トップ > PREMIST LIFE > 2015年1月号【趣】伯爵家の礼儀作法 前編

PREMIST LIFE

趣 Interest 活き活きと豊かに輝き続けるために

伯爵家の礼儀作法 前編 相手を大切に思う心から生まれる、ふるまいの美学。
体と手をなめらかに連動させる座礼
向きを変える足元は控えめに
正しく美しい姿勢で心を伝える
正しく美しい姿勢で心を伝える
向きを変える足元は控えめに
体と手をなめらかに連動させる座礼
動画でわかる美しいふるまい「箸のとり方」

ひとつのしぐさで、まわりの空気が清らかになる…。気品に満ちた人には、そんな美しさがあります。相手と自分にとって心地よい時間をつくる礼儀作法は、大人の女性としてぜひ身につけておきたいもの。700年以上の歴史をもち、先代の伯爵から一般の人にも伝えられるようになった小笠原流礼法を、宗家である小笠原敬承斎(おがさわら・けいしょうさい)さんに伺います。

  • すべての動作の基本、自然で美しい立ち姿。
  • 「礼三息」はていねいに、ゆとりをもって。
  • 現代にも通じる、周りを察する心、思いやり。

すべての動作の基本、自然で美しい立ち姿。すべての動作の基本、自然で美しい立ち姿。

「胴はただ 常に立ちたる姿にて 退(の)かず掛(かか)らず 反(そ)らず屈(かが)まず」──敬承斎さんが、小笠原流礼法に伝わる教え歌で立ち姿について語ってくださいました。
「つまり、自然にまっすぐ立つということです。多くの方が陥りやすいのは、無理に背筋をのばす、胸をはる、一点を凝視することなどですが、すべて相手に緊張感を与えてしまいます。礼儀作法とは堅苦しいものではなく、相手を思う心を形に表したものなのです」
会った瞬間から、思いやりを伝えられる。それが正しい姿勢であることを、敬承斎さんの立ち姿が教えてくれます。

「礼三息」はていねいに、 ゆとりをもって。「礼三息」はていねいに、 ゆとりをもって。

感謝の気持ちを表すお辞儀。小笠原流では正座から行う「座礼(ざれい)」、立って行う「立礼(りつれい)」、いずれの場合も、息を吸いながら体を傾け、動きを止めて息を吐き、吸いながら体を起こす「礼三息(れいさんそく)」という息遣いが伝えられています。
「呼吸に合わせてひとつひとつをていねいに行うことで、相手を思う心を表現できます。さらに、お辞儀を行い、上体をもとに戻すと同時に歩き出すなどの『ながら動作』をしないことも大切です。このように最後までゆとりをもって相手に心を残すことを、『残心(ざんしん)』と申します」
立礼をしていただくと、まるで流れる水のようになめらか。そして心を柔らかく満たすような余韻が残ります。

現代にも通じる、周りを察する心、思いやり。現代にも通じる、周りを察する心、思いやり。

礼儀作法とは見せるための美しさでも自分を引き立てる動作でもなく、相手と自分にとって心地よい時間をつくるもの。小笠原流の神髄を伺うほどに、礼儀作法本来の意味が心にしみていきます。
「周りに不快感を与えない、危険を防ぐためにも自分が占める幅を控えめにするという普遍的な『礼儀』が先にあり、それが合理的で無駄のない、流れるような美しいふるまいである『作法』で表されます。室町時代から受け継がれる小笠原流礼法の伝書を読み解くことにより、すべて現代のマナーに置き換えることができるのです」
つまり礼儀作法とは、改まったときだけのものではないことがわかります。次回は家族など身近な人にこそ慎みが大切であること、日常で身につけたい作法をお伺いしていきます。

動画でわかる美しいふるまい動画でわかる美しいふるまい

「箸の扱いをみれば育った環境がわかる」と言われるほど、その人自身を映す箸の使い方。和食の基本の作法として身につけたい「箸のとり方」を動画で解説します。

箸のとり方
「持ち方」だけでなく、手にとるときから意識をしておきたい基本の作法
①右手で箸の中ほどを持ちます。
②左手で下から支えます。
③右手を箸にそってすべらせます。
④箸の下に右手をくぐらせて持ち、左手をはずします。

監修/取材協力:小笠原流礼法宗家本部監修/取材協力:小笠原流礼法宗家本部

http://www.ogasawararyu-reihou.com/

小笠原敬承斎(おがさわら・けいしょうさい)
小笠原流礼法宗家。前宗家の小笠原流忠統(小笠原流惣領家第32世、元伯爵)の実姉・小笠原日英尼公の真孫。東京都生まれ。聖心女子学院卒業後、イギリスに留学。副宗家を経て、1996年に就任。700年の歴史を誇る武家の礼法・小笠原流を現代のマナーに生かすべく、普及に務める。門下の指導にあたるとともに、各地での講演、研修、執筆活動に従事。『伯爵家のしきたり』(幻冬舎)、『日本人なら知っておきたい 美しい10の作法』(中経出版)など著書多数。

撮影場所:壺中庵撮影場所:壺中庵