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コラム vol.405
  • 土地活用税務コラム

安易な遺産分割をしないためにも、将来どうするかを考えておく

公開日:2022/07/28

POINT!

・遺産分割はやり直しが利きにくく、後々大きな問題になることがある

・遺産分割の方法には、現物分割、代償分割、換価分割がある

・共有不動産はそのままにせず、「その後どうするかを考える」ことが必要

・安易な遺産分割にしないため、最初に「相続税を支払う」ことを考える

相続した不動産の分割をどうするか

かつてのように一つの家が土地を守っていくのであれば、その土地はその家のままで続くわけですから、相続はどんなやり方でも良かったでしょう。
ところが、土地をいったん分割し、それぞれの土地が独立してしまうと、住みたい、利用したい、売りたいなど、利用目的も異なってきます。
「不動産の共有は避けたほうが良い」とよくいわれますが、遺産分割でも同じです。そもそも遺産分割するまでは共有だったわけで、共有した状態のまま分割協議をしても、単なる先延ばしにしかなりません。しかし、例えば、広い土地の奥に母屋があり、手前には長男が家を建てていて、一部は駐車場というように、一つの土地がいろいろな利用状態になっていたら分割は難しいでしょう。

  • 遺産分割の方法
  • (1)現物分割
    現金、預金、土地、家屋、株式などの相続財産を現物のまま分割するもので、遺産分割では最も一般的な方法。現金、預金を除き、現物の価値が異なるため、公平性に欠ける場合がある。
  • (2)代償分割
    相続人のうちの1人または数人が相続財産を現物で取得し、代わりに、ほかの相続人に対して一定の代償財産を交付する方法。相続財産が被相続人の自宅の土地建物のみというように、財産が分割しにくい場合に使われることが多い。
  • (3)換価分割
    現金以外の相続財産を売却して現金化し、相続人の間で分配する方法。売却するための手続きに時間がかかることがある。土地を売却する場合、相続税のほかに譲渡所得税が課税される。

安易な遺産分割をした結果、相続税が支払えなくなったケース

相続財産を現物で分割するのが難しいケースでは、特定の相続人が不動産を相続し、ほかの相続人に代償金を支払う代償分割が有効な手段となる場合があります。

しかし、代償分割は、代償金を支払う相続人に大きな負担がかかります。現物を相続した相続人自身の財産から代償金を支払うことになるため、相続人に代償金の支払能力がない場合は適しません。また、代償金の金額が決まらず、分割協議がまとまらない可能性もあります。
次のケースのように、現物を相続した長男が相続税を支払えなくなった例もあります。

  • 相続人は長男と次男の計2人。大きな事業をしていたので、代償分割によって、財産はすべて長男が引き継いだ。長男は所有する土地を売却して次男に代償金を支払 おうとしたものの土地が売れず、支払えないままに。さらに長男は相続税も納付することができなかったため、連帯納付義務※によって、次男に長男分の税金を支払う義務が発生。長男は財産のすべてを受け取って、税金は納めず、次男は代償財産を受け取っていないのに、自分の税金を納めたうえで、さらに長男分も支払うという事態になってしまった。
  • ※連帯納付義務
    連帯納付義務とは、各相続人がお互いに連帯して相続税を納付しなければならないという相続税法のルール。兄弟2人が相続して両者に相続税がかかったとして、長男が納付できない場合、次男は相続した財産を引き当てにして、長男分の相続税を納付しなければならない。

不動産相続は、最初に「どうしていきたいか」を考える

不動産の相続で大事なことは「どうしていきたいか」ということです。相続で目指すところはさまざまで、代々続く地主の家で「土地は守っていく」という発想がある一方で、「散り散りになっても構わない。皆がそれぞれ好きにやったらいい」という考えもあります。
特に、被相続人の方の「どうしたいのか」「どう考えるか」が相続を進めるカギとなります。方法はケースバイケースですが、「どうしたいのか」を叶えるにはどのような策があるかを知っておくために、まずは被相続人が元気なうちから税理士に相談することをお勧めします。このとき、相続税額を知るだけではなく、相続で「どうしていきたいか」という本質を考えることが大切です。

共有不動産はそのままにしない

不動産を共有するとさまざまな問題が起こります。まず、不動産を自分1人で所有していれば、自分だけの判断で売却することができますが、共有の場合、不動産を売却するときには、共有名義になっている名義人全員の署名・捺印が必要になります。全員の承諾がなければ、売却することはできません。
共有という所有状態にするとどのようなデメリットがあるか、知っておくことが必要です。
いったん共有で取得して、後で分割するケースも多く見られます。共有物を分割すると、登記費用や流通に関する税は必要になりますが、譲渡所得税はかからないので、税務対策になるということもあるのでしょう。
共有で登記せざるを得なかった場合は、そのままにしておかない、そこで終わらないようにすることが大事です。いつでも分割できるからと考えて共有の状態で残してしまうのは、分割できていないのと一緒です。最終的にどうするかが決まっていれば、無理に相続税対策を行うこともありません。「その後どうするかを考える」ことが、土地のためにもご家族のためにも必要なのです。

相続にかかるお金をどう用意するか

相続税を「どうやって支払うか」は、特に不動産を多く所有している方や、会社のオーナーで自社株が多い方にとって非常に大きな問題になります。準備をせずに相続となってしまった場合、まずは資産状況を確認します。支払える資金があるのか、場合によっては借り入れも含めて検討します。相続税は現金での納付が一般的ですが、物納という方法もあります。しかし、現在は物納の申請、特に土地での申請は非常に少なくなっています。物納は準備が必要です。まずは境界確定をしていなければならず、この確定をするだけでも時間がかかります。また、市場の時価が上がってしまい、相続税評価額のほうが相当低くなる状況では、土地の物納はしたくないものです。
売ったほうが高ければ、売って支払うことが多いでしょう。延納制度もありますが、分割払いで利子が発生します。現金を用意するひとつの方法として、生命保険を使うこともあります。亡くなったときにまとまった金額が支払われるように設定しておくことで、相続税に充てることができます。

最初に相続税を支払うことを考える

紹介したケースのように、安易な遺産分割により、取り返しのつかない事態になってしまうことがあります。遺産分割は、いったん有効として成立してしまうと、後でやり直しが利きにくく、やり直しできた場合でも課税されることがあります。さらに、税務上遺産分割の解除は難しく、ほとんど認められていないのが実情です。遺産分割は後々に影響を及ぼす大きな問題になりかねません。「遺産をもらえればいい」「税金が安ければいい」ということばかりを考えて、後々「こんなはずではなかった」とならないよう、安易な遺産分割はするべきではありません。
安易な遺産分割にしないためには、最初に「相続税を支払う」ことを考えます。相続税は、税額の多い・少ない以前に、相続税を払えるか・払えないかであり、まずは払える状況にすることが一番大事です。税額を少なくすることが前にきてしまう気持ちも理解できますが、「相続にかかるお金をどう用意するか」を考えながら進めるほうが将来的に良い結果となるでしょう。

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