
コクのある白味噌が野菜とシカ、鴨、鶏の味わいとからんで、冬にはぜひいただきたい山賊鍋。
「くまげら」では、十勝岳が噴火した際にきれいな川底に沈んでいた味わいのある埋もれ木をテーブルやカウンターに使っている。他にも倉本聰さん主宰の富良野塾の生徒が運んできた畑の石壁や、ビールのホップを飾った天井など、店主森本さんが自ら設計した内装が目を惹く。そこでいただけるのは、四季折々の旬の食材を使ったものばかり。例えばイカなら函館、カニならオホーツクなど北海道の中心で得られるさまざまな魚介、お年寄りが山でとってくるふきのとうや行者にんにくなど地元の山菜……。富良野市場の仲買人でもある店主にとって、富良野は食材に事欠かない。
今回オススメしたい山賊鍋は近隣の山に生息するエゾシカや鴨、鶏の3種の肉と、ネギや白菜など雪の下で甘みを増した富良野の野菜を白味噌仕立てにした野趣あふれる料理。5つの蔵でつくっているオリジナルの日本酒とともにいただけば、体も心もほっこりと温かくなる。
食材も自然も文化もつまった富良野という土地をお店に体現した店主の心意気を楽しめる老舗である。
雪かぶる八線川の景色を、あたたかい室内から眺められる、贅沢な木のぬくもりがある店内。
昭和初期に建てられた北海道の納屋を、大工の指導のもと澤井さんご夫婦でリノベーションした「caféゴリョウ&ゴリョウゲストハウス」。世界で出会ったおいしい料理を富良野産の食材でというコンセプトのもと、カフェでは、ゴリョウサンドと日替わりごはん、日替わりスイーツなどを出している。ゴリョウサンドは、肉を一切使わず、できるだけ自家菜園でとれたものを使用する。今回いただいたものは、自家栽培したビーツのポタージュ、道産牛乳で自家製したヨーグルトに自家栽培ハスカップのジャム、それと自家栽培ローズマリーのマリネと自家栽培大豆のパテを挟んだ道産全粒粉カンパーニュのサンドイッチ2種。素材そのものの美味しさが直接伝わってくるメニューだ。さらにはコーヒーも自家焙煎している。
カフェとゲストハウスを利用する冬のお客様は、スキーか、何もせずのんびりしているかのどちらかだそう。澤井さんご夫婦は「スキー帰りにはあったかいコーヒーを飲んで、ご飯をゆっくり食べて帰ってほしい。宿泊すれば、運がよければダイヤモンドダストや、目の前を流れる八線川の木が樹氷になってキラキラしているのが見られる。日本じゃないような冬景色を体感してほしい」と穏やかに話をしてくれた。
ふらのワインを合わせて楽しめる鹿肉のコース料理。
「富良野でも年配の人は、昔食べたシカ肉をまずくて臭いものだと思っています。でもここに来て食べてもらうと、美味しいと感動してくれるんです」と嬉しそうに言うのは、フレンチA la Campagne の清野さんと永易さん。合わせるのは、ふらのワインがほとんどだ。富良野の野菜に惚れ込む2人は、ワンプレートでは表現できない、さまざまな調理で野菜が食べられるコース料理をつくる。上富良野の豚と、ふらの和牛、富良野のエゾシカのコースに加えて、スペシャルコースがある。夜9時のバータイムも好評で、使い勝手がいいと地元のリピーターの多い店だ。
シックな店内でいただいたのは、「鹿肉のコース料理」。自家製のマリネサーモンと6種類の富良野野菜のオードブルや富良野農家のビーツのポタージュ、道産アオゾイのポワレふらの白ワインとグレープフルーツのソース、エゾシカのロティふらの赤ワインのソースだ。「フラノ寶亭留」のオーベルジュで2番手として厨房に入っていた永易さんが「繊細な彩りの盛りつけというものを学びました」というだけあって、一皿一皿が美しい。
富良野は観光地だが、実はあまりグルメ店は多くない。清野さんは「富良野で食事ができる場の存在は大事です。富良野を楽しめる一つのアトラクションとして、街とともに歩んでいきたい」と話してくれた。
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