
生前贈与の際に考慮すべき、贈与税が非課税となるケースとは(2)生活・結婚・子育て・教育に関する費用
公開日:2025/05/30
生活費や教育費として通常必要なものは非課税
夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるものは、贈与税はかかりません。
生活費は、その人にとって通常の日常生活に必要な費用をいい、治療費、養育費その他子育てに関する費用などを含みます。また、教育費とは、学費や教材費、文具費などをいいます。これらに関しては、暦年課税の非課税枠である110万を超えた場合でも、必要範囲内であれば課税対象となりません。
なお、贈与税がかからない財産は、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られますので、生活費や教育費の名目で贈与を受けたとしても、預金したり、株式や不動産などの買入資金に充てたりしている場合には贈与税がかかることになります。
父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度
平成27年4月1日から令和9年3月31日までの間に、18歳以上50歳未満の方(以下「受贈者」)が、結婚・子育て資金に充てるため、金融機関等との一定の契約に基づき※1、受贈者の父母や祖父母など(以下「贈与者」)から「信託受益権を取得した場合」「書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合」又は「書面による贈与により取得した金銭等で、証券会社等で有価証券を購入した場合」には、その信託受益権又は金銭等の価額のうち1000万円までの金額に相当する部分の価額については、贈与税が非課税となります※2。
- ※1 受贈者は金融機関等の営業所等に結婚・子育て資金非課税申告書の提出等が必要です。
- ※2 平成31年4月1日以後に取得した信託受益権又は金銭等について、その取得した日の属する年の前年分の受贈者の所得税に係る合計所得金額が1000万円を超える場合には、この非課税制度の適用を受けることができません。
また、結婚・子育て資金口座に係る契約が終了した場合には、「非課税拠出額」※3から結婚・子育て資金支出額を控除した残額があるときは、その残額はその契約終了時に贈与があったこととされます。
- ※3 「非課税拠出額」とは、結婚・子育て資金非課税申告書又は追加結婚・子育て資金非課税申告書に、この非課税制度の適用を受けるものとして記載された金額の合計額(1000万円を限度)をいいます。
結婚・子育て資金とは
- (1)結婚に際して支払う次のような金銭(限度額300万円)をいいます。
・挙式費用、衣装代等の婚礼(結婚披露)費用(婚姻の日の1年前の日以後に支払われるもの)
・家賃、敷金等の新居費用、転居費用(一定の期間内に支払われるもの) - (2)妊娠、出産及び育児に要する次のような金銭をいいます。
・不妊治療・妊婦健診に要する費用
・分べん費等・産後ケアに要する費用
・子の医療費、幼稚園・保育所等の保育料(ベビーシッター代を含む)など
図1:結婚・子育て資金に関する口座の開設から終了まで
「父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」(国税庁)を基に作成
結婚・子育て資金口座の開設等
この非課税制度の適用を受けるためには、結婚・子育て資金口座の開設等を行った上で、結婚・子育て資金非課税申告書をその口座の開設等を行った金融機関等の営業所等に、信託や預入などをする日までに提出等をしなければなりません。この申告書は、金融機関等の営業所等が受理した日に受贈者の納税地の所轄税務署長に提出されたものとみなされます。
結婚・子育て資金口座の取扱いの有無等については、各金融機関等の営業所等にお尋ねください。
結婚・子育て資金口座からの払い出しおよび結婚・子育て資金の支払い
結婚・子育て資金口座からの払出し及び結婚・子育て資金の支払を行った場合には、受贈者が結婚・子育て資金口座の開設等の時に選択した結婚・子育て資金口座の払出方法に応じ、その支払に充てた金銭に係る領収書などその支払の事実を証する書類を、提出期限までにその金融機関等の営業所等に提出する必要があります。
結婚・子育て資金口座に係る契約の終了
結婚・子育て資金口座に係る契約は、次に該当したときに終了します。
- (1)受贈者が50歳に達したこと
- (2)口座の残高が0(ゼロ)になり、かつ、その口座に係る契約を終了させる合意があったこと
- (3)受贈者が死亡したこと
教育資金一括贈与の非課税制度で1,500万円まで非課税
平成25年4月1日から令和8年3月31日までの間に、30歳未満の方が、教育資金に充てるため、金融機関等との一定の契約に基づき、受贈者の祖父母などから「信託受益権を取得した場合」「書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合」、または「書面による贈与により取得した金銭等で有価証券を購入した場合」には、その信託受益権等の価額のうち1500万円までの金額に相当する部分の価額については、受贈者が金融機関等の営業所等に教育資金非課税申告書の提出等をすることにより、贈与税が非課税となります。
この制度を利用して預けられた教育資金のうち、入学金や授業料、学用品の購入費などの支払いにあたる部分に関しては、贈与税がかかりませんが、教育資金を学習塾や習い事など学校以外への支払いに充てた部分に関しては、非課税となる金額は500万円が上限となります。
教育資金口座に係る契約が終了した場合、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額があるときは、その残額はその契約終了時に贈与があったこととされます。
図2:教育資金に関する口座の開設から終了まで
「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」(国税庁)を基に作成
この記事は、国税庁「父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」をもとに作成しました。