
令和7年度税制改正相続・贈与税制(1)結婚・子育て費用の贈与税非課税制度
公開日:2025/03/31
2024年12月に「令和7年度税制改正大綱」が公表されました。現在、わが国では少子化が進展しており、2024年に国内で生まれた子どもの数は、全国でおよそ72万人、9年連続で過去最少を更新しました。
その中で、少子化問題に対応するため、子・孫の結婚・妊娠・出産・育児を支援する為の贈与税の非課税措置の適用期間が令和9年3月31日まで2年間延長されました。
「扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」又は「教育費」の贈与を受けた場合の贈与税について
(1)結婚費用
婚姻に当たって、子が親から婚姻後の生活を営むために、家具、寝具、家電製品等の通常の日常生活を営むのに必要な家具什器等の贈与を受けた場合、又はそれらの購入費用に充てるために金銭の贈与を受け、その全額を家具什器等の購入費用に充てた場合等には、贈与税の課税対象となりません。
なお、贈与を受けた金銭が預貯金となっている場合、株式や家屋の購入費用に充てられた場合等のように、その生活費(家具什器等の購入費用)に充てられなかった部分については、贈与税の課税対象となります。
(2)結婚式の披露宴の費用
結婚式・披露宴の費用を誰(子〔新郎・新婦〕、その親〔両家〕)が負担するかは、その結婚式・披露宴の内容、招待客との関係・人数や地域の慣習などによって様々であると考えられますが、それらの事情に応じて、本来費用を負担すべき者それぞれが、その費用を分担している場合には、そもそも贈与には当たらないことから、贈与税の課税対象となりません。
(3)出産費用
扶養義務者相互間において生活費に充てるために贈与を受けた場合に、贈与税の課税対象とならない「生活費」とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用(教育費を除く)をいい、治療費、養育費その他これらに準ずるもの(保険金又は損害賠償金により補てんされる部分の金額を除く)も含まれます。したがって、出産に要する費用で、検査・検診代、分娩・入院費に充てるために贈与を受けた場合には、これらについては治療費に準ずるものであることから(保険等により補てんされる部分を除き)、贈与税の課税対象となりません。また、新生児のための寝具、産着等ベビー用品の購入費に充てるため金銭の贈与を受けた場合についても、生まれてくる 子どもが通常の日常生活を営むのに必要なものの購入費に充てられている部分については、贈与税の課税対象となりません。
表1
(1)受贈者 | 18歳以上50歳未満の者 |
---|---|
(2)贈与者 | 受贈者の直系尊属 |
(3)拠出方法 | 贈与者が金銭等を拠出し、金融機関(信託会社・信託銀行・銀行・金融商品取引者等)に信託等として資金管理契約を締結 |
(4)非課税限度額 | 1,000万円(うち結婚費用は300万円を限度) |
(5)期間 | 平成27年4月1日から令和7年3月31日までの拠出 改正案:令和9年3月31日 |
(6)申告 | 金融機関を通じて非課税申告書を提出 |
結婚・子育て資金の範囲
(1)結婚費用
- ①受贈者の婚姻の日の1年前の日以後に支払われる結婚に際して支出する婚礼(結婚披露を含む。)に要する費用
- ②家屋の賃貸借契約で婚姻の日の1年前から婚姻の日以後1年後までの日に契約したものに基づき契約締結日3年経過日までに支払われる家賃・敷金等の住居に要する費用(賃貸借契約が2以上ある場合には、最初の賃貸借契約の締結の日から3年経過日まで)
- ③婚姻の日の1年前から婚姻の日以後1年経過日までに居住用家屋に転居するための費用
表2
結婚費用 | 認められる費用 | (対象外) | |
---|---|---|---|
1 | 婚礼 | 挙式や披露宴開催に必要な費用 会場費、衣装代、飲食代、引き出物代、写真・映像代、演出代、装飾代、招待状などのペーパーアイテム、人件費など |
婚活費用、結納費用、婚約・結婚指輪代、エステ代、挙式等に出席するための交通費や宿泊費、新婚旅行代 |
2 | 新居 | 結婚を機に新たに物件を賃借する際に必要な費用 賃料、更新後の賃料、敷金、共益費、礼金・保証金等、仲介手数料、契約更新料 |
受贈者以外が契約の賃借物件の賃料等、駐車場のみを借りる場合の駐車場代、地代、光熱費、家具・家電等の設備購入費 |
3 | 引越 | 結婚を機に新たな物件に転居するための引越費用 | 配偶者転居の費用、転居に伴う不要品の処分費用 |
(2)子育て費用
- ①不妊治療費及び妊娠中に要する費用
- ②出産の日以後1年を経過する日までに支払われる当該出産に係る分べん費
- ③小学校就学前の子の医療費
- ④保育所、幼稚園に支払う保育料
表3
子育て費用 | 認められる費用 | (対象外) | |
---|---|---|---|
1 | 不妊 | 人工授精、体外受精、顕微授精、この他一般的な不妊治療-にかかる費用 | 治療のための~交通費、宿泊費 |
2 | 妊婦 | 母子健康法に基づく妊婦健診費用 | 健診のための~交通費、宿泊費 |
3 | 出産 | 分娩費(正常・流産・死産を問わず)、入院費、新生児管理保育料、検査・薬剤料、処置・手当料、参加医療補償制度掛金、入院中の食事代等 | 出産する病院等に行くための~交通費、宿泊費 |
4 | 産後 | (産後1年以内) デイケア型の訪問の心身ケア・育児サポート、宿泊型の心身・母体・乳児ケア、育児指導、カウンセリング等 |
産後ケアのための~交通費、宿泊費 |
5 | 医療 | 子の医療費 治療費、予防接種代、乳幼児健診に要する費用、処方箋に基づく医療品代 |
処方箋に基づかない~医療品代、交通費 |
6 | 育児 | (小学校就学前の子に限定) 入園料、ベビーシッター費用を含む保育料、施設設備費、入園試験の検定料、在園証明手数料、行事参加費用、食事提供費用、施設利用料、事業に伴う本人負担金、その他育児に伴って必要な費用 |
行事参加費用における保護者分 |
結婚・子育て資金管理契約の終了
次に掲げる事由に該当した場合には、結婚・子育て資金管理契約は終了します。
- ①受贈者が50歳に達した場合
- ②受贈者が死亡した場合
- ③信託財産等の価額が零となった場合において終了の合意があったとき
残額の取扱い
上記①又は③に掲げる事由に該当したことにより結婚・子育て資金管理契約が終了した場合において非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額(管理残額)があるときは、これらの事由に該当した日に管理残額の贈与があったものとして受贈者に贈与税が課税されます。
なお、上記②に掲げる事由に該当したことにより結婚・子育て資金管理契約が終了した場合には、非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した管理残額については、贈与税は課されません。