
生前贈与の際に考慮すべき、贈与税が非課税となるケースとは(1)住宅取得の際の贈与税の非課税特例
公開日:2025/05/02
個人から財産をもらったときは、贈与税の課税対象となりますが、父母や祖父母など直系尊属から住宅取得等のための資金の贈与を受けた場合で、一定の要件を満たすときには、「住宅取得等資金の非課税」と「相続時精算課税選択の特例」の適用を受けることができます。この二つは重複して適用を受けることができます。
住宅取得等資金の非課税
令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に父母や祖父母など直系尊属から住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等のための金銭の贈与を受けた場合において、一定の要件を満たすときは、贈与を受けた方ごとに500万円(省エネ等住宅※1の場合は1000万円)まで贈与税が非課税となります。
図1
「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」等のあらまし(国税庁)を基に作成
非課税限度額
受贈者ごとの非課税限度額は、受贈者が新非課税制度の適用を受けようとする住宅用の家屋の種類に応じた次の表の金額となります。なお、既に新非課税制度の適用を受けて贈与税が非課税となった金額がある場合には、その金額を控除した残額が非課税限度額となります。
図2
※1 「省エネ等住宅」とは、家屋の区分に応じ、省エネルギー性能、耐震性能又はバリアフリー性能のいずれかの基準(省エネ等基準)に適合する住宅用の家屋であることを証されたものをいいます。
「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」等のあらまし(国税庁)を基に作成
受贈者等の要件
1 | 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(贈与者は受贈者の直系尊属)であること。 (注)配偶者の父母(又は祖父母)は直系尊属には当たりませんが、養子縁組をしている場合は直系尊属に当たります。 |
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2 | 贈与を受けた年の1月1日において18歳以上であること。 |
3 | 贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下(新築等をした住宅用の家屋の床面積が40m2以上50m2未満である場合は1,000万円以下)であること。 |
4 | 平成21年分から令和5年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」の適用を受けたことがないこと。 |
5 | 自己の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から住宅用の家屋を取得したものではないこと、又はこれらの人との請負契約等により新築若しくは増改築等をしたものではないこと。 |
6 | 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること。 (注)受贈者が「住宅用の家屋」を所有する(共有持分を有する場合も含まれる)ことにならない場合は、この新非課税制度の適用を受けることはできません。 |
7 | 贈与を受けた時に、日本国内に住所を有し、かつ、日本国籍を有していること。 (注)贈与を受けた時に上記の要件に該当しない場合であっても、一定の要件の下に、対象となる場合があります。 |
8 | 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること又は同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること。 (注)贈与を受けた年の翌年12月31日までにその家屋に居住していないときは、原則としてこの新非課税制度の適用を受けることはできませんので、修正申告が必要となります。 |
住宅用の家屋の新築もしくは取得、増改築等の要件
住宅取得等資金贈与の非課税特例を適用するためには、住宅用の家屋に関する要件も満たす必要があります。また、いずれも「日本国内にある住宅用の家屋」であることが前提となります。
新築又は取得の場合の要件
1 | 新築又は取得をした住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が40m2以上240m2以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。 |
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2 | 取得をした住宅用の家屋が次のいずれかに該当するものであること。
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増改築等の場合の要件
1 | 増改築等をした後の住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が40m2以上240m2以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。 |
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2 | 増改築等の工事が、自己が所有し、かつ、居住している家屋に対して行われたもので、一定の工事に該当することについて証明されたものであること。 |
3 | 増改築等に係る工事に要した費用の額が100万円以上であること。また、増改築等の工事に要した費用の額の2分の1以上が、自己の居住の用に供される部分の工事に要したものであること。 |
贈与税の申告
住宅取得等資金贈与の非課税特例を利用するためには、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告が必要です。非課税限度額以下の場合でも、申告しなければ住宅取得等資金贈与の非課税特例は適用されませんので、注意が必要です。
住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税選択の特例
相続時精算課税とは、60歳以上の直系尊属(父母や祖父母)から、18歳以上の子ども(もしくは孫)に対して、生前贈与をした際に選択できる贈与税の制度ですが、住宅取得等資金贈与の非課税特例は、この相続時精算課税の特別控除や基礎控除と併用が可能(※2)ですので、最大3,610万円(1,000万円+2,500万円+110万円)まで贈与税が非課税となります。ただし、そのうち2500万円は、相続時に相続財産として持ち戻して計算されます。
※2 併用する場合、直系尊属が60歳未満でも適用可能
図3
「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」等のあらまし(国税庁)を基に作成
受贈者等の要件
1 | 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(子や孫など)である推定相続人であること又は贈与を受けた時に贈与者の孫であること。 |
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2 | 「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」の「受贈者等の要件」の2、5、6、7及び8の要件のいずれにも該当すること。 |
住宅取得等資金贈与の非課税特例の適用をお考えの方は、税理士に相談してください。
参照:「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」等のあらまし(国税庁)