
サラキ岬チューリップ園。小さいながらも威容を誇る咸臨丸のモニュメント。(写真提供:木古内町観光協会)
アイヌ語を由来にもつ木古内は、南部を津軽海峡、北部を山岳に囲まれた町だ。「特別豪雪地帯」に指定されているほど冬は雪深い極寒の地でもある。3月26日を前にして、北海道新幹線の北海道側最初の駅である「木古内」駅は“北の大地の始発駅”のキャッチフレーズとともに知られつつある。
もともと木古内町は函館と松前・江差の中心に位置し、江戸時代から交通の要衝の地だった。幕末の戊辰戦争では、榎本武揚や土方歳三が拠点とし、壮絶な戦いの場にもなった。その動乱期に軍艦や輸送船としての役を担った勝海舟ゆかりの遣米船咸臨丸は、木古内町サラキ岬の沖合で沈没したといわれる。そのため咸臨丸の姿を模した約5分の1のモニュメントや記念碑などがサラキ岬にはあり、幕末好きには魅力的なスポットとなっている。さらに咸臨丸がオランダで造船されたことに因んで、毎年春にはオランダの国花である約60種5万球ものチューリップがサラキ岬チューリップ園に咲き誇る。
また、木古内町に200年近く受け継がれてきた祭事も見逃せない。それが津軽海峡に面した浜で1月に行われる「寒中みそぎ祭り」だ。行修者(ぎょうしゅうしゃ)と呼ばれる若者4人が寒中みそぎで佐女川神社の円空作と伝わるご神体を清める神事である。
木古内町は山がちで人口も約4500人(2016年2月末日現在)。新幹線が停車する市町村の人口規模としては下から2番目の小さな町だ。しかし、ここはたくさんの自然と歴史が眠っている。
道の駅 「みそぎの郷 きこない」の内観。
「木古内町観光交流センター」という正式名称をもつ道の駅「みそぎの郷 きこない」は、2016年1月にオープンしたばかり。木古内町を含む北海道南西部9町の魅力を発信する場だ。観光コンシェルジュがいるので、旅の情報集めにももってこい。各地域の特産品はもちろん、テイクアウトやレストランも充実している。
特筆したいのはご当地グルメだ。木古内特産の赤毛和牛「はこだて和牛」を使ったコロッケや、道産小麦を使った総菜パンコーナー「コッペん道士」のパンなど、訪れたら口にしてみたい逸品が揃う。「はこだて和牛コロッケ」は、さくさくした衣の食感とほくほくした道産じゃがいもに和牛挽き肉のしっかりした味がベストッマッチ。焼きたての「ぱくぱく塩パン」は表面がカリカリ、みそぎ浜沖の海水からつくられた「みそぎの塩」とバターの絶妙なコンビがやみつきになる。地元の人も買いにくる人気ぶりだ。テイクアウトでも施設のイートインコーナーでもいただける。
また、レストラン「どうなんde’s Ocuda Spirits」は、山形県の知る人ぞ知る「アル・ケッチァーノ」の奥田政行シェフのもとで修行した飯田シェフが腕を振るうイタリアン。道南各地の食材を使って、素材本来のおいしさをひきだすメニューを揃えている。
そば店ならではの味つけが特徴的な「はこだて和牛弁当」。
肉本来の味を楽しめる「はこだて和牛」は、木古内町の特産物の一つだ。年間約200頭しか生産されない。黒毛和牛に比べて脂が少なく、赤みの美味しさが評価されて、全国の「あか毛和牛認定農場枝肉共励会」で最高賞に選ばれた。その「はこだて和牛」を堪能できるのが、そばの「瑠瞳」だ。
2008年に開店した「瑠瞳」は、自家製粉のそばがいただける本格派の蕎麦処だ。食事どきには地元の常連で賑わう。しかしメニューには「はこだて和牛」を使ったビーフシチューなども豊富にある。最近は地元の名物を気軽に食べられるようにと工夫された、「はこだて和牛」をふんだんに使った弁当やバーガーが新名物だ。とくに弁当は甘辛い照り焼き風の味つけと、そばだれをアレンジした醤油出汁風という二つの味つけを楽しめる趣向の凝らされた逸品だ。店主の飯田さんは「そば店であることの特徴を味つけに生かした、うちでしか味わえないオリジナルです」と胸を張る。冷めても食べやすい味つけになっており、新幹線の車中や木古内のイベント時にもテイクアウトすれば楽しめる。道の駅での販売も決まっているメニューなので、木古内を代表する美味としてチェックしたい。
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