
令和7年度税制改正相続・贈与税制(2)「特例事業承継税制」「相続税の物納制度」「相続登記等の登録免許税」に関する税制改正
公開日:2025/03/31
2024年12月に「令和7年度税制改正大綱」が公表され、相続・贈与税制に関する改正も行われました。ここでは、以下の内容を紹介します。
- (1)特例事業承継税制の見直し
- (2)相続税の物納制度における物納許可限度額の計算の見直し
- (3)相続登記等の登録免許税の免除に関する特例措置の延長
特例事業承継税制の見直し
法人版事業承継税制(特例措置)の適用期限は2027(令和9)年12月末であり、個人版事業承継税制の適用期限は2028(令和10)年12月末ですが、いずれの税制においても後継者要件として、その自社株式又は事業用資産の贈与の日まで3年以上継続して、役員等であること又は事業用資産に係る事業等に従事していたことが求められていることから、事業承継の準備を行えていなかった事業者にとっては、本税制が適用できなくなる実質的な期限が、適用期限よりも先に到来することとなります。 また、コロナ禍や物価高騰等の急激な経営環境の変化により、事業承継の具体的な検討が遅れている事業者がいることも想定されるため、適用期限が到来するまでの間、本税制を最大限に活用できるよう、役員就任要件等の見直しが行われました。
表1
後継者要件 | 改正前 | 改正後 |
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役員就任要件(法人版:特例措置) | 贈与の日まで3年以上継続して役員等であること | 贈与の直前において役員等であること |
事業従事要件(個人版) | 贈与の日まで3年以上継続して事業等に従事していたこと | 贈与の直前において事業等に従事していたこと |
適用時期:2025(令和7)年1月1日以後の贈与より適用
相続税の物納制度における物納許可限度額の計算の見直し
相続税の物納制度における物納許可限度額について、計算の基礎となる延納年数は納期限等における申請者の平均余命の年数を上限とする等の見直しが行われます。これによって、一定の年齢以上の相続人等が物納申請する場合の物納許可限度額が増加します。
現行制度
国税は原則として金銭で納付する必要がありますが、相続税においては、延納という制度を使っても金銭で納付することが困難な場合に限り、一定の相続財産による納付(物納)ができます。 ※納税者の申請により、その納付を困難とする金額を限度とする
- 物納許可限度額:納付すべき相続税額納期限まで又は納付すべき日に金銭で納付することが可能な金額
- 延納によって納付することができる金額:年間の納付資力×最長延納年数+(おおむね1年以内に見込まれる臨時的な収入おおむね1年以内に見込まれる臨時的な支出+A)
※A=申請者及び生計を一にする配偶者その他の親族の3か月分の生活費+申請者の事業の継続のために当面(1か月分)必要な運転資金(経費等)の額
表2
区分 | 延納期間(最高) |
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不動産等の割合が75%以上の場合 |
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10年 |
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20年 |
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20年 |
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不動産等の割合が50%以上75%未満の場合 |
④動産等に係る相続税額 |
10年 |
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15年 |
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20年 |
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不動産等の割合が50%未満の場合 |
⑦一般の延納相続税額 (⑧ ⑨および⑩を除く) | 5年 |
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5年 |
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5年 |
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⑩森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額 |
5年 |
相続登記等の登録免許税の免除に関する特例措置の延長
相続による土地の所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置について、その適用期限が2年延長されます。
相続により土地を取得した個人が登記を受ける前に死亡した場合の登録免許税の免税措置
個人が相続により土地の所有権を取得した場合、その個人がその相続による土地の所有権の移転登記を受ける前に死亡したときは、その死亡した個人をその土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税が課されないとされています。
表3
登記の種類 | 本則税率 | 特例措置 |
---|---|---|
相続による土地の所有権の移転登記 | 0.4% | 免税 |
不動産の価額が100万円以下の土地に係る登録免許税の免税措置
土地について所有権の保存登記又は相続による所有権の移転登記を受ける場合において、その登記にかかる登録免許税の課税標準となる不動産の価額が100万円以下であるときは、その土地の所有権の保存登記又はその土地の相続による所有権の移転登記については、登録免許税が課さないとされています。
表4
登記の種類 | 本則税率 | 特例措置 |
---|---|---|
土地の所有権の保存登記 | 0.4% | 免税 |
相続による土地の所有権の移転登記 |