
築150年の歴史を感じさせる風格あるたたずまい
建物に入ると広い土間が出迎えます
そんな中原さんは、新たに人が集う場づくりに挑戦されています。な野屋から車で数分の距離にある築150年以上の古民家をリノベーション。共助のコミュニティスペースやイベント用のレンタルスペース、貸し切りの宿泊施設として活用されるそうです。どこか懐かしく、それでいて特別感があり、日常と非日常が地続きにあることを感じられる、唯一無二の空間です。
キッチンや洗面台も、古民家の雰囲気に合わせた意匠
和洋折衷のデザインが印象的な照明器具。他にもこだわりのペンダントライトやブラケットライトがたくさん
「この土地でできることを追求して米作りやカフェの経営に取り組んできましたが、また少し違った形で、自分の価値観や理念を伝えることができればと思い、挑戦することにしました」
中原さんの言葉に耳を傾けながら、スタッフ一同、見どころの多い建物に魅了されていました。