三重県の南部、和歌山県との県境に近い南牟婁郡において、4つの介護事業所を運営されているのが、平成15年10月設立の特定非営利活動法人(NPO)つどいさまです。豊富な介護現場の経験に基づいた『地域の高齢者が本当に求めているサービス』を実践すべく、第1号の事業所となった「つどい」では、①介護保険事業(居宅介護・訪問介護・訪問看護・通所介護) ②障がい者総合支援法に基づく居宅介護・重度訪問介護・生活介護 ③福祉有償運送事業 ④介護保険対象外の軽微な生活支援を定額で請け負う「有償ボランティア事業」 ⑤宿泊事業 と、主に在宅ケアに重点を置いた5つのサービス・事業を展開されてきました。
その後、地域や自治体、そして利用者さまからの要望に応えるカタチで、宅老所(デイサービス)、ショートステイ、小規模多機能型居宅介護、サービス付き高齢者向け住宅と、さまざまなサービスの展開と充実を図られ、いまや地域にとってなくてはならない介護事業者として、多くの方々からの支持を集めておられます。
つどいさまでは、かねてより同法人が小規模多機能型居宅介護、デイサービス、サービス付き高齢者向け住宅(特定施設入居者生活介護指定)を展開されている「おろし複合福祉施設つどい」から東側にあたる海岸近くのエリアで、在宅ケアサービスのニーズが高まっていることから、新たな事業所の開設を検討されていました。そんな折、同じエリアを対象とした自治体の「学童保育所」の公募情報を入手。上野理事長は、これを好機にとらえ計画の方向性を転換されました。それは、国が推進する『障がい者と高齢者が共生できる社会づくりのための共生型サービス』の考えを一歩進め、高齢者、障がい者だけでなく、子どもも含めた誰でも受け入れることのできるサービス。周辺地域ではそれまで例のなかった新たなカタチの施設です。
こうして、つどいさまにとって5番目の事業所となる「あたわ共生施設つどい」の開設計画は具体化していきました。核となるのは、定員29名の小規模多機能型居宅介護(1日あたり通い15名・宿泊9名で登録)。そして、同一建物内で併設するのが、学童保育所(定員40名)です。両施設を利用する利用者さまと児童は、ガラス越しにお互いの様子が伺えるだけでなく、ときにはどちらかでいっしょに遊んだり会話を楽しむなど、地域の世代間交流の場として機能していくことが期待されます。
さらに、建物内の最も眺望のよい位置に「認知症カフェ」を設置する予定です。これは、まだ初期段階の認知症の方やそのご家族が集う場として計画。お茶を楽しみながらケアマネージャーや介護福祉士のサポートが受けられたり、ピアカウンセリングの場としての機能も期待されます。
建設地は、自治体と民間の所有地を合わせて購入。施設の建設にあたっては、数社の中から「介護施設建設の実績」「介護の現場を知り尽くしたプランづくり」「コスト面」といった観点から、大和ハウス工業の提案を採用されました。敷地形状と高低差を考慮し、平屋造の建物と駐車スペースを効果的に配置。建物内部についても、利用者さまとスタッフの動線を考慮しながら、2つの施設の交流がうまく図れるようプランニングに工夫を凝らしています。また学童保育施設には、ボルダリングや落書きできる壁面など、児童たちが楽しい放課後を過ごせる設備も整えています。
小規模多機能型居宅介護にはオープン前からいくつも問い合わせがあり、学童保育所の見学会には多くの保護者が参加されるなど、早くも注目の施設となった「あたわ共生施設つどい」さま。地域交流の新たな拠点としても期待が高まります。
CASE8
小規模多機能型居宅介護・学童保育施設 あたわ共生施設つどい