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  • 土地活用法律コラム

コラム vol.055

(第1回)司法書士が語る
「土地活用で知っておきたい司法のルール」

執筆:司法書士 星野大記
公開日:2014/08/01

はじめまして、司法書士の星野大記と申します。
今回から、全6回シリーズで、司法書士の実務経験を踏まえた視点から、土地活用に役立つコラムを担当させていただきますので、よろしくお願いします。

先ず第1回目は、「受益者連続型信託」についてです。

事例1

AはBと結婚しているが子には恵まれなかった。
Aには兄Cがおり、兄Cとその妻との間には長男Dと長女Eがいる。
一方、Bには姉Fがおり、姉Fとその夫との間には長女Gと次女Hがいる。

Aは兄Cと共に亡父から不動産と預貯金を相続した。
Aは自分が先に死亡したらBが生涯を終えるまでは生活の保障をしてあげたいが、Bが死亡したあとに自分の親から相続した資産が義姉Fまたはその子GHに承継されてしまうことに違和感をもっている。

事例2

IはJと結婚し長女Kと次女Lを授かった。
その後、Iは事業に成功したがJと離婚し、20歳年下のMと再婚した。
IとMとの間には子は無い。

一方、Mには弟Nがおり、Nとその妻との間には長男Oがいる。
Iは事業を売却した資金を元に、現在は賃貸住宅経営をしている。
Iは自分が先に死亡したら再婚相手であるMが生涯を終えるまでは生活の保障をしてあげたいが、Mが死亡したあとMの再婚相手や義弟Nまたはその子Oに自分の築いた資産が承継されてしまうことを避け、できれば実子であるKとLに承継させたいと思っている。

さっそく2つの事例を見ていただきましたが、いかがでしょうか?

それぞれの事例の場合、AまたはIが何ら対策を取らずに法定相続となり、その後2次相続が発生した場合の相続分はピンクの矢印のように移転します。
実際これに類似した事例は多く、資産が不動産の場合、相続人による共有状態となり、複雑な関係で意思形成がまとまらずに、いわゆる「争族」となってしまうであろうことは想像していただけると思います。

さて、AとIは自分が先に死亡した場合にそれぞれ現在の配偶者が死亡するまでは生活を保障してあげたいと考えています。 どのような方法が考えられるでしょうか?
具体的な生前の対策としては、先ずは「贈与」や「遺言」が考えられると思います。
しかし彼らは、(1)自分が死亡し、さらにその後その妻が死亡したときに、(2)自分が現在把握しうる資産を、(3)自分が選ぶ人に承継させたい、と考えています。
「贈与」や「遺言」では、「自分が死亡するまでに生じた条件」までは対応可能なのですが、「自分が死亡したあとに生じた条件」には対応できないとされています(争いがあり通説による)。
そこで「受益者連続型信託」という方法があります。
平成18年12月に信託法が改正され(平成19年9月施行)、創設された制度です。

ここで、信託(信託契約による信託)について簡単に説明しておきたいと思います。
信託とは、財産の所有者(委託者)がその所有権(信託財産)を契約により第三者(受託者)に託し、その信託財産から得られる利益を得る権利(受益権)を付与される人(受益者)を契約で定め、受託者は受益者のために信託財産を管理・運用・処分するというものです。

なお、このとき最初の受益者(当初受益者)を委託者自身とすることで、信託財産の所有権を管理・運用・処分する地位と利益を享受する財産的地位とに分離することができるといえます。

例えば、信託財産が収益不動産であれば、委託者が受託者と当初受益者を委託者とする信託契約を締結したとすると、不動産を管理し、賃貸人を探したり、条件がよければ売却して現金化し、また別の物件に投資したりするのが受託者となり、そこから得られる賃貸収入や売却によるキャピタルゲインを得る権利は委託者たる当初受益者ということになります。

では受益者連続型信託とはどのようなものなのかについてご説明いたします。

信託法第91条
(受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託の特例)

受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から30年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益者が消滅するまでの間、その効力を有する。

と定められています。

つまり、信託契約を締結してから30年後までの受益者を定めることができるということになります。

例えば、V⇒W⇒X⇒Y⇒Zと受益権を移転させる信託契約を締結したとすると、信託契約締結後30年経過した時の受益者がXだとすると、X⇒Yまでの受益権の移転は有効となります。しかし、この場合Yが受益権を取得した時点で信託の終了事由に該当することになり、Y⇒Zは無効となります。

本件事例に当てはめると、Aは受託者と次のような信託契約を締結することになります。
当初受益者をAとする信託契約を締結し、Aが死亡した場合、法定相続分割合3/4の受益権を先ずはBに移転させ、次にBが死亡した場合、甥Dと姪Eに移転させるという趣旨の契約になります。またIの場合は、Iが死亡した場合、1/2の受益権をMに移転させ、Mが死亡した場合、長女Kと次女Lに移転させるという趣旨の契約となります。

この受益者連続型信託は、一般的にまだあまり知られていないのが現状です。
もっとも税制との論点も未確定な要素があるので、相続税と信託に精通した税理士の先生と一緒に協議しながら進めていく必要があると考えますが、「争族」を回避できる有効な生前対策の一つとして利用される機会が増えていくものと思われます。

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